なぜ日本刀は高価なのか?

2020年6月11日

日本の刀作りは、何世紀にもわたって引き継がれてきた伝統工芸技術です。

刀職人である刀匠(刀鍛冶)には確かな技術が求められ、日本刀1振りを作るのには、18ヶ月以上の歳月がかかるといわれます。

実際には、鉄器は世界中にあり、日本以外の国においてもナイフや刀剣の文化は何千年も前から存在します。

しかし、日本の刀剣、特に古刀においては文化財としても価値が高く、現代の日本刀においても1振り10万円以上の価値があるといわれるほど高額なのはなぜなのでしょうか。

ここでは、日本刀が高い理由について、極めて高い職人の技術や刀づくりの工程などをもとに紹介します。

刀匠になるための長く厳しい下積み

「鉄器は世界中に存在します。しかし、焼きを入れた鋼をきれいに磨き上げて、鉄を鑑賞する文化があるのは日本独自のものです」

と刀作り暦21年の秋平師はいいます。

彼は、日本名刀のなかでも最も有名な刀工の一人といわれる「正宗(まさむね)」の感化を受け、5年間の修行とその後数年の訓練を経て、日本で刀匠資格を有する200人あまりの刀職の1人になりました。

日本で刀を作るには、文化庁からの作刀承認された刀匠の元で5年以上修行し、国の刀匠資格試験に合格する必要があります。

日本人と刀

日本人にとって刀は、常に武器以上のものでした。それは、武器であると同時に、美術作品でもあり、古くは地位の象徴、ステータスシンボルのようなものでもありました。刀は、長い歴史において、日本人の精神にとって重要なものだったのです。

日本では、古くから、美しく磨き上げられた刀身(鋼)には、魔を打ち払う力があると信じられてきました。それゆえ、人々は刀を大切にし、身に着けることによってよこしまなものから身を守ろうとしてきました。

刀は、決してただ戦いの道具として日本人とともにあったというわけではありません。

現在、刀鍛冶がつくる日本刀は、美術品として作られるものが中心ですが、実際には、切れ味が鋭く、刀匠らによって武士が命をかけられるほどの作品として常に最高のものを作ろうとする使命感とプライドをもって鍛練されています。

なかには絵画を鑑賞するように、刀をコレクションにして楽しむ人たちのため、または、子供や孫ができたとき、娘がお嫁に行くときにお守り刀としての刀を依頼されることもあります。

刀づくり

刀匠らによる日本刀は、一つとして同じものは存在しません。

へし金とよばれる板が積み重ねられた鋼が、互いに何度も折り返され、木目調のパターンが形成され、これらのパターンは、剣の達人の技術と相まって、世界に一つしかない刀身を生み出します。

1振りの日本刀には、玉鋼とよばれる日本独自の「たたら製鉄」で作られた純度の高い鋼の塊が5キログラムから10キログラム使われます。

それを高温で加熱するために、空気を送り込んで火力を調整する「ふいご」では、温度が十分でないと鋼同士がくっつかずに割れの原因にもなります。

加熱しながら何度も打ち付け、折り返して鍛錬することで炭素成分を変化させ、不純物が取り除かれて組織が全体的に均一になることで、硬く強い刃になっていくのです。

そして、鋼の塊を長く伸ばして刀の形に作り込み、焼き入れ、急激な冷却によって鋼に化学変化を起こさせてさらに強度を増した刀に命が吹き込まれます。

その後、刀鍛冶の手から研師に移ると、研師は、何種類もの砥石を使い分けて、刀の線が崩れないように砥石で研いで磨き上げていきます。さらに彫師によって名が刻まれ、鞘師によって鞘が作られ、必要に応じて金具などがつけられていくのです。

このようにして刀は、高度な技術を有する職人たちによる芸術作品となって世に出ます。

刀は歴史を語る

それぞれの刀の姿をみることは、歴史を知る上でも重要です。

時代とともに、刀の形は闘い方に応じて変化してきました。

刀の姿、たとえば、刃の角度や長さ、太さ、鋼の重なり方などの特性をみると、古い刀であればその刀が作られた時代、ときには誰が作ったかまで分かり、現代の刀をみると、作家がどういう時代の刀をねらって作ったのかという作為が分かります。

刀の先端部は、いろいろな直線や曲線が集まる部位であり、鋼を鍛造(たんぞう)する刀鍛冶や刀を研ぐ研師の腕の見せ所でもあるのです。

また、刀の刃口(刃の先の部分)にある白い刃紋との境目あたりには、星を散らしたようなきらめく粒が見え、それが日本刀ならではの美しい光を放ちます。

日本刀の価値

絵画と同じように、名刀と呼ばれる日本刀は、芸術品として変わらぬ価値を維持し続け、なかには数千万円もするものもあります。

現代の刀に関しても、1振りの刀の作成にかかる歳月や作業、刀匠たちの長く厳しい下積み、高度な技術を見ると、これらの刀がなぜそれほどまでに高い価値があるのかがうなずけるでしょう。

また、日本刀の技術を守り、継承してきた刀匠は、時の経過とともに少なくなっているので、これらの作品や芸術品はより価値のあるものになるでしょう。

日本刀は、きちんと手入れされると、ずっと残ります。現に、優美な反りをもつ平安時代の刀であっても、年月を感じさせない美しい状態で残っているものもあります。

秋平師は、千年の後、自分が作った刀を人々が「素晴らしい作品だ」といってくれるものを作りたいといいます。

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