夜間に自動車を運転しているときには、前方を確認するためにヘッドライトが必要です。
しかし、夜間に船を見ると、ヘッドライトはありません。
それどころか、船は夜間にライトを消して、航海士が暗闇に目を慣らすためにできるだけ暗くしています。
では、そもそも車のヘッドライトは機能するのに、船では機能しないのはなぜでしょうか。
以下に、ヘッドライトが実際に何であるかやその働きをもとに、船にヘッドライトが無い理由について考えてみましょう。
ヘッドライトとは何か?
ヘッドライトは、物体に光子を放出するように設計された単なる光源です。
放たれた光子が、物体に反射して目に戻ってくると、脳はそれを解釈し、何を見ているのかを伝えます。
このライトを機能させるには、見ている領域を照らすのに十分な強さの光が必要です。
まず、光のパワーはビームの全域にわたって分散されます。
次に、光が物体に当たると、物体に当たったビームの小さな領域が反射されますが、これも目に届く前に分散されてしまうため、わずかな光だけが戻ってきます。
車であれば、わずかな光でも問題はありません。
船にヘッドライトが必要ない理由
仮に高速道路の速度であっても、ぶつかりそうな物を避けるには100メートルほどあれば行動を起こせるでしょう。
しかし、船の場合、行動を起こすのに100メートルでは十分ではありません。
船は急停止ができないため、たとえば大型貨物船が停止するには2キロメートル以上必要です。
2隻が衝突するのを防ぐには、少なくとも3704メートルの視界がないと行動を起こすことはできません。
船のヘッドライトが車と同じ効果を得るには、どれだけ明るくする必要があるか考えてみてください。
船が互いを見るためにヘッドライトを使用しないことはこれで分かりました。
船はどうやって衝突を防ぐのか?
では、どうやって前方を確認するのでしょうか。
船は、ヘッドライトの代わりに航海灯が取り付けられています。
(貨物船の航海灯)
(潜水艦の航海灯)
これは、他の船舶に、あなたの船がどのように移動しているかを知らせるためのものです。
航海灯の役割
航海灯であれば、その光のパワーは他の船舶から見える程度で十分です。
航海灯が取り付けられていれば、ヘッドライトの反射光のほんの一部に頼るのではなく、どれだけ見やすくなるかがわかります。
では、他の船の動きを特定するにはどうでしょうか。
貨物船を例にみてみましょう。
この貨物船には2の航海灯があり、後方のライトの方が前方のライトよりも高くなっています。
これにより、他の船舶に船がどの方向に移動しているかがすぐにわかります。
さらに船の動きを補足するために、船の側面には、色の違うサイドライトもついています。
赤は左舷、緑は右舷の色のライトです。
これにより、船がどの方向に移動していることが強調されます。
図でいうと、赤(左舷側)が見えると左向きに進んでいる合図で、
緑(右舷側)が見えると右向きに進んでいる合図となります。
では、赤も緑も見えている場合どうなるでしょうか?
そうです、他の船がまっすぐこちらに向かってきていることがわかります。
上から見てみると、すべてのライトが見える唯一の角度は正面からであることが分かります。
一方で、船尾に1つの白いライトだけが見える場合、これは、船が離れていることが分かります。
では、これはどのような状況でしょう?想像してみてください。
上から見ると、これが可能なのは、相手が22度半上に見えるときのみです。
これらは、どちらの船が道を譲るべきかを判断する際にも重要な情報が得られます。
実は、船のライトの配置には、他にも牽引中や故障中であることを示すためにマストのヘッドライトを追加するなど無数のバリエーションがあります。
航海灯は、暗い空を背景に船を浮かび上がらせるという基本的な機能を果たすだけでなく、船の種類を識別して、船の向きを判断し、どの方向に移動しているかを確認することもできるのです。
いかがでしたか?
航海灯は、車のヘッドライトよりもはるかに多くの情報を提供してくれることが分かりました。
船にヘッドライトが無い理由については動画で確認することができます。