ニューメキシコ州には魅力的な地質学上の奇岩が数多くあります。
コロラド高原の平坦な地形に突如そびえ立つ巨大な一枚岩もそのひとつ。
シップロックとして知られるこの地形には、ニューメキシコ州とアリゾナ州が多数の火山で満たされていた時代のユニークな火山物語があるのです。
ニューメキシコ州といえば、ホワイトサンズ国立公園の真っ白な砂丘から、
アルバカーキ北部のバレス・カルデラの火山体、
カシャ=カトゥウ・テント・ロックス国定公園、
そして、州の北西の端、ナバホ族自治区にも不思議な奇岩「シップロック」。
シップロックと呼ばれるこの岩塊は、2700万年前に活動した古代の火山の固いマグマだまりだといわれています。
では、この珍しい地形はどのようにして形成されたのでしょうか?
なぜ、この岩塊は、地面からそそり立つ一連の直線に囲まれているのでしょうか?
以下に、この2つの疑問に答え、この魅力的な地質学的不思議について紹介します。
シップロックはどのように形成されたのか?
シップロックは、周囲の平らな地形から483メートルもの高さに鋭くそびえ立つ岩頸(がんけい)。
このランドマークは約2,700万年前、ナバホ火山地帯と呼ばれる珍しい一連の火山がアリゾナ州、ニューメキシコ州、ユタ州、コロラド州の4州が一点で交わる地点近くで噴火したときに誕生しました。
当時、ファラロン構造プレートは、北米プレートの下にとても浅い角度で沈み込んでいました。
海のプレートと陸のプレートの間の摩擦により溶けた物質が、地表に噴出する前に上昇したため、この火山群が形成されたのです。
これらの噴火で噴出した溶岩にはシリカの含有量が珍しいほどに異常に低く、「ミネット(minette)」と呼ばれました。
2,700万年前、現在のシップロック周辺の砂漠の地形は、現在よりも914メートル高かったといわれています。
ミネット組成のマグマの大群が地殻に侵入すると、周辺の岩石を加熱し始め、この熱はやがてこの地域の豊富な地下水に一部伝わり、そこで水蒸気に変化させました。
水蒸気は同じ量の水よりも大きな体積を占めるため、そこには膨大な圧力がかかり、やがてこの圧力が大きくなりすぎたため、水蒸気爆発と呼ばれる噴火が発生。
その後、火砕流は地形を横切り、数キロメートルを流れて止まり、爆発によって放出された大量の岩石はすぐに地上に戻り、角礫岩と呼ばれる岩石として固まりました。
そして、噴火の跡地に残ったのは、「マール」と呼ばれる大きなクレーターでした。
そこが、噴火が起こったにもかかわらず、地表に到達することはなく固まったマグマによって、現在のシップロックのような形になったと考えられています。
岩塊が一連の直線に囲まれている理由
これが起きている間に、まだ冷えていない溶岩が断層や岩石の割れ目に侵入して、その亀裂を部分的に埋めて、板状に固まり始めます。
これが今日「岩脈(Dike)」として知られる垂直に近い火成岩の貫入を形成。
シップロックは6つの岩脈に囲まれており、固まった溶岩が隣接する堆積岩よりも浸食に強かった結果、その岩脈が今日、周囲の景観の上に噴出しているように見えるのです。
これらの岩脈の1つは長さが8キロメートルもあり、マグマが物質の主な塊からどれだけ離れたところに移動したかを示しています。
それから数百万年もの年月をかけて、凝固したマグマだまりの上の地面が浸食され、厚さ600メートル以上の岩石が取り除かれていきます。
しかし、固まったミネットマグマは、周囲の砂岩や石灰岩の層よりもはるかに浸食に強いため、侵食を受けずにしだいに姿を現していきました。これが現在のシップロックの岩塊です。
現在、この高くそびえるランドマークはナバホ族にとって神聖なものとされているため、登山は禁止されています。
しかし、この驚異的なランドマークの比較的近くを通るルート64やルート491からは、その姿を見たり写真を撮ったりすることができるようです。
ニューメキシコの古代火山の形成については、以下の動画で見ることができます。