海の境界線の引き方

自然科学・地球科学

現在、海は太平洋、大西洋、インド洋の3つの大洋に分けられています。しかし、それぞれの海の終わりはどこで、どこから新しい海が始まるのか、また、海の境目はどうやって決まったのかなど不思議に思いませんか?

今回は、地球上の海が、陸を基準に分けられた理由や、海の境目が直線になっている理由などについて紹介します。

地球の海は、1億4千万平方キロメートルもの広さがあり、そのすべてがつながっています。

このように世界地図をちょっと角度を変えて見ればよくわかりますね。

厳密には、私たちの地球には1つの海しかありません。

しかし、それでは地球上のさまざまな海の天気やニュースなどについて説明できなくなるため、大きく3つに分割してそれぞれに名前がつけられました。

では、つながった1つの海域をどのように分割したのでしょうか?

世界の7割を占める広い海をうまく分割するなんて難しそうですが、以下に何を基準に線引きしたのかをみていきましょう。

その時代に都合がいいように分割していた

私たち人間は、物事を自分たちの都合の良いように考える習性があるので、歴史的に見ても、やはりその時の自分たちの考えに都合が良いように海を分割してきたようです。

例えば、昔はヨーロッパと北米、アフリカと南米など、大西洋の航海ルートは特定の地域に集中していたたため、その地域で区切って別々の「海」として考えていたのです。

しかし、世界観が時代によって変わってしまうとそれでは通用しなくなります。

世界全体に視野が広がるにつれて、海洋の航海ルートも多様化し、南北に分けずに大西洋一本で認識した方が都合がよくなったのです。

同じことが世界の他の地域でも起こったため、修正していき、最終的に海は、陸地で囲むように3つの海洋に分けられました。海洋の大きい順番に、太平洋、大西洋、インド洋のです。

海の境界線の引き方

では、陸地に囲まれていない部分(つながっている部分)の境目はどうするのでしょうか?

地図製作者や政府機関は分かりやすいものを好むので、海を挟んだ陸地の最短距離を選び、そこを直線で結んだのです。

これで海が明確に定義されましたが、海の特徴からみると理にかなっていない問題点もあります。

現在の海の分け方の問題点

たとえば、インド洋の境界線の端にあたる海域は、そのすぐ隣にある太平洋の海域と何ら変わりはありませんし、むしろその2つの海は、それぞれの同じ海域内の他の海よりも似ているのです。

このように、境界線は明確で便利かもしれませんが、海そのものについては何も意味をなさないものになっています。

では、海そのものについての知識を使って、分割するとどうなるでしょうか。

例えば、塩分濃度や海水の上層を流れる海流を考慮すれば、大西洋は上下(南北)2つに分けることができます。

一方で、地質学的に考えると、大西洋の海底には縦につらなった海底山脈のような尾根があるので、東と西(左右)に分かれます。

では、海面水温の変化でみるとどうなるでしょうか?

海面温度では、大陸を境界とすることができなくなってしまいます。

これではあまりに複雑で、いつまでたってもうまく分けることができなさそうですね。

つまり、科学でさえも海洋の分け方について明確な答えを持っていないのです。

南極海は特別

ただし、ある海域だけは例外で、海そのものをみた場合、くっきりと他と分けることができる海があります。

南極海です。

南極海は、東へ流れる強い海流と、極域の冷たい海水と北の暖かく塩分の多い海水がぶつかるところ(収束帯)に囲まれており、本来すぐ隣にある海とはあらゆる面で異なっています。

どうやら「世界の海」の中で唯一、海そのものを見て分けることを正当化できるのは南極海だけのようです。

しかし、この海は、世界の海洋を定義する機関によって公式に海洋とはみなされてはいません。

つまり、海の特徴そのものをみて役立つ方法で分けるのは難しいため、今ある太平洋、大西洋、インド洋など陸を基準に簡単に分けた方法が長い間使われているようです。

さて、あなただったら、この複雑な問題を考えて、世界の海をどのように分けますか?
参照元:Where Does One Ocean End And Another Begin