一見すると、火山は理想的なゴミ焼却場のように見えるかもしれません。
まず、ゴミを投棄しやすい楯状火山を探し、そこまで届けるのは困難です。
たとえ、数々の障害を克服してなんとか火口に投棄できたとしても、そこから大爆発や大気汚染を引き起こし、私たちの地球にさらなる害をもたらす可能性があります。
以下に、火山をゴミ処理場として活用するにはどんなリスクがあり、何が起きるのかについて見ていきましょう。
どうやら火山は、予想をはるかに超えて危険で、不安定なものなようです。
火山にゴミを捨てることは可能か
火山は地球上で最も過酷な自然現象のひとつ。
もし人間が、マグマが広がる中心部に高所から落下したら、体は跡形もなく消え去ってしまうでしょう。
では、物を消し去ることを得意とする火山にゴミを投げ捨てる計画はうまくいくのでしょうか?
莫大なコストの問題
火山ゴミ処理の探求における最初の障害は、その仕事を遂行できる活火山を見つけることです。
世界中で潜在的に活動している火山は約1500か所しかありませんが、そのほとんどはご存知の通り、 人間の生活域近くにはありません。
そのため、私たちのゴミをすべて回収し、活火山まで運ぶにはかなりの費用がかかるでしょう。
理想的な火山は「楯状火山」
一言で火山といっても、それは私たちがゴミを捨てやすいスタイルの活火山ではない可能性も十分にあります。
私たちが探しているのは楯状火山(たてじょうかざん:Shield Volcano)と呼ばれるものです。
有名なのはキラウエアという火山で、頂上までの傾斜もゆるいので、ゴミを運びやすい利点があります。
しかし、残念ながら、楯状火山は世界的にみても数少なく、日本でも火山といえば、ほとんどが成層火山と呼ばれる種のものになります。
成層火山はゴミ処理場には適さない
噴火によって、溶岩が流れるというよりも、熱いマグマが爆発によって破片状に散らばる「火砕物(かさいぶつ)」の割合が多いのが特徴です。
つまり、それらは町のゴミ捨て場としてはとてもリスクが高くなります。
では、もし幸運にも楯状火山を見つけることができた場合、今度はゴミをどのように運び、投棄するかを考えなくてはなりません。
ゴミを投棄すると溶岩の大噴出が起こる
もしあなたが、火山の噴火口までゴミを運ぶために雇われた最初の廃棄物収集員の一人だったら、すぐに後悔することになるでしょう。
火山の噴火口は有毒ガスが充満する危険な環境です。
さらに、噴火口へ物を投げると、溶岩の飛び散りやガスの蒸気が引き起こす爆発などによって事態はさらに悪化します。
2002年にエチオピアのエルタ・アレ火山で、研究者グループが、30キログラムのゴミを高さ約80mから溶岩湖に投げ込んだところ、ゴミの爆発を引き起こすことが確認されました。
溶岩湖は不安定なので、ゴミのように冷たい物体を投げ込むと、加圧された酸性蒸気を伴う爆発の連鎖反応が引き起こされ、事態は悪化してしまう可能性があります。
もし全国民のゴミをそこに投げ入れたら、これらの爆発がどれほど大きくなるか想像できますか?
ハワイの溶岩湖では、岩が落ちただけで、85メートルもの高さの溶岩が噴出したことがあります。
大気汚染の問題
たとえ安全に火山にゴミを持ち込むことができたとしても、大爆発が起こるだけでなく、フィルターなしで廃棄物を燃やすことによって生じるあらゆる大気汚染について心配することになるでしょう。
さらに、すべての汚染物質が完全に溶岩に燃やされるわけではなく、汚染物質の残留物が存在する可能性もあります。
それらが周囲に溶岩とともに流れ、海や山を汚染する可能性も考えなくてはなりません。
例えば有害な廃棄物を燃やすことを望んでいた場合、これらが環境に悪影響を加えてしまうのは決して理想的ではありません。
さらに、これらの火山にすべてのゴミを輸送することで、輸送中の二酸化炭素の排出量も大幅に増加します。
結果的に、火山にゴミを捨てに行くことは、全体としては最悪のアイデアといえるでしょう。