クロールを泳ぐ時の正しい頭の位置と角度を保つための練習方法について紹介します。
クロールの頭の位置と角度を適切な状態で一定に保って泳ぐ練習を行うことで、ストリームラインが安定し、水の抵抗を減らしてより効率的に泳げるようになります。
クロールで頭が上がるため、それが推進力が落ちる原因になっている人が多くいます。これは、特に息継ぎの時によく見られます。
その場合、クロールの頭の位置と角度を適切な状態で一定に保って泳ぐ練習を行うことで、ストリームラインが安定し、水の抵抗を減らしてより効率的に泳げるようになります。
水の抵抗を減らすことができれば、前方に進むための力が少なくすみ、同じスピードで進む時のエネルギー消費量も少なくなります。
クロールで頭が上がるといけない理由
頭が上がった状態で、クロールを泳ぐと、お尻や足が自然と下がってしまいます。それによって2つの水の抵抗を大きく受けるようになります。
一つ目は顔です。顎が上がることで、前方で水の抵抗を受けている顔の面積を広くします。また、頭が上がることにより、息継ぎの時に口の位置が下がり、水を飲むこともよくあります。
二つ目は腰から下の下半身への水の抵抗です。足の位置が下がると、必然的にバタ足への水の抵抗が大きくなり、推進力を失います。
そうなると、次の息継ぎでもっと高く顔を上げる必要があるため、息継ぎのたびに、ムダな力を浪費するだけでなく、前方に進むための推進力が上下に分散したり、クロールのリズムが乱れてしまいます。
頭を正しい位置にキープすることは、背中のそり(アーチ)を防ぎ、姿勢の改善にもつながります。
泳ぐときの背中は、アーチ状に反らないで、まっすぐ平行に保たなければなりません。もし、背中の反りに気付いたら、目線が前すぎていないかを見直して、首を平らに伸ばしてください。
クロールでの正しい頭の位置とは
もし、頭を上げてクロールを泳いだ場合、お尻がほとんど水面に出ることはありません。
顎を引いて、後頭部と背中の上部、お尻が水面から見える位置が正しい高さです。
このようにして、体のラインと頭が一直線になるようにストリームラインを描くことで水の抵抗を最小限にすることができます。
頭の位置を一定に保つための練習には、シュノーケルが有効です。シュノーケルの先が少しでるくらいまで頭を下げて、頭が上下にぶれないように固定したまま、前方でスカーリングを繰り返してバタ足で進みましょう。
次に、息継ぎ無しで頭の位置を一定にしてクロールします。
ストリームラインを保ったまま、お尻と水面の位置関係に注意して泳ぐのがコツです。「お尻の一部が常に水面から出ているか?」と自分で意識して確認しながら泳いでください。
水泳選手のクロールの頭の位置と角度の例
3人のアメリカの水泳選手のクロールの泳ぎ方を例に出して紹介した動画です。
Eva Fabianさん、Alex Meyer氏、Christine Jenningsさんのクロールを見てみてください。
3人は、それぞれ異なるリズムやテクニックでクロールを泳いでいますが、顎を引き、頭の位置が上がらず、上下にぶれていない点で共通しています。
Alex Meyer氏は頭の角度に、約10度の傾斜がついています。それによって、息継ぎの時も斜め後ろを見る感じで、片方のゴーグルが水中に入っている状態で十分に呼吸ができます。
息継ぎの時に、頭の位置が上下しないため、お尻の位置が常に水面近くをキープしているのが分かります。
このように、頭の高さと角度は、クロールを泳ぐ時の姿勢(特にお尻の高さ)に大きく影響してきます。
金メダリスト タイラー・クラリーによる頭の位置のアドバイス
ロンドンオリンピック(2012)の金メダリストであるタイラー・クラリー(Tyler Clary)氏は、水の抵抗について、次のように指摘しています。
最も素晴らしい水泳選手は、水(流体)力学を本質から理解している人。
水泳は、水の抵抗のマネージメントが全てです。私たちは、できる限り体を長く細くして水の抵抗を減らすことに努めています。
私は泳ぐ時に、正面からの面積を縮小させることに意識して取り組みました。
例えば、クロールを泳ぐ時、頭が起きた状態では、前方に伸ばした腕とあご、頭の間の幅が広くなるのでそれだけ水から受ける抵抗が大きくなります。そこで、頭を前方に出すように倒して肩を伸ばし、あごを引くことで水の抵抗が数段に減ります。
水の抵抗は、ほとんどの人が分からないほど微細で、かつ、レース結果には大きな違いを生むものです。