冬の寒い日、道路では、白い粉がまかれていることがよくあります。
この白い粉の正体は「塩」。
塩には道路の雪を溶かし、気温が下がっても凍らないようにする効果があるからです。
そして、それにはとても興味深い理由が隠されています。
食べ物に塩をかけるのなら分かりますが、どうして道路や歩道に塩をかけるのか不思議ですね。
さっそく凍りやすい道路に塩がどのように作用するのかを実験して調べてみましょう。
道路の水に塩がどのように働くのか
さて、冷たく濡れた道路に塩がどう作用するかを調べるには何が必要でしょう?
まず、水を入れたコップを2杯分用意します。
1つ目の水には何も入れませんが、2つ目の水には塩を入れましょう。
ちなみに、歩道にまかれた塩は、比較的大きな塊ですが、2つ目のコップに入れる小さな食塩の破片も同じもので、粒の大きさが違うだけです。
冷凍庫は冬の天気と同じで寒いので、このカップを2つとも冷凍庫にセットしておくことにします。
それから、しばらく待って水を入れたカップの様子を見てみましょう。
もう30分くらい経ったし、冷凍庫からカップを取り出してみよう。
さて、どうなっているかな?
おっ、見てください。
塩を入れた水は凍ってないのに、塩を入れない水は氷になっています。
水(液体)から氷(固体)への変化
さて、最初のカップの水はどこに行ったのでしょう?
氷になっちゃったのよ。
見た目は違うけど、氷も水も同じものだもん。
そのとおり、どちらも水ですが、状態が違うだけです。
つまり、同じものからできていても、見た目も行動も少し違うということです。
私たちが通常水と呼んでいるのは液体の状態、つまり流れたり跳ねたりする状態です。2つ目のコップのようにね。
しかし、水が本当に冷たくなると、凍って、氷と呼ばれる固体の状態になります。これは、より硬く、一つの形に固まっています。1つ目のカップのようにね。
それでは、冷凍庫の中は本当に冷たかったのに、塩を入れた水がなぜ凍って氷にならなかったのでしょうか。
塩を入れた水は0度で凍らない理由
普通、水は摂氏0度(華氏32度)になると凍ります。
この温度は凝固点と呼ばれ、水が液体から固体に変化し、氷になることができる特別な温度なのです。
しかし、塩を使うと、水の凝固点をさらに低くすることができます。これは、凝固点降下(氷点降下)と呼ばれる現象です。
水が氷になるには、ばらばらに並んだ水の分子が(水素結合によって)規則正しく並ばなければなりませんが、水分子の間に、塩の分子が入り込むので並びにくく、氷にはなかなかなれなくなってしまうのです。
つまり、塩を入れた水が氷になるには、もっともっと温度を低くしなければならないのです。
冷凍庫から取り出した時、コップの水は両方とも0℃くらいでした。
水だけのコップは凍って氷になりましたが、水と塩の入ったコップはまだ氷になるには十分に冷えていなかったわけです。もっと冷やす必要があったはずです。
これは、道路と同じ。
濡れた道路の上に塩を置くと、道路上にある水の凝固点が下がります。
だから気温が下がっても、水が凍ってツルツルの氷になりにくくなるわけです。
安全対策のために道路に塩をまく
冬の道路では、このような塩の性質を利用して、路面の凍結を防止してしているのです。
凍結防止剤や融雪剤に使われる塩には、塩化ナトリウムや塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどがありますが、それぞれに凝固点(水が凍る温度)は異なります。
濃度にもよりますが、塩化ナトリウムの場合は-20度近くまで下がり、塩化マグネシウムは-30度、塩化カルシウムにいたっては-50度近くまで下がるといわれ、路面の温度や気温、降水量、霜の状況などを考えて使い分けられているのです。
塩を使うことで、雪や霜で湿った道路が凍りついたり、気温が下がることによる雪どけ水の凍結を防ぐことができますが、塩には、道路の雪をとかす効果もあります。
氷に塩をかけると、塩が溶けるための熱を氷からうばいとる(溶解熱)ため、氷は速く溶けて水に変わり(融解熱)、塩と混じって塩水となります。これによって、道路の積雪を防ぐこともでき、塩水は、0度より下がっても凍りにくくなるのです。
このようにして、道路に塩をまくことで、自動車が滑って事故をするのを未然に防止しているのです。
塩の他にも道路を滑りにくくする材料はあるのか?
実のところ、歩道に塩を使うのはこのようなメリットがありますが、デメリットもあります。
車がさびやすくなることをはじめ、塩を含んだ水が川や小川に流れ込むことがあり、そこに生息する生物の環境を害することがあるのです。
それなら、塩の代わりに何か他のものを使うことができるかもしれません。
さて、塩のほかにも、水が凍るのを防いだり、道路が滑りやすくなるのを防いだりできるものはあるかな?
砂糖はどうでしょう?氷が冷凍庫で凍るのを防ぐことができたら、それは成功です。
これは、同じ体積あたりの砂糖を構成する分子の数が、塩よりも少ないためだといわれ、砂糖の場合、もっとたくさん混ぜないと凝固点は下がりにくいようです。
いかがでしたか?
ぜひみなさんも、家で実験してみてください。
どんな材料が一番うまくいくかな? どんな発見があるか楽しみですね。