鼻から入った有害な物はどうやって体内から取り除かれているのか?

鼻から肺までの防御機能人体の不思議

私たちの呼吸器系は本当によくできています。

進化によって、鼻から肺までの通り道に「鼻毛の森」、「嵐の鼻咽腔」、そして「迷路のような気管支トンネル」という3つの優れた防衛機能を得とくしたことは大きな功績でしょう。

大気中にはさまざまな粒子が含まれていますが、それらが肺の奥深くにまで到達するには、この3つの過酷な難関を乗り越えなければならないのです。

実際に、これらの3つの難関はこれまでうまく機能してきました。

ところが近年、進化した呼吸器系でさえ敵わないといわれる小さな魔物を現代社会は生み出してしまったようです。

以下に、私たちの呼吸器系の仕組みや小さな魔物の正体について分かりやすく紹介していきます。

第一関門「ネバネバした鼻毛の森」

1つ目の難関は、粘着性のある粗い毛で覆われた「鼻毛の森」です。

このトラップでターゲットになっているのは、大気中を舞っている砂や花粉のような大きな粒子(10nm以上)。

密に詰まった剛毛にとらえられてしまった粒子は、ここでゲームオーバーとなります。

ただし、10nm以下の粒子の多くは、この最初のトラップをすり抜けることができるのです。

しかし、なんとか剛毛のトラップを通り抜けたとしても、粒子はまだトラップを脱出できたわけではありません。

次に待ち構える難関「鼻咽腔」と呼ばれる洞窟を通過しなければならないのです。

第二関門「嵐が吹き荒れる洞窟」

鼻咽腔では、3つの骨構造によって空気が渦状に巻き上げられています

十分な質量のある中ぐらい粒子(3nm~10nm)であれば、この洞窟に入ると気流の渦に巻き上げられてしまい、粘液に覆われた洞窟の壁に衝突してゲームオーバーに。

しかし、粒子が小さすぎると、その軽さゆえに乱気流にうまく乗ってくぐり抜けるものもあります。

第三関門「長くて暗い気管支トンネル」

鼻咽腔を突破した粒子を待ち構えているのは、気管と肺の間にある、狭くて深い迷路のような気管支トンネルです。

ここでは、超小型の粒子(約0.1nm)は軽いため、空気の分子に簡単に跳ね飛ばされてしまい、その多くが接着剤のようなトンネルの壁に衝突して旅を終えます。

どうやら3つの難関を突破するには、十分な大きさでありながら、空気の分子に跳ね返されても壁にぶつからない程度の質量がある粒子が必要なようです。

この最後の難関は、その前にある他の難関と同様に、粒子にとっての厳しい挑戦です。

つまり、3つの難関を乗り越えて、肺から血流に乗り、体に深刻なダメージを引き起こすものは、ごく稀にしか存在しないということです。

3つの難関を乗り越えられる物質の存在

何千年もの間、呼吸器系にある3つの防衛機能は砂やほこり、煙など空気中にあるほとんどの粒子をろ過してきました。

しかし、人間が自動車を運転し、石炭を燃やして発電し始め、室内で調理をするようになってから、現在にいたるまで、かつてないほど多様で有害な粒子が空気中に充満し、この難関に押し寄せるようになったのです。

それによって2つの問題が生じています。

まず、これらのたくさんの粒子が粘着性のある表面を詰まらせ、防衛効果を低下させていること。
第2の問題は、現代社会が生み出した有害な粒子のサイズ(0.1nm以上0.5nm以下)です。

それは、3nm~10nmの粒子をとらえる鼻毛の森や鼻咽頭の洞窟を通過できるほど小さく、かといって気管支トンネルがとらえられるサイズ(0.1nm)より大きいため、3つの難関を突破してしまう可能性が高いのです。

このサイズの粒子は、気流に乗って肺に入り、血流に乗り、体内のほとんどの臓器に到達することができます。

そうなると、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。

未来に向けてできること

幸い、私たち人間は複雑な呼吸器系を進化させたように、脳も複雑に進化させてきました。

この賢い脳が、大気中の微粒子の嵐に対処するのにも役立っています。

空気の質を測定して、空気が汚い時間帯や場所を避けたり、家庭やオフィスでエアフィルターを使ったり、顔に「マスク」という名の直接フィルターをつけたりすることで、大気中の粒子が私たちの肺までの通路を詰まらせないように予防することができるのです。

もちろん、一番よいのは、それらの有害な粒子を作らないこと。

なんとか長期的な視点に立って、この問題となる粒子を最初から作らないようにしたいものです。

参照元:Our Lungs Have A Fatal Flaw