お風呂上りに綿棒で耳掃除をすると気持ちいいと感じる人は多いようですが、実は、その「きれいになった」感覚はまやかしかもしれません。
なぜなら、綿棒でとれた耳垢はほんの一部で、実際には、そのほとんどが耳垢を鼓膜に向けてさらに押し込でいるにすぎないと指摘されているからです。
それどころか、綿棒を耳に入れるときに傷がつくと感染の原因にもなるなど、かえって危険な行為になる可能性もあります。
ここでは、綿棒での耳掃除をおすすめしない理由について、聴覚学者(オーディオロジスト)であり、NYU Langone Medical Centerの臨床医学准教授であるWilliam H. Shapiro氏によるアドバイスを分かりやすく紹介します。
耳垢の役割
耳垢は、耳の中に虫やゴミが入るのを防ぎ、聞こえやすい状態に保つ役割のある安全なもので、決してそれ自体が害を及すような汚いものでもありません。
それどころか、耳垢自体は酸性なので、細菌の繁殖を防ぐ働きもあります。外耳道の潤滑油としての役割も果たします。
一般的に、耳垢は、耳に入ってきたホコリや抜け落ちた毛、古い角質を包み込んで、そしゃくやあくびなどの動きによって、耳の外に向けて少しずつ移動しながら出ていきます。
このように、耳には、自力で汚れを取り除く自然な自浄作用があるため、ほとんどの人が耳垢を綿棒で取り除く必要はないと考えられています。もちろん指でいじる行為もいけません。
綿棒を使うとよくない理由
もともと耳垢は、耳の外側(手前)で作られるので、奥にはありません。
しかし、綿棒で耳掃除を行うと、かえって耳の奥に耳垢を押し込んでしまう結果に。そうなると、耳垢が取りずらくなるだけでなく、鼓膜付近に固まったり、外耳道を塞いだりしてしまう恐れもあります。
鼓膜は、振動することによって音を伝える働きがあるので、耳垢があるとうまく振動できずに、耳の聞こえが悪くなります。
昔から「耳の中には、肘よりも小さなものは入れてはいけない」といったユニークなルールがあります。そもそも肘くらいの大きさのものなんて入るわけがないと疑問に思うかもしれませんが、それほど耳の中にはなにも入れるべきではないということです。