あなたは、絆創膏(ばんそうこう)を勢いよく一気に引きはがしますか?
それとも、ゆっくりと剥がした方が痛みが少ないと感じますか?
絆創膏の剥がし方に関しては、2009年に発表された研究で、人の痛みの感じ方との関係においてとても興味深い結果が示されています。
基本的に、痛みの感じ方は、女性か男性か、または毛深さなどによって違いはあれど、絆創膏をはがすときの速さと関係があるというのです。
さっそく以下に、研究で分かってきたことをみていきましょう。
絆創膏のはがし方と痛みの関係についての研究
2009年に発表された研究では、絆創膏(ばんそうこう)をゆっくりとはがすよりも、すばやくはがす方が痛みが少ないことがわかりました。
研究者たちは、ピザの報酬を用意して、65人の健康的な大学生に協力してもらい、粘着性の高い絆創膏を上腕、手、足首につけた後、はがし方による痛みの違いについて調査しました。
まずは、絆創膏をはがすスピードをゆっくりと、次に素早くと速さを変えて順に行い、そのときの痛みを11段階で評価したのです。
11段階において、0は痛みが全くない状態、そして、10は想像可能な最悪の痛みを意味します。
痛みに関する研究結果「素早くはがす方が痛みが少ない」
すると、2秒間かけてゆっくりとはがしたときの痛みは平均で1.58ポイントだったのに対して、一気にはがしたときの痛みは平均で0.92ポイントにとどまりました。
さらに、この調査結果を注意して見ていくと、痛みの感じ方にはさまざまなバリエーションがあることに気付きました。
ただし、痛みの感じ方にはいろいろな要素が影響する
たとえば、女性の痛みのスコアは男性より大幅に低く、それぞれ0.91対1.64ポイントという値でした。
どうやら女性の方が男性よりも痛みに強いといえそうです。
また、体毛が比較的少ない人が、ゆっくりと絆創膏をはがすと痛みの数値が高くなります。
このことは、体毛が薄い人は、素早く剥がした方がよいという結果に。
さらに興味深いことに、研究者たちは、痛みのスコアが、参加者たちにもともとある痛みに対する先入観と密接に関係していることを発見しました。
つまり、あらかじめ強い痛みを予想して研究に参加した人は、その「きっと痛いだろうな」という先入観が実際の痛みのスコアに反映して高い数値を示したのです。
そして、その点で痛みの研究における大きな問題点が見えてきました。
痛みの研究の問題点
私たちが痛みをどのように知覚するかは、過去の痛みの経験や信念、文化、性別、そして体毛のような非常に多くの影響を受けている可能性があります。
2015年の研究では、一日の時間帯が、人々の熱さや冷たさに対する痛みの感じ方に影響を与えることもわかりました。
なんと、痛みを感じる時間帯によっても痛みの度合いが変化するというのです
この研究には男性の参加者しかいませんでしたが、朝が、最も苦痛の少ない時間帯であることが示されました。(皮肉なことに、少なくともなんらかの苦痛を感じる人が多い「ベッドから出る」時間帯ではあるかもしれませんが)
痛みの評価方法について
痛みは、とても主観的なもので、私が3と感じていることが、他の人にとっては8になることも十分に考えられます。
結局のところ、あなたの痛みを感じることができるのはあなただけなので、研究者が偏りのない科学的な方法でそれを研究することは、非常に難しいことだといえます。
一方で、何十年もの間、痛みという複雑な感覚の評価については、0から10の11段階で表現する方法が最もシンプルで最良だと考えられてきました。
誰かの痛みを測定する素晴らしい方法が他にないのであれば、痛みに対する治療法を見つけるのはさらに困難であることを意味します。
しかし、事態は少しずつ変わってきているようです。
痛みの研究についての期待
科学者たちは、脳スキャンを使用して、人が痛みを知覚するときに脳がどのように反応するかについてを研究し、少しずつ痛みのメカニズムを理解し始めています。
研究が進むにつれて、痛みをより量的に測れるように進歩しているのです。
絆創膏のはがし方による痛みの違いも、現段階で主観的な感じ方に頼るところが大きいようですが、将来的には、より客観的に痛みの度合いを把握することができるかもしれません。
インターネットで「痛くない絆創膏のはがし方」と検索すると、オリーブオイルやベビーオイルを上から塗って染み込ませてからはがす方法をはじめ、ぬるま湯やドライヤーの温風を当てるなど実に多くの方法が見つかります。
しかし、次回からは、科学的に考えられた痛みの軽減テクニック「素早く一気にはがす方法」もぜひ思い出してみてください。