ビーチには数多くの危険があります。
激しい波、離岸流、熱中症、日焼け、クラゲやサメ、さらには藻類。
しかし、驚くかもしれませんが、米国ではサメによる被害の約2倍がビーチの穴が原因で亡くなっています。
砂にはとても興味深い地質工学的特性があるため、誤った安心感からつい穴を掘りすぎてしまうようです。
もちろん、ビーチの砂の特性を理解することで、命を危険にさらすことなく大きな穴を掘ることはできます。
子供がいるなら、膝より深い穴を掘らないこと。さらには、OSHAのガイドラインでいうと、穴の側面を約34度傾斜させれば、深さは最大6 メートルまでは問題なさそうです。
では、その傾斜の理由を説明するために、地質工学からみたデモンストレーションをいくつか使用してみましょう。
地質工学は斜面工学?
ある意味では、地質工学は斜面工学とも呼ばれるかもしれません。
なぜなら、それが大きな部分を占めているからです。
私たちの建築環境の多くは、傾斜した土の安定性に依存しています。
多くのダムは、盛土を使用して土や岩石で建設されていますし、道路、高速道路、橋は、盛土によってスムーズに上がったり下がったりします。
基礎工事、鉱山、トンネル、そういった構造物の掘削は、内部で作業する人々を地滑りのような自然災害から守るために、斜面を注意深く監視しています。
労働者の身を守るために、土の特性、土の挙動、建設資材としての限界を考えた斜面の安定性に関する科学、地質工学は実に深く理解されています。
そして、その世界を覗くことは、海岸に穴を掘ることの危険性を理解するのに役立ちます。
土壌を崩す力
地質工学の多くの部分と同様に、斜面の安定性の分析には、強度と荷重という2つの基本的な部分があります。
荷重は、土壌自体の重量です。
斜面の上になんらかの荷重 (サーチャージ) を追加することで、危険な崩壊を生むこともありますが、まずは土壌自身の重量だけで考えてみましょう。
平らな表面では、土壌は一般的に安定しています。
しかし、傾斜を入れると、上の土壌の重量によってせん断(物体をずらす方向に働く力)破壊が発生する可能性があります。
これらの破壊は、円弧に沿って発生することがよくあり、地質工学エンジニアたちは、ソフトウェアに破壊面を表す何百もの円弧を描かせて、土壌の重量に基づいて各面に沿った応力を計算し、土壌の強度が応力に耐えられるかどうかを計算しています。
しかし、土壌が強度を持つとは、実際にはどういう意味でしょうか?
土壌が強度を持つとは
土のサンプルが宙に浮かんでいるとイメージしてみてください。
そこにせん断応力を加えると、それらの粒子は応力の方向に互いに離れていきます。
それに必要な力の量は通常、角度で表されますが、その理由を説明します。
高校の物理で、ブロックを平らな表面に沿って引きずり、摩擦抵抗を克服するのに必要な力を測定するという簡単な実験をしたことがあるかもしれません。
重量を加えると、表面間の力 (垂直力) が増加し、摩擦が増加します。
土壌についても同じことが言えます。土の粒子を強く押し付けるほど、せん断力に抵抗する力が高まります。
斜面が崩れずに耐えられる最大の力と角度
以下の簡略化された力の図では、垂直にかかる力と、その結果接触面に生じる摩擦力、つまりその材料のせん断強度(物質が破断せずに耐えられる最大せん断応力)を描くことができます。
そして、斜辺が法線力と作る角度を、摩擦角と呼びます。特定の条件下では、摩擦角は休止角、つまり土が自然に立つ最も急な角度に等しくなります。
たとえば、漏斗から砂をテーブルに流し出すと、山が高くなっても側面の傾斜角度は実際には変化しないことがわかります。
この水平面上に円錐状になって積もる砂の側面が水平面となす角度を「休止角」と呼びます。
これは、斜面の安定性の複雑さをとてもうまく示しています。
ここで、重力は粒子をまとめ、摩擦を生み出しますが、粒子を引き離すものでもあります。
そして、休止角は、重力が土に与える安定化効果と不安定化効果の間の一種の線です。
しかし、混合物に水を加えると、状況はより複雑になります。
水を加えると土のせん断強度は低下
土粒子は、空間を占めるすべてのものと同様に、浮力があります。
水中で重りを持ち上げるのが簡単であるのと同じように、土粒子は飽和すると重量が軽くなり、粒子間の摩擦が少なくなります。
休止角の仕組みを水槽に移動するだけで、これを簡単に実証できます。
微妙な違いですが、水中では休止角が低下しています。粒子の有効重量が減少するため、土塊のせん断強度も低下するからです。
これは湖や海の下でのみ起こるのではありません。
土は水を保持します。
土壌の粒子間の小さな隙間にある水が圧力を及ぼし、粒子同士を押しのけて摩擦を減らします。せん断強度は通常、飽和した土壌では低下します。
しかし、砂で遊んだことがある人なら、「これは私のイメージとは違う」と思うかもしれません。砂の城を作るとき、乾いた砂は崩れ、湿った砂はまとまりやすくなるからです。
では、もう少し詳しく見てみましょう。
実は、摩擦は土壌のせん断強度に与える唯一の要因ではありません。
ねんどのねじり強度
たとえば、この粘土をねじろう(せん断しよう)とすると、粒子を一緒に押し付ける拘束力がないにもかかわらず、ある程度の抵抗があります。
粘土のようなより細かい粒子の土壌では、粒子自体に分子レベルの引力があり、基本的に粘着力があります。
砂の粒子間の隙間の水圧は、粒子を互いに押し離すことができますが、その逆もできます。
水からの吸引圧と粘着力による(一時的な)強化
このデモでは、側面に接続された地下水位を示すパイプが付いた容器に乾いた砂を入れています。
そして、見やすくするために水を黒く染めました。
パイプに水を注いでいくと、何が起こると思いますか?
土壌の地下水位は、パイプ内のレベルよりも高くなるか、低くなるか、それともまったく同じになるでしょうか?
試してみましょう。すぐに何が起こるかがわかります。
砂は基本的にパイプから水を吸い上げ、砂の外側のレベルよりも高く持ち上げます。
しばらくそのままにしておくと、高低差レベルにかなり大きな差があることがわかります。
これは主に毛細管現象によるものです。ペーパータオルと同じように、水は重力に逆らって砂の中に吸い上げられます。
この毛細管現象は、実際には土壌内に負圧を作り出します(周囲の気圧と比較して)。
言い換えれば、粒子同士が引き合うため、土壌の強度が増します。
基本的に、砂に粘着力、つまり拘束圧力を必要としない追加のせん断強度を与えます。
砂が扱いにくい理由
また、砂で遊んだことがある人なら、水に関しては最適な量があることをご存知でしょう。
ただし、本物の粘着力を持つ粘土とは異なり、その吸引圧は一時的なものです。
そして、砂を扱いにくくしているのは、それだけではありません。
砂のせん断強度は、粒子がどれだけよく詰まっているかにも左右されます。
ビーチの砂は、常に打ち寄せる波のため、通常はよく固まっています。
もう少し拡大してみましょう。
粒子が詰まっている場合、基本的に互いに固定されています。
粒子をずらすと、滑り運動のように見えるだけでなく、体積がわずかに膨張していることがわかります。
エンジニアはこれを増粘性(粉末固体粒子と液体からなる混合物が示す、異常な粘性)と呼びます。
実際、ビーチを歩いていると、特に地下水位が表面に近いときに、これに気づいたことがあるでしょう。
わずかな動きでも砂は膨張します。砂は水面上で膨張するため、このように簡単に確認できます。足で踏んだ周囲の砂が盛り上がるように見えますね。
この増粘性の実際の結果は、砂が移動するにつれて強度が増しますが、それはある程度までです。
ピークに達した後、突然強度が低下します。
こうした材料科学のすべてが実際の問題にどのように影響するかがわかってきたと思います。
ビーチの穴掘りを楽しむために知っておきたい砂の特性
私たちは、レクリエーションとしてビーチに穴を掘るとき、湿った砂が縁の周りに残っているので、より深く掘れます。
やがて穴は大きくなり、掘り続けるためには穴の中に入らなければならなくなったとします。
このとき、水からの吸引圧と増粘性によるせん断力の強化により、壁はずっと持ちこたえています。しかし、周囲の砂の中では状況が変化しています。
砂は水を通すので、水は砂の中を自由に動き回り、そこから離れていくこともできます。
ここではまだ砂に安定性を与えている微妙な湿り気のバランスを崩すのに大きな変化は必要ないかもしれません。
しかし、潮が引いて地下水位が下がり、表面の土が乾燥したらどうでしょうか。
あるいは、波や潮が表面の砂に水を加え、吸引圧が下がったり、斜面内の小さな動きが部分的に砂を膨張させようとしたりすることもあります。
そして、この小さな変化のたびに強度がピークに達し、その後突然強度が消失することもあります。
砂の崩壊は突然起こる
これについては、崩壊の兆候となる変形がほとんどないため「脆性破壊」と呼ばれています。
砂の崩壊は突然起こります。
壁の大きな部分が崩壊すると、穴の中にいる人が生き残れる可能性は低くなります。
砂は重いからです。砂の密度は水の約2.5倍です。人が閉じ込められるのにそれほどの圧力は必要ありません。
ちなみに、この掘削中の崩壊は、建設現場での死亡事故の最も一般的な原因の1つでもあります。
ビーチで砂遊びを楽しむための注意点
エンジニア以外の人はビーチで穴を掘るべきではないということではありません。
土と岩の力学は、建築環境のあらゆる部分にとってとても重要であり、誰もが砂で遊んだり、泥だらけになったり、その上に建てられている素材と関わったり、つながりを持ったり、心を通わせたりする機会を持つべきだと思います。
ですから、ぜひともビーチで穴を掘ってください。
ただし、あまり深く掘らないでください。
私がよく目にする一般的なアドバイスは、子供がいる場合は特に膝より深い穴に入らないようにすることです。
OSHAガイドラインに従う場合は、もう少し深く掘ることができます。
穴の側面を水平から1.5 度から1度、つまり約34度傾斜させれば、深さは最大6 メートルまで掘ることができます。
私が言いたいのは、少し工学的な慎重さを働かせれば、砂遊びは危険ではないということです。
そして、ビーチの砂の特性のいくつかを理解することで、命を危険にさらすことなく大きな穴を掘る原始的な喜びを味わえるようになることを願っています。
砂遊びが危険な理由については以下の動画で見ることができます。