マラリアが熱帯地域だけの問題ではないといわれる理由

2018年9月14日

マラリアは、マラリア原虫という寄生虫に感染した蚊を介して広がる感染症です。

今日、マラリアによる感染被害は、90%がアフリカで発生しています。

そのため、マラリアは「熱帯病」ともいわれていますが、実際には、マラリアを引き起こす原虫もそれを媒介する蚊(ハマダラカ属)も、1850年頃までは、インドや南アメリカなど広範囲にわたって生育していました。

実際に、これまでも世界のいたるところで感染による死亡者はみられており、日本やヨーロッパも例外ではありませんでした。

しかし、ヨーロッパをはじめ、北アメリカやオーストラリア、北アジアを含む温帯地域では、近年マラリアによる感染の拡大はみられなくなりました。

ここでは、どのようにしてマラリアが温帯地域からなくなっていったのか、また、アフリカではなぜ根絶が難しいのかについて、寄生虫やそれを媒介する蚊の特徴、気候的な背景を中心に分かりやすく紹介します。

世界からマラリアが減少した理由

「マラリア」と名付けられた場所は、現在感染被害者が出ている熱帯地方からはほど遠い場所、イタリアでした。

当時のイタリアでは、マラリアの感染によって命を落とす人が多くみられ、それらが沼地から発せられる有毒な煙によって引き起こされたものだと考えられていたため、「マーラ・アリア(悪の空気)」や「バット・エアー」と呼ばれていました。

しかし、年月の経過とともに、マラリアはヨーロッパではほとんど見られなくなっていきます。

これは、温暖な気候の国では、排水設備などが早くに発達したため、湿地は田畑に変わり、雨水が農業のために使われていくうちに、マラリアを媒介していた蚊(ハマダラカ属)が繁殖地を失ったからだと考えられています。

また、人々が富を得るにつれて、蚊が侵入しにくい屋内で過ごす時間が増えたのも要因のひとつです。

さらに、気候もマラリアを抑制する助けとなりました。

気候とマラリアの関係

一般的に、マラリアの病原体であるマラリア原虫は、蚊の体内で成長します。

人から蚊を媒介してさらに広がるには、まず、感染した人への吸血行為によって蚊の体内に侵入したマラリア原虫が、蚊の消化管内で受精して増殖しなければなりません。

つまり、感染した蚊から、(吸血行為における唾液注入によって)さらに人に感染が広がる段階まで発展するにはある程度の時間が必要となるのです。

気温が低いほど、この感染サイクルに時間がかかり、摂氏15度以下ではこの感染段階にまでは至らないといわれています。

それが、温暖な地域では、熱帯地域に比べて感染が広がりにくく、マラリアを根絶しやすいといわれる理由です。

アフリカでのマラリア根絶が難しい理由

実のところ、いくつかの亜熱帯諸国では、感染が広がりやすい雨期への対策、蚊の殺虫剤処理、また、一人ひとりが蚊に刺されないような対策を行うなどによって、マラリアの根絶に成功しています。

しかし、アフリカではマラリア根絶が難航しています。

アフリカでは、マラリアを媒介する種の蚊の寿命が長いだけでなく、他の地域に比べて蚊が人の血液を好む傾向があるためです。

マラリアを媒介する種の蚊は、通常、アフリカ以外では人間よりも動物を吸血するのに対して、アフリカでは動物の4倍も人間をかむといわれています。

今日、アフリカでは、毎年40万人がマラリアによって命を落としています。

しかし、吸血活動が活発化する夜間に、蚊帳(かや)を使用する人が大幅に増加したことによって、マラリアによる死亡数は15年前の半分にまでなりました。

とはいえ、地上にはまだマラリアの原虫や媒介する蚊が存在しているのは事実で、確率は低いものの、アジアやヨーロッパの一部でも感染するリスクはあります。

さらに、地球の温暖化によるマラリア感染拡大への悪影響へも、懸念材料となっているようです。