ハチドリは、1秒間に80回も羽ばたき、後ろ向きに飛んだり、長時間ホバーリングしたりと他の鳥にはないスキルをもつ鳥です。
では、この驚異的な飛行能力をもつ最小の鳥に、強風を当てるとどうなると思いますか?
おそらく、5グラムにも満たない体はすぐに吹っ飛ばされてしまうでしょう。
しかし、実際には、雨にも強風にも負けず、ホバーリングし続けることができます。
以下に、ハチドリが雨や風の中どのように飛ぶのかを羽と体の使い方をもとに紹介します。
強風にも雨にも負けずホバーリングするハチドリ
ハチドリが飛ぶ時、くちばしは外科医のメスのように安定していますが、翼は1秒間に最大80回激しく羽ばたいています。
では、この最小の鳥は、どのようにして吹き飛ばされることなく強風の中でのホバーリングを可能にしているのでしょうか?
それを調べるために、カリフォルニア大学バークレー校の科学者らは、ハチドリを研究室に持ち込み、より近くで観察しました。
まず、野生の鳥を1羽ずつ、砂糖水を入れた造花から餌を食べるように訓練しました。
ハチドリの羽ばたき方
ハチドリの羽は肉眼では見えないほど速く羽ばたき、ヘリコプターの羽根のようにブンブンと音を立てます。
科学者たちは、ホバーリングがどのように機能するかを見るために、1秒間に1000フレームの高速カメラで記録し、個々の翼の動きを調べることにしました。
すると、ほとんどの鳥は、飛ぶために翼を上下に羽ばたかせますが、ハチドリは、オールのように翼を前後に8の字に動かすことが分かりました。
これにより、上昇と下降のストロークで揚力が生まれ、ハチドリは上下に揺れることなく、安定した姿勢を保つことができます。
風や雨の中での飛び方
次に、天候が荒れるとハチドリはどのように反応するのかを調べるために、科学者らはハチドリを風洞に移動させて記録を開始しました。
実験では、最大時速約32kmの風が右側から吹き付けるなか、ハチドリは、砂糖水を得るために風の中を飛ばなければなりません。
この高速映像は、ハチドリが空気の流れに向かって体をひねりながら風を羽で制御し、尾で舵を取りながら安定を保つ様子を示しています。
そして、雨が降ってもハチドリは、濡れた犬のように体を震わせながら水滴を払い落として、エサに向かって飛び続けました。
ハチドリは食べ続けなければいけない
ハチドリが生き残るためには、毎日自分の体重と同じ量の蜜を摂取しなければならないため、食べないわけにはいきません。
同時に、ハチドリはエサを食べるときに花粉を植物から植物へと運ぶ役割をします。鳥と花の共生関係です。
このようにして、この小さな飛行生命は、雨でも風でも晴れでもエサを食べながら受粉を助ける方法を進化させてきたのです。