離岸流(りがんりゅう)はとても危険です。
離岸流とは、海の中で一見どこからともなく現れ、無防備な海水浴客を沖へと引きずり込む水の細道のこと。波さえあれば海でも湖でも発生します。
実際に、毎年、もっとも多くの海水浴客の命を奪っているのは、サメではなく「離岸流」なのです。
そもそも、海では、なぜこのような危険な現象が起こるのでしょうか?
離岸流に巻き込まれないためにはどうすればよいのでしょうか?
以下に、離岸流の仕組みをもとに、巻き込まれた場合の対処法などもあわせて紹介します。
離岸流が起こる仕組み
十分なエネルギーを持つ波が、波の形を保てなくなって崩れることを砕波(さいは)といいます。
波は砕けると、流れる水のエネルギーを岸に向けて変え、水を波打ち際に押し出して、浜辺に積み上げます。
砕波が大きければ大きいほど、浜辺に打ち上げられる波は大きく水位も上がります。
しかし、ある場所では、来た道をそのまま海に戻れなくなった波が、行き場を失って浜辺の高い位置に溜まることがあります。これは不安定な水の状態です。
そこで、この溜まった水を逃がすために、寄せる波の勢いが小さい方向に向かって水が集中して流れ出し、それが離岸流となって沖へと戻るのです。
離岸流が起こりやすい場所は?
なかには、周囲より海の色が暗かったり、水の泡が沖に向かっていたりなどをヒントに離岸流の道を見つけられる人もいるようですが、実際に発見するのはとても難しいようです。
実は、最も危険な離岸流は砂州(浅瀬)によって引き起こされるといわれています。
水深が浅くなると砕波が引き起こされる
砂州とは、水の流れによって砂が堆積した地形です。
海で砂州があるところは盛り上がっているため、沖から押し寄せる波が砂州を乗り越えようとするときに、大きな波の形が崩れます。
砂州のくぼみが離岸流を生み出す
さらに、砂州の地形は、水を閉じ込めるダムのような役割を果たします。
ここで注意しなければならないのは、砂州が常に予測不可能に形を変えたり、移動したりすることです。
たとえば、砂州にくぼみができると、以下の2つのことが起こります。
第一に、海底にある2つの砂州の間にくぼみができた場合、そこは、周囲よりも深くなります。結果、そのくぼみでは、波高よりも水深が深くなる(波が円運動を行うのに十分な深さがある)ため、波が崩れにくくなります。
そこでは、砂州を乗り越えるほどの砕波が起こりにくく、他よりも部分的に水が溜まる速度が異なってくるのです。
第二に、周りより深くなったくぼみは、溜まった水の排出口のような役割を果たし、離岸流を生み出して海へと水を戻します。
離岸流のスピード
離岸流は通常、毎秒0.5m、速いものでは毎秒2.5mにも達し、ほとんどの場合、泳ぎが得意な人でもあっという間に沖まで流されてしまいます。
そのため、たとえあなたがマイケル・フェルプスのような水泳選手であったとしても、離岸流に逆らって、岸に向けて泳ごうとはしないでください。
巻き込まれてしまったらまずは、落ち着くこと。
離岸流に巻き込まれた場合の対処法
離岸流に巻き込まれた場合、専門家が推奨する2つの脱出ルートがあります。
一つ目は、離岸流の幅は狭いことが多いので、岸と平行に泳いで流れから逃れるという方法です。
仮に、疲れて泳ぐことが不可能な場合は、もうひとつの選択肢を覚えておいてください。
二つ目は、離岸流に身を任せること。
恐ろしく聞こえるかもしれませんが、離岸流は永遠に沖まで続くわけではなく、ビーチから離れるにつれて扇状に広がる傾向があります。
そのため、落ち着いて十分な時間浮くことができれば、流れがなくなったところで、岸に向かって泳ぐことができます。
もし泳げない場合は、流れに抗わないで浮いているだけでも、砂州まで押し流される可能性があります。