なぜ僕はおじいちゃんにそっくりなの？隔世遺伝って何？

両親には似ていないのに、なぜか祖父母にそっくりだと言われることがあります。

実は、このような類似性は、見かけほど不思議なものではなく、科学的な要因にもとづいているのです。

以下に、なぜ、どのようにして両親ではなく祖父母に似ることが可能なのかを分かりやすく紹介します。

親から子に形質を伝える「遺伝子」

私たちの外見は一つ一つの細胞の中にある遺伝子の影響を大きく受けています。

人の身体をつくるための遺伝情報は、遺伝子によって世代から世代へと受け継がれているのです。

すべての個人は、両親から受け継いだ遺伝物質のユニークな組み合わせによってデザインされます。

そして、その両親は、自分の両親から遺伝子を受け継いでいるわけです。

これは、遺伝子が淘汰（不要な要素を排除）されることなく、特徴的な組み合わせで混ざり合うという、遺伝子伝達の絶え間ないサイクルを表しています。

従って、あなたの遺伝子の組み合わせが祖父母のそれに近い場合、あなたは両親よりも祖父母に似ていることになるのです。

地球上のすべての生物は、その特異なゲノム（DNAのすべての遺伝情報）構成によるユニークな副産物です。

遺伝子は（タンパク質をコードする）DNAの一部であり、生物に必要なタンパク質の要件に応じて、一定の順序で配列されています。

例えば、目の色で遺伝子の役割を考えてみましょう。

あなたの目が緑色なら、両親のどちらか、あるいは両方が緑色の目をしていた可能性が高くなります。

同様に、あなたが金髪であれば、母方であれ父方であれ、あなたの親戚の誰かが金髪である可能性が高くなります。

身体的なものに加え、遺伝子は、英国ビクトリア女王の家系で流行した血友病のように病気を伝える役割もあります。

遺伝情報は親から子へと受け継がれ、それは遺伝として知られる「あるカタチ」の伝達です。

こうして、遺伝子と遺伝の間のこのダイナミックな関係は、今日の私たち人類に見られる多様性の一因となっているのです。

遺伝子を受け継ぐパターンは、私たちが時として祖父母と不気味なほど似ている理由を説明することができます。

この注目すべき「世代を超えた遺伝子の伝達における一定のパターン」について研究したのがグレゴール・ヨハン・メンデルでした。

メンデルは何年もかけてエンドウ豆の特徴を研究し、その驚くべき功績から「近代遺伝学の父」と呼ばれるようになりました。

では、祖父母と孫の遺伝関係をよりよく理解するために、メンデルが発見した「対立遺伝子」の考え方についてみていきましょう。

対立遺伝子とは、一つの形質のうち、同時に現れない2つの形質をいいます。

エンドウ豆でいうと、種が丸のものとしわのあるものの2つの形質があり、その子孫はそのどちらかの形質しか現れません。

メンデル遺伝学によれば、遺伝は3つの法則、つまり「優性の法則、分離の法則、独立の法則」によります。

この（対立遺伝子のうち）どちらかの現れた方の形質の遺伝子を優性遺伝子、現れなかった方を劣性遺伝子といいます。

祖父が緑色の瞳をしていた場合、父はその緑の形質が現れなくても、隠しもっている可能性があります。

雄と雌の配偶子（生殖細胞）が形成されるときに、親がもつ情報（対立遺伝子）が半分に分離されることを示しています。

これは形質に対する対立遺伝子がそれぞれの親から1つだけ受け継がれることを意味します。

ある遺伝子の対立遺伝子が他の遺伝子の対立遺伝子と互いに何の干渉もしない。

私たちが祖父母に似ている主な原因は優性の法則にあります。

メンデルのエンドウ豆が、優性の背の高い対立遺伝子が劣性（低い）の対立遺伝子を隠していたように、私たち自身の遺伝子も同じような働きをするのです。

両親の対立遺伝子には、祖父母の遺伝子型が残っています。

そのため、祖父母の遺伝形質も混ざっており、祖父母が持っていたような病気にかかりやすくなることさえあるのです。

このように、親の代では現れていない（隠れていた）遺伝形質が、世代を飛ばして孫やその後の代になって現れることを「隔世遺伝（かくせいいでん）」と呼ばれています。

いかがでしたか？

今度誰かに、あなたは祖父母にそっくりだと言われたら、自信を持って「遺伝子のおかげです」と言いましょう。