「ゾウ vs アリ」 大きさはメリットになるか?

大きさは動物にとってメリットとなるか?動物・生き物

ゾウは自分の体重を支えるのがやっとですが、ハキリアリは自分の10倍も重いものを簡単に持ち上げることができます。

ハキリアリの驚異的な強さは、一般的に大きさの「拡大縮小」といった物理学的な性質によるものとされています。

しかし、実はもうひとつ、超強力な秘密兵器が存在します。

それはハキリアリの外骨格です。外骨格は、高分子多糖のキチン、さらには、マグネシウム(岩に穴を開けるほど鋭いウニの歯の成分)や炭酸カルシウム(貝殻の成分)からなる硬いよろいからなります。

規模「拡大縮小」の原理

スケール:拡大縮小の原理

まずは「拡大縮小」といった規模について少しお話ししましょう。

たとえば、あなたが羊で、約58kg(128lb)の干し草俵を持ち上げるのがやっとだとします。

もしスモールライトを使って、あなたと干し草俵の高さを4分の1(2lb)に縮めたとしたら何が起こるでしょうか?

驚くべきことに、あなたは同じ割合で縮小した干し草俵を4つ持ち上げることができるのです。

それは、あなたが以前の自分よりも相対的に強くなっているから。

小さくなるにつれて、あなたは力を失うよりも早く体重を減らすでしょう。

しかし、それでもアリほど強くはありません。

アリは、おそらくお気づきだと思いますが、ゾウや羊などをただ縮小しただけの存在ではないからです。

昆虫と大型動物の筋肉の働かせ方の違い

ゾウのような大型動物は、その質量に対抗するために比較的太い筋肉と骨を持っていますが、アリにはそのような余分な容量は必要ありません。

さらに、アリには外骨格があります。

第一に、昆虫であれクモであれ、外骨格は筋肉が付着するためのできるだけ大きな表面積を提供し、昆虫は1つの関節で多くの小さな筋肉を働かせることができます

外骨格と内骨格の違い

それに対して、内骨格をもつ大きな動物は、1つの関節に大きな筋肉が2、3個しか付着してないことが多いのです。

外骨格と内骨格の違い

さらに、昆虫の外骨格の場合、関節から比較的離れた場所に付着した筋肉をも働かすことができるため、筋肉を使う労力はかなり少なくてすみます

しかし、内骨格の場合、筋肉はその関節に近いところに付けざるを得ないことが多く、筋肉を活用する力は弱く、より多くの労力を必要とするのです。

呼吸の違い

外骨格:呼吸系の働き

外骨格はまた、昆虫の呼吸を助けます。

これは、強靭な筋肉を維持するために極めて重要なことです。

私たちは肺で酸素を吸収し、それを赤血球に送り込んで全身の筋肉に酸素を運んでいます。

しかし、筋肉が激しく動くと、血液が酸素を運ぶよりも早く酸素が使われてしまうのです。

昆虫にはこのような問題はありません。

彼らの腹部は、気門と呼ばれる穴があり、そこからシュノーケルのようなチューブ(気管)を通して空気が直接全身の筋肉に酸素を供給できるようになっています。

では、外骨格が動物をこれほど強くするのなら、なぜ大型動物には外骨格がないのでしょうか?

たしかに、(受動的に)外骨格を通して酸素を取り込むことは、小さな動物には問題なく機能しますが、残念ながら大きな動物はそれだけ体積が大きいため、酸素を体の奥深くまで十分に素早く(受動的に)浸透させることができないのです。

これは、外骨格というよろいを着たゾウは、窒息してしまうであろうことを意味します。

また、外骨格は、外側の層が生きていない細胞からなり、成長することができないため、脱皮をしなければなりません。

脱皮するにしても、昆虫の外骨格は基本的に呼吸器官であるため、脱皮中は酸素を取り込むことができません。

つまり、外骨格をまとった動物が大きくなればなるほど、脱皮に時間がかかり、酸素がない状態が長く続くことになるのです。

以上のことから、外骨格は小さな動物には強度の向上という大きなメリットを与えますが、ほとんどの場合、ネズミよりはるかに大きなものにはハンディキャップを与えるか、あるいは命を奪ってしまう可能性すらあるのです。

参照元:

Is Bigger Better?
Biomineral armor in leaf-cutter ants