目が見えない人たちは、どのように外の世界をとらえているのでしょう。
それは、目が見える人とは、どのように違うのでしょうか?
ここでは、目が見えない人たちの世界の見え方について、科学的な研究によって解明されたことを、分かりやすく紹介します。
特に、先天的に盲目の人は、正常な視力をもつ人よりも触感や聴覚などの他の感覚が優れていることが多く、中には、「エコーロケーション」と呼ばれる能力を使って、音でものをイメージすることができる人もいます。
盲目とは
目が見えないといっても、全ての人が完全に見えないわけではありません。
米国の法律上の失明の値は、20/200と定められています。
それは、視力が1.0の人が200フィート(約61メートル)離れた位置で見えるものを、盲目の人は、20フィート(約6メートル)以下まで近づかないと見えないことで、視力の80パーセント以上を失っている状態です。
日本の場合
- 左右どちらか良い方の視力が、メガネやコンタクトなどで矯正したとしても0.1に満たない
- どちらか良い方の視力が、0.02以上0.6以下
- 両目の視野が、2分の1以上欠けている
視力の部分的な喪失と全盲
視力障害者の見え方や明暗の認知の度合いは、片目か両目か、または、白内障のようにものがかすむが明暗は分かる場合、黄斑変性(おうはんへんせい)のように視野の中心部分だけが見えなくなる場合、逆に視野の外側だけが見えない場合など、様々なものがあります。
全盲とは、完全にものを見ることができないことを指します。
全盲の人の世界の見え方
目が見えない人の見え方について理解するのは、簡単なことではありませんが、全盲の人は、目が見える人とは異なる方法で世界を認識しています。
彼らは、ただ色が無いだけで、視覚以外の感覚を使って、ある種のイメージを形成することができます。
ここでいう色とは、白と黒も含まれます。
研究によると、幼児期の早い段階で目が見えなくなった場合は、色は存在しません。
しかし、3歳以降に視力を失った人は、それまでの視覚の経験や記憶をもとに、絶え間なく変化する光やカラフルな世界を見ているかもしれないという報告もあります。
目の感覚が失われると、他の感覚が高められるのか?
以前は、目が見えない人は、嗅覚が優れているという見解がありましたが、現在は、それを証拠付けるものはないと言われています。
実際に、全盲の人と正常な視力をもつ人との嗅覚の違いについて、主観的と客観的の両方の観点から調べたドイツの研究によると、嗅覚の計測値に違いを見つけることはできませんでした。
しかしながら、触覚に関しては、真実であるようです。
全盲者、特に先天盲(先天的、または、早期に失明)の場合、触覚の能力がより敏感で、より反応が速いことが分かっています。
目の見えない人が持つ「エコーロケーション能力」/音で見る力
全盲の人たちの中には、目で見ることができないものをイメージするために、エコーロケーション(反響定位)をマスターした人もいます。
エコーロケーションとは、コウモリやイルカたちが本来持っている能力で、超音波を出して、その音のはね返りを使って、自分の位置や何がどこにあるのかといった周囲の状況を探知することです。
目が見えない人は、舌うちをするように「チッ」という音を舌で出して、その音が何かにぶつかって返ってきたものを受け取り、彼らの周りの世界の空間をイメージします。
エコーロケーションを使うと、ものの大きさや形、質感までも分かるようになります。
最近の研究によって、目が見えない人がエコーロケーションを行う時、視覚情報を取り扱う脳の領域を使って、情報を認識していることも分かってきました。
全盲の人は、光に反応している
私たちが実際に見るために使うのは、目の網膜にある杆状体(かんじょうたい)と呼ばれる光受容体です。
しかし、脳は、イメージ画像を作る時とは異なる光受容体(目の網膜の内側面にある神経細胞)を介した光を検出することもできます。
全盲の人は、それを使って、光を認識しています。
カナダとアメリカの研究者たちによって発表された論文「Journal of Cognitive Neuroscience」によると、全盲の人が、ブルーライトの点滅光がついたり消えたりするのを正しく認識できるだけでなく、光への注意力が高く、光に対する反応が速いことが分かりました。
この研究で重要なことは、目が見える見えないに関わらず、光が脳の活動を刺激し、認知力を向上させることが明らかにされたことです。
太陽の光を浴びると、脳が覚醒するように、光は物を見せるだけではなく、脳を活性化させることができます。
このように、盲目の人の脳は、目で見たものをイメージ化するのとは違う方法で光に対して応答しているようです。