チョウとガの違い、幼虫と成虫それぞれの見分け方について分かりやすく紹介します。
基本的な見分け方のポイントは以下のようなものです。
- 幼虫から成虫になるとき、チョウは蛹(さなぎ)に、ガは繭(まゆ)に
- 止まるときに、翅(はね)を揃えて立てるのがチョウ、ペタっと寝かせるのがガ
- 触覚の先に膨らみがあるのがチョウ、触覚が細い毛や櫛のようなギザギザがあるのがガ
- チョウは昼行性で、ガは夜行性
チョウ目類のうち、チョウ(6%から11%)に対してガ(89%から94%)は圧倒的に種類数が多い といわれています。
しかし、実際には、両者の明確な線引きはなく、区別するのは難しいようです。
もしかすると、これからはこの2つを区別すること自体が意味の無いものとなるのかもしれませんが、ここでは、一般的な見分け方について紹介します。
触角の違い
間違われることがよくありますが、見分けるときの参考に役立つポイントはあります。
最も簡単な見分け方は、触角です。
触角とは、昆虫の頭の上に突き出ている2つの角のようなもの。
触角をもつ動物は、他の昆虫を見つけたり、植物を触ってみたり、温度や熱、風、音、におい、味など、触角を使って周りの環境を感じ取ります。
触角は、えさやパートナーを探すためにも、身を守るためにもなくてはならない敏感なセンサーなのです。
チョウの触角の形は、長くて滑らかで、先端には小さなフックやコブのような膨らみがあります。
ガの触角は、毛のようなものがたくさん生えて羽のようになっていたり、ノコギリ状になっていたりします。
「昼か夜か」活動時間の違い
両者は、主な活動時間の違いから、1日のうちで見ることができる時間帯が異なります。
チョウは主に昼間に起きて活動する昼行性で、ガの多くは夜行性です。
晴れた日の午後に、花の上に美しい昆虫が舞い降りていたら、それはおそらくチョウでしょう。
そして、もし夜に外灯の周りで小さな虫が羽ばたいているのを見たら、それはおそらくガでしょう。
しかし、ヤガのように昼行性のガもあれば、夜明けや夕暮れに飛ぶチョウもたくさん存在するので活動時間が明確に違うとはいえないようです。
翅(はね)を休める位置の違い
両者は翅(はね)を休める位置が違います。
ガは翅をペタっと平らに広げて休むことが多いのに対して、チョウは通常、翅を揃えて垂直に持ち上げて休んでいます。
でも、この方法で見分けるのは少し難しいときがあります。
例えば、チョウは、太陽の暖かさを浴びるために、翅を広げて平らにすることがあるからです。
そのため、間違えられることもよくありますが、手がかりとして知っておくだけでもよいでしょう。
チョウとガは、成虫になるまでの過ごし方が違う
さて、ここまでは成虫についてを紹介してきましたが、ここからは幼少期に目を向けていきましょう。
両者とも、最初は幼虫です。
おもしろいのは、このイモムシの時期から成虫になるまでの過ごし方で見分けることができることです。
ガは、幼虫から成虫に変わるときの中間的な段階に、身を守るための繭(まゆ)を作ります。
繭は、自らの周りに巻きつける特別なシルクの入れ物です。
繭の中で、幼虫は空を飛ぶ成虫に変わるのです。
そして、ガは、触角の見分け方と同じように、繭も少しモコモコしています。
チョウも特殊な入れ物の中で変化しますが、彼らの場合は「蛹(さなぎ)」と呼ばれています。
イモムシは、ガのようにさなぎを絹で紡ぐことはありません。
さなぎは硬い皮膚の層なので、見た目はつるんとしています。
このさなぎの中で、イモムシは成虫になるのです。
このように、まゆとさなぎは、同じことをしていても、素材も見た目も異なります。
見分けてみよう
これで私たちは、両者の見分け方の専門家になりました。
このスキルを使ってちょっとテストをしてみましょう。
この写真を見てください。どちらかわかりますか?
何が違うのか思い出してみましょう。最初に見るべきものを覚えていますか?
そう、触角です。この触角は、モコモコしていなくてツルツルしていますね。
そして、この虫の翅(はね)を見てください。ペタッと平らに広げているのではなく、上げています。
私はチョウだと思うわ。
そう。これは、アオタテハというチョウよ。飛ぶスピードが速いので、つかまえるのは難しいといわれているの。
では、こちらのきれいな昆虫の写真を見てみましょう。
この触角を見てください。小さな羽毛のようですね。
翅は背中にぴったりとくっついているしこれは間違いなくガですね。見た目はチョウのように鮮やかですが、ルナガと呼ばれるガです。
次はちょっと厄介な問題です。
成虫のように翅(はね)や触覚での見分け方はできませんが、大人になる前の段階であることは間違いありません。
繭(まゆ)か蛹(さなぎ)のどちらかです。
まゆは、絹で紡ぎ出すものだと記憶しているので、きっとモコモコフワフワしているはず。
しかし、写真のさなぎは滑らかで硬い外皮を持っています。
さなぎのように見えるわ。ということは、中にはチョウの幼虫がいるのかな?
そうです。これはオオカバマダラのさなぎ。秋になると、渡り鳥のように5000キロ相当を集団で移動するチョウなのよ。
みなさん、よくできました。これで見分けがつくようになりましたね。
しかし、科学者が新種を発見するにつれて、両者の区別が曖昧になってきているのも事実です。
区別はあいまいになってきている
両者には多くの共通点もあります。その一つが体と羽を覆う鱗粉です。
指でつまんだときに、手につく粉で、実はこの鱗粉は毛が進化したもの。
この鱗粉で、羽の模様は描かれていますが、チョウは鮮やかできれいな模様が多いのに対して、ガは地味な模様が多いといわれています。
しかし、ガの中には、ペルーに生息するウラニアツバメガのようにカラフルで昼行性の種もあり、間違われることもよくあります。
特にインドネシアやオーストラリアに生息する種には、鮮やかな色の翅(はね)、長い触角、昼間に飛ぶなど、チョウの特徴を多く備えたガも多く存在します。
今回は、昆虫の違いを見ていくにつれて、とても興味深いことがたくさん分かりました。
好きな昆虫や他の種類の動物についてまだまだ知りたいことはありますか?
これからも好奇心をもって、さまざまな生き物の生態について調べてみてください。
将来につながる科学的な大発見があるかもしれません。