冥王星は再び「惑星」に戻すべきか?

宇宙・航空科学

90年代には、ほとんどの人が太陽系の惑星を「水金地火木土天海冥(すいきんちかもくどってんかいめい)」と覚えていました。

ところが2006年になると、突然、冥王星がはずされてしまったのです。一体それはなぜでしょうか?

以下に、冥王星と呼ばれる天体について、惑星からはずされた理由などもあわせて紹介します。

実は、10年以上経った今でも、「冥王星を準惑星(じゅんわくせい)から惑星に戻すべきか」については、さまざまな意見があるようです。

冥王星はなぜ惑星からはずされたのか?

2006年、プラハで開催された国際天文学連合(IAU)会議において、424人の天文学者の投票によって「太陽系にある惑星は、公式に8つとなる」ことが決定されました。

これについて、2015年に冥王星に接近し、誰もみたことのない姿を初めて撮影したNASAのニュー・ホライズンズ・ミッションを率いたアラン・スターン氏は次のように言います。

” 惑星の専門家たちによる科学では、小さな惑星を「惑星」と呼びます。
大きな衛星を「惑星」と呼びます。
他の星の周りにある惑星もすべて「惑星」と呼んでいます。
しかし、天文学者の定義では、これらの惑星は惑星とは認められません。”

そして、アラン・スターン氏は、「これらは背景による」と言っています。

冥王星に似た天体が次々と発見される

90年代初頭、冥王星は惑星でした。

これはまぎれもない事実です。では、何が変わったのでしょうか?

実は、90年代後半には、冥王星のような天体が他にも存在することが明らかになりつつありました。

天文学者は、カイパーベルト(海王星の軌道の外側に広がる円盤状の領域)と同じ領域に後に「マケマケ」や「ハウメア」と呼ばれる天体など、冥王星と同じような天体を次々と見つけたのです。

そして、決定的なきっかけとなったのが2005年。

天文学者は後に「エリス」と呼ばれる天体(2003 UB313)を発見。当時の推定では冥王星よりも大きいとされていました。

さらに、専門家たちが、パロマー天文台にあるサミュエルオシン・シュミット望遠鏡で撮影した古いデータを見たところ、なんと冥王星の3倍も遠い天体を発見したのです。

これは天文学の教科書の歴史を塗り替えるほとの発見でした。

そもそも「惑星」って何?定義とは?

この新天体は冥王星と同じような姿と振る舞いをしていますが、太陽系の他のどの惑星とも全く違っていました。

そうなると、何が惑星を惑星たらしめているのか、きちんとした定義が必要になります。

そこで、これらの新しい発見をきっかけに、国際天文学連合(IAU)は惑星についてのチェックリストを作りました。

・太陽の周りを回っていること
・ほぼ丸い形をしていること
・近隣に他の大きな天体がないこと

そして、この最後の条件は、冥王星を太陽系から外すカギとなりました。

そうです。冥王星は太陽の周りを回っていますし、重たくて重力が強いことがわかる球体です。

しかし、他にも同じような大きさの天体がたくさん見つかったことで、常に近隣の重力を支配しているわけではないことが分かりました。

例えば、エリスと呼ばれる天体は、冥王星と同じ領域を共有しており、冥王星の軌道に、はまり込んではいません。

2つの条件は満たしているものの、3つ目の条件に当てはまらず、衛星ともいえないため、結果的に冥王星は 「惑星」から「準惑星」に格下げされたのです。

冥王星は将来的に再び惑星に戻されるのか?

アラン・スターン氏は、盆栽が木であり、チワワが犬であるのと同じように、準惑星(dwarf planet)は地球型惑星(rocky planets)や木星型惑星(gas giants)と同じように惑星の一種だと主張します。

しかし、国際天文学連合(IAU)の元事務総長モンメルル(Thierry・montmerle)氏のような専門家は、準惑星を独自のクラスと考えたがっています。

このように、専門家の間でもさまざまな意見があるようですが、惑星科学者の定義で書かれた科学文献は「準惑星」で統一されており、このコンセンサスは科学においてはかなり強力な影響力があるため惑星に戻すのは難しいといえそうです。

冥王星ってどんな天体?

冥王星の公式呼称がどうであれ、たしかにいえることは、冥王星の魅力が想像以上のものであったことでしょう。

探査機「ニュー・ホライズンズ」で初めて撮影された冥王星には、かつての「太陽から最も遠く離れ、氷にとざされた死の天体」というイメージとは異なる「生きた天体」の姿がとらえられました。

窒素の循環する大気、氷の火山、隠された海、ハート型をした雪のスプートニク平原、氷河や流氷、氷の対流や地質活動を示す証拠もあります。

それは、とてつもなく大きな発見であり、惑星であろうがなかろうが、冥王星を特別なものにしています。

参照元:Should Pluto Be A Planet Again?