歴史上、どの国、帝国、国家、文明、宗教の旗にも紫色が見られなかったのはなぜでしょうか。
人々は旗に紫色を使うことを好まなかったのでしょうか。
禁止されていたのでしょうか、それとも他の理由があったのでしょうか。
どうやら紫色の染料があまりにも高価で貴重だったことに理由があるようです。
以下に、紫色の旗が無い理由についてみていきましょう。
紫色の染料の価値
紫色は歴史的に常に貴人と関連付けられており、その理由は紫色の染料がとても高価だったためでした。
貴族でも、さらには皇族であってもなかなか手にできるものではなく、紫色の服を買えるほど裕福な貴人だけが、高貴な紫色の布を手にすることができたのです。
ではなぜ紫色の染料はそれほどまでに高価だったのでしょうか。
紫色の染料が高かった理由
かつて、紫色の染料は、アクキガイに属する巻貝の分泌物から作られていました。
この染料の主な生産地は、ティルスとよばれる熱帯地方にあるレバノンの海岸沿いの小さな町で、
そこで作られるティリアンパープル (Tyrian purple)、いわゆるロイヤルパープル(貝紫色)と呼ばれる紫色の染料は、たった1.4グラムを作るために12,000匹のアクキガイが必要だったのです。
このように染料の生産がはるかに困難であったため、染料は高価で、重量で金の3倍もの価値があったといわれています。
これでは、紫色の旗を誰も選ばなかったのにも納得できますね。
紫色の染料の価値が下がったきっかけ
1856年にイギリスの化学者ヘンリー・ウィリアム・パーキンが、マラリア治療に使うキニーネを合成しようとしていたときの話です。
アルコールを使って他の化学物質の混合物が入った容器を洗浄していたところ、彼は偶然にも紫色の溶液ができたことに気づきました。
これが化学的に作られた最初の紫色の染料でした。
この幸運な大発見をしたとき、パーキンはまだ18歳だったといいます。
彼は、「モーブ色(藤色)」と名付けられた色の発見によって特許を取得し、そのおかげで裕福になりました。
パーキンのちょっとした偶然のおかげで、紫色の染料はもはや法外な値段ではなくなり、その後、紫色は世界中の布地で他の色と同じくらい一般的になりました。
紫色が旗に使われなかった理由については、以下の動画でみることができます。