カイコは繭で自らの運命をつむぐ

動物・植物・生き物

カイコは、もはや人間がいないと生きてはいけません。

今回は、「カイコ」の奇妙な生態をはじめ、カイコからどのようにしてシルク(絹)が生まれるのか、見た目だけではないシルクの魅力についても分かりやすく紹介します。

ふわふわした白い蛾、「カイコ」には羽がありますが、決して飛ぶことはありません。

なぜか?

私たち人間がそのように作ったからです。

人類が5000年をかけて、きらめく絹糸を効率的にとるために、カイコガの生殖を管理し、進化の過程で品種改良してきたため、野生のいとこ(クワコなど)とは似ても似つかないものになりました。

シルクのもととなる生糸をたくさん作れるように体は大きくて重くなり羽を動かす筋肉は退化し、もはや人の世話なしでは生きることすらできません

シルク(絹)の特徴

カイコ (この蛾の幼虫) は、不思議な繊維を吐き出します。

その繊維は、シルク(絹)と呼ばれ、滑らかなシーツやガウン、着物やネクタイまで、あらゆるものを作るのに理想的だといわれています。

美しい光沢を放つシルクはその見た目だけではなく、自然界で最も強い繊維の一つ。

人間の髪の毛よりも細いのに、重さの比では鋼鉄の5倍の強度があります。

カイコの一生

カイコ(蚕)という虫の命は、小さな半透明の卵に抱かれて始まります。

飼育場で、毛の生えた幼虫が卵の殻をかじって外に這いだすと、そこにはすりつぶした桑の葉が用意されています。

はじめは3mmほどしかなかった幼虫は、桑の葉をムシャムシャ食べて、3週間を過ぎたころには、重さは生まれたときの1万倍、指ほどの長さ(7cmくらい)になります

カイコの繭

生後から25日くらい経つと、丸々と太った毛虫は透明になり、次の段階の仕事に取りかかることができます。

頭の突起「吐糸口」から頭をふりながら液体を分泌し、シルク(絹糸)の元となる繭(まゆ)を作るのです。

その液体は、空気に触れるとすぐに柔軟な繊維に変化します。

「シルク(絹)」 として知られるものは、主に2つのタンパク質から構成された長くて壊れていない2層の鎖からなります。

内側にあるのはフィブロインと呼ばれるタンパク質。それをセリシンと呼ばれる高分子のタンパク質で覆っています。

外側のセリシンには、粘着性があり接着剤のように糸を繭の中で固定。

幼虫は生糸を2、3日間吐き続けて紡ぎ、最終的には、最大1500mの長さの一本の糸をつくります。

繭の小さなシェルターは、毛虫が蛾に変身するのに適した湿度と温度を維持しています。

絹の皮「繭」が完成すると、農家は生糸を収穫します。飼育されているほとんどのカイコにとって、これは、命の旅の終わりを意味します。

カイコから絹糸を製法する技術

製造業者が、カイコの繭を沸騰させたり、蒸したり、天日で乾燥させたりすると中の幼虫は死んでしまいます。もし幼虫から蛾に孵化したら、それは貴重な糸を壊すことになるからです。

そして、繭を構成する絹糸は、収穫機によって1本1本ほどかれます。

一つの絹のドレスを作るのに2000個の壊れていない繭が必要だといわれ、日本の着物1着あたりでいうと、2500個もの繭が使われます。

カイコは人間がいないと生きていけない

少数の幸運なさなぎは、羽化して蛾になり、次の世代を生むことができます。

何世紀にもわたって私たちの監視下に置かれてきたこの仕事熱心な機織り職たちは、移動もほとんどできず空を飛ぶことさえできず、カモフラージュも必要なくなったので、野生では長くは生きることはできません

繭の外に出ると、飛べないオスは数日しか生きられないので、メスを素早く探す必要がありますが、繁殖相手を見つけるのも、人に依存しているのです。

シルクと人間の関係

絹の生産は数十億ドルの世界的な産業です。ファッション性や贅沢のためだけではありません。

シルク素材は、電気や熱を通しにくい天然の絶縁体で、静電気や埃をよせつけない特徴があるうえ、通気性もあります。

現代医学では、傷を縫合したり、骨を安定させたり、体内の腱を入れ替えるためにも絹が使われています。

私たちとカイコとの関係は、何千年も続いてきましたが、絹の代替品の作り方が見つかるまでこの関係は続くでしょう。

参照元:Silkworms Spin Cocoons That Spell Their Own Doom