「お酒を飲むとよく眠れる」は逆効果だった。アルコールがもたらす睡眠への影響とは

2019年3月 7日

なかなか眠れない夜に、何度も寝返りを打ちながら時間を過ごすのはつらいものです。

そして、そういった人の多くが「お酒を飲むとよく眠れるような気がする」といいます。実際に、アメリカでは、20%近くの人が夜に眠るためにお酒を用いるといわれています。

果たして、寝る前のお酒は、寝つきが悪い人や夜の眠りが浅い人の助けとして本当に役に立っているのでしょうか?

ここでは、寝る前のアルコールが睡眠にもたらす効果や影響について、科学的に分かりやすく紹介します。どうやら、寝酒によって寝つきがよくなることはあるかもしれませんが、それは一時的な効果にすぎずないようです。それでは、もしお酒を飲むなら、睡眠のことを考えて、寝る何時間前までに飲むべきだと思いますか?

アルコールを飲むと寝つきがよくなると感じる理由

まずは、人々が寝つきをよくするためにお酒を用いる理由から見ていきましょう。

アルコールは、気分や行動(ふるまい)を変えることでよく知られていますが、実のところ、中枢神経に働きかけて鎮静作用を及ぼすこともあります。

お酒を飲むとよく眠たくなるのはそのためです。それゆえ、短期的にみると、この鎮静作用は、早く眠りにつく手助けと考えられるかもしれません。

しかし、早く眠りに落ちるために常習的にお酒を飲むようになると、アルコールへの依存をもたら可能性があるので注意しなければなりません。

もしあなたが、お酒を飲まずには安定した睡眠が得られないようであれば、それはアルコール依存症(AUD、アルコール使用障害)に片足を踏み入れてしまったサインです。

アルコール依存症へのリスク

アルコール依存症は、アルコールの使用を強迫的に行うことです。飲酒量がコントロールできなくなるだけでなく、お酒を飲まないときはネガティブな心の状態になってしまう再発性の脳疾患だといわれています。

そして、一度依存状態になってしまうと、精神的依存や身体的依存から抜け出すのは難しくなります。

最終的に、それは心休まらぬ夜につながると考えられるので、睡眠誘発を目的としたアルコールの使用はおすすめできません。

また、数多くの臨床試験を調査した研究でも、睡眠障害とアルコール摂取にはつながりがある可能性が見出されています。

研究者らは、睡眠障害とアルコール摂取の関係についての100以上の論文を調べ、そのうちの60は「睡眠とアルコール使用」両方の量的な測定が含まれたものでした。

寝酒は概日リズムを乱し、睡眠の質を低下させる

「睡眠前の飲酒」については、その他にも大きな問題があります。アルコールが、体内時計によってコントロールされている概日リズムを狂わせることです。概日リズムとは、覚醒や睡眠のように、生体で約24時間周期で繰り返される生理現象です。

すると、仮にアルコールによって寝つきがよくなったとしても、代謝が進み、血中アルコール濃度が薄まる数時間後には覚醒が促されてしまいます。寝酒をすると、夜中に目が覚めて再び眠れなくなってしまうことがよくあるのはそのためです。

さらに、慢性的な概日リズムの乱れは、がんの発生率の増加と関連すると考えられています。

また、アルコールによって、睡眠サイクルと密接なつながりのあるホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されるおそれもあります。ある研究では、若い成人のメラトニン濃度が、アルコールを摂取した約3時間後に19%減少したことが示されました。

メラトニンは、眠気を促し、睡眠状態を維持するために脳から分泌されるホルモンの一種です。一般的には、このメラトニンの量が増えると血圧や体温が低下して自然と眠たくなると考えられています。

しかし、寝酒の影響は、それだけにとどまりません。

少し思い出してみてください。アルコールの摂取後に寝ると、夜中にいつもよりトイレで目が覚める回数が多くありませんでしたか?

アルコールには利尿作用があるので、夜中に行くトイレの回数が増加したり、朝早くにトイレで目が覚めたりして、結局は睡眠の質を低下させてしまうのです。

成長ホルモンに悪影響を及ぼす

1980年までさかのぼった古い研究では、アルコールが、筋肉や骨といった体の組織の成長や修復を調整する成長ホルモンの分泌に悪影響を及ぼす可能性が示されています。

寝る前の大量飲酒がいけない理由

さらに、アルコールを飲み過ぎると、窒息を防ぐ働きをする絞扼反射(こうやくはんしゃ)が損なわれる可能性があります。これは、寝ながら嘔吐したときに、自分の嘔吐物によって死に至る可能性があることを意味します。

それゆえに、「短時間での大量飲酒」や「深酒」は、本当に危険なのです。寝る前であればなおさら、周りが注意して見守る必要があります。

寝る前に、たくさんのアルコールを飲んではいけないのは分かりましたが、それでは、少量程度飲む場合はどうすればいいのでしょうか?

アルコールの代謝作用を考えると、寝る3時間から4時間前には飲み終えておくことをおすすめします。

体重や年齢などによっても個人差はありますが、一般的には、ビールや酎ハイであれば、コップ1杯(180ml)分のアルコールを代謝するのに1時間以上かかり、量が増えればそれだけ時間か何倍もかかります。

ワインならワイングラスで2杯分(約240ml)、日本酒なら1合飲むと、アルコールの代謝には、最低でも3時間は要します。

結論

たしかに寝る前のアルコールは、寝つきをよくするかもしれません。

しかし、アルコールが脳にもたらすホルモン分泌への悪影響は避けられず、概日リズムの乱れや利尿作用などが促されてしまいます。それらは最終的に、睡眠サイクルの乱れや睡眠の質の低下を引き起こすでしょう。

つまり、寝るためにお酒飲む習慣は、睡眠にとって逆効果なのです。

もしどうしても夜にお酒を飲むのであれば、睡眠のことを考えて、寝る前の3時間から4時間前までには必ず済ませるようにしましょう。

参照元
こちらもどうぞ