大気の極めて薄い火星でなぜヘリコプターが飛べたのか?

ヘリコプターは空気の薄い火星でなぜ飛べるのか?宇宙・航空科学

ヘリコプターは、プロペラを回転させながら空気を押し下げることで飛ぶことができます。

では、宇宙技術者たちは、押すべき空気が少ない火星でどのようにヘリコプターの初飛行を成功させたのでしょうか?

今回は、ヘリコプターが空を飛べる仕組みや、宇宙飛行士たちによる模型を使った飛行時間を長くする工夫など楽しいプロジェクトと合わせて紹介します。

2021年4月、NASAが火星に送り込んだヘリコプター「Ingenuity」が地球以外での飛行に初めて成功。

それは、NASAがこれまでに火星に投入した「探査車」、地上を走り回って写真を撮り、情報を送る車とは少し違った働きをします。

車とは違う世界を見るために作られた空飛ぶ機械です。

しかし、ヘリコプターが空を飛ぶ仕組みを考えると、大気の極めて薄い火星でなぜ、どのようにしてヘリコプターが飛べるのか不思議になりますよね。

ヘリコプターはなぜ飛べるのか

ヘリコプターは、翼を使う飛行機や鳥とは少し違った飛び方をします。

頭には、回転する羽根があり、それが巨大な扇風機のような役割を果たすことで、空気を押し出して飛ぶのです。

ヘリコプターのブレードには、ほんの少しだけ角度がついていて、回転しながら空気を押し下げることでヘリコプターを上昇させることができます。

これらは、地球上ではすべてうまく機能します。

しかし、火星での飛行には大きな問題があります。

それは、押すべき空気が少ないことです。

ヘリコプターにとっての難題・火星の空気はきわめて少ない

火星の表面には、地球よりもはるかに少ない空気しかありません。

地球は私たちが知っている中で唯一呼吸できる素晴らしい空気がたくさんある惑星で、飛行機やヘリコプターが飛ぶことができます。

しかし、火星には他にも素晴らしいものがあります。

巨大な砂嵐や、地球上のどの山よりも大きな山などです。

そのため、NASAのジェット推進研究所の技術者たちは、地球とはまったく異なる惑星で飛べるヘリコプターを設計するのにとても苦労しました。

火星をヘリコプターが飛ぶための解決策

問題には、たくさんの異なる解決策があり、技術者らはさまざまな解決策を試して、どの解決策が最も効果的かを確認したのです。

例えば、どのデザインのヘリコプターが一番よく飛ぶか、火星に送るのが一番簡単かなどです。

そして、彼らは「Ingenuity」にたどり着きました。

ヘリコプターの模型を作る方法

地球上のヘリコプターと違う点は、超軽量であること。

そもそも機体を持ち上げる力が少なくて済むのです。

そして、ものすごく長いブレードが、極めて速く回転しています。

これは、少ない空気をできるだけ効率よく押し出すために考えられました。

なんだか楽しそうなプロジェクトですね。

紙でヘリコプターの模型を作る楽しいプロジェクト

さて、私たちが宇宙エンジニアのように働き、考えるのに役立つ楽しい課題があります。

ヘリコプターの模型を作るのです。

技術者らは、世界について何かを理解したり説明したりするのに模型を使います。

模型のヘリコプターは、本物のヘリコプターがどのように作られているかを分かりやすく示してくれます。

必要なものは、ハサミ、紙、NASAのPDFテンプレートを印刷したものです。

まず、このテンプレートの点線に沿って切ります。

次に、太字の線に沿って折ります。

すると、紙製のヘリコプターの模型を作ることができます。

模型なので、本物のヘリコプターと同じように動くはずです。

紙で作ったヘリコプターの模型を飛ばしてみよう

さて、Ingenuityのような本物のヘリコプターには、エンジンが付いていて、ブレードを高速で回転させることができます。

このモデルにはエンジンはありませんが、このモデルを(脚立や椅子を使って)高いところから落とすと、紙製のブレードが本物のヘリコプターの羽根のように回転します。

回転する羽根が、モデルの下にある空気を押し出して、本体の落下を遅らせることができるはずです。

ここからは、自ら創意工夫してみてください。

たとえば、ブレードが上を向いていると、空気を押すことができませんね。

ブレードを長くしたモデルを作ってみるのもよいでしょう。

ブレードを長くすると、より多くの空気を送れるようになるのでよく回り、地面に着くまでの時間も長くなります。

でも、もっと空中での遊泳時間を長くするために、何か工夫できないかな?

このようにして、Ingenuityを作った技術者たちは、最良のデザインを見つけるまでに何度も試したのです。

思い出してみてください。Ingenuityは他のヘリコプターよりも軽い。

それなら、ティッシュペーパーのような薄い紙を使ってみたらどうかな?

また、もっと重い紙を使ってみるのもいいかもしれません。

刃の角度を変えて、どの刃が一番空気を受け止められるかも試してみましょう。

ゆっくり落ちてくるようにするにはどうしたらいいかな?

創意工夫であなたもエンジニアに挑戦

みなさんはどんなアイデアがありますか?

時計を使って、それぞれのデザインがどれくらい空中で持ちこたえられるかを測ることもできます。

このような方法で、私たちはデザインにたくさんの変更を加えることができます。

あなたもぜひ優秀な技術者として、いろいろなデザインを試して、ベストなものを見つけてみてください。

エンジニアになったつもりで楽しんでくださいね。

参照元:
How Do Helicopters Fly? | Let’s Explore Mars!
helicopter-ingenuity-paper-model-nasa