玉ねぎを「あめ色に」、「茶色くカラメル化」するのに数分しかかからないレシピというのは残念ながら不可能です。
基本的に玉ねぎをカラメル化するには、長い時間コンロにかけておかなければなりません。
では、なぜそんなにも長い時間がかかるのでしょうか?
また、時間がないときに世に出回っている「時短レシピ」は実際の効果はどのようなものなのでしょうか?
以下に、たくさんの研究、たくさんの玉ねぎ、そしてたくさんの涙を経てたどり着いた答えを紹介します。どうやらあふれかえるレシピの中で試す価値のあるものたった1つだけのようです。
それは、長持ちするメリットを活かしてあめ色玉ねぎを大量に作って保存すること。
では、以下に玉ねぎのカラメル化について、時短レシピが存在しない理由を中心に、電子レンジやオーブン、圧力鍋などを使って実験したレシピをあわせて紹介します。
玉ねぎのメイラード反応に時間がかかる理由
玉ねぎがあめ色に「カラメル化」するのは、主に「メイラード反応」という化学反応によるもので、特に高温になると糖はさまざまな分子に変化します。
ただし、一般的なカラメル化には糖と熱しか必要ありませんが、メイラード反応には遊離アミノ酸も必要となります。
実のところ玉ねぎにはアミノ酸、また、アミノ酸に分解するタンパク質がほとんど含まれていないため、カラメル化にメイラード反応が寄与する割合はごくわずかなのです。
では、そもそもカラメル化とは何か、簡単に説明しましょう。
玉ねぎの甘さを出すには?
まず、十分に温度が上がると、大きな糖が小さな糖に分解され始めます。たとえば、ショ糖(スクロース)はブドウ糖(グルコース)と果糖(フルトース)に分解され甘さがほぼ2倍に増します。
そして、さらに多くの時間と熱を加えることで、これらの小さな糖の多くは、多種多様な物質へと変化します。
その中には、複雑な化学的理由から濃い茶色をした大きな分子もあります。
他にも、ナッツのような風味、フルーティーな風味、バターのような風味、苦味のある風味など、様々な風味を持つ小さくて揮発性の高い分子もあります。
さらに、未知なる理由で私たちの甘味の知覚を高める物質もあります。
この加熱プロセスが長引くほど、これらの最終生成物、つまり、あめ色で甘みがあってとても複雑な物質をより多く得られますが、ここで大切なのは、玉ねぎを焦がさない程度の低温で行うこと。
糖の分解には時間がかかる理由
さらに、玉ねぎには簡単に手に入る糖分が4%と多くはなく、ほとんどの糖分は大きな炭水化物に閉じ込められています。
十分な熱を加えると、糖分は分解され、甘みが増し、カラメル化がさらに進みます。
しかし、この分解にはとても時間がかかります。
そのため、玉ねぎを本当にカラメル化させるには、焦がさないように弱火でじっくり糖を分解する必要があり、どの程度深くカラメル化させるかによって、1時間から数時間はかかります。
玉ねぎのカラメル化成功例と失敗例
このあめ色のすばらしい玉ねぎは、1時間10分もかけてカラメル化させたものです。
では、この工程をもっと早くできないのでしょうか?
そこで、玉ねぎを簡単に素早く、そしておいしくカラメル化できるといわれる6つの裏技レシピを試し、先ほどの本物のあめ色玉ねぎと比べてみました。
電子レンジレシピ(15分)
まず、電子レンジでカラメル化した玉ねぎ。なんとたった15分でできあがりです。
できあがりは、とてもパサパサで、焼き色も不均一…、黒くなってしまい、フライドオニオンに近いものでした。完全に失敗作です。
オーブンレシピ(39分)
次に、オーブンで作る玉ねぎのカラメル化。
こちらは39分かかりましたが、乾燥しているうえ、生焼けで、焦げてしまい失敗。
ディグレージングの時短レシピ(25分)
次に、玉ねぎを強火で炒め、焦げ付かないようにディグレージング(水を加えて絶えずかき回す)。
「15分でできる」と書かれていましたが、実際には合計25分ほどかかりました。
出来上がりは「焼き色が付いた」玉ねぎですが、「カラメル化」ではありません。まだかなり硬く、ほとんど甘みはありませんでした。
少しでもカラメル化に近い仕上がりを求めるなら、これも失敗作です。
重層を使うレシピ(46分)
次は、定番のキャラメライズドオニオンですが、最初に重曹を少し振りかけました。
重曹を使うと調理時間が短縮され、46分でできました。
時短できた理由は、メイラード反応のように、高pH環境ではカラメル化が促進されるからです。
結果、味は理想に近いのですが甘ったるい感じで、本物のカラメル化のような深みや複雑さが全く感じられず、ドロドロ…またしても失敗作。
圧力鍋レシピ
圧力鍋を使うとカラメル化に42分かかるうえ、どろどろで、甘すぎ、失敗です。
蒸してからカラメル化(50分)
最初に玉ねぎを蒸して調理した後、フライパン返しで何度もひっくり返しながら中火強で炒めるレシピです。
これは、YouTube料理人、ヘレン・レニーさんが「蒸してから焦げ目をつける」と呼んでいるテクニックです。
柔らかく、どろどろではなく、驚くほど甘く、複雑な風味がありました。本物のカラメル化した玉ねぎとほとんど区別がつきませんでした。ついに合格です。
しかし、この方法による時間短縮は期待外れでした。
このテクニックなら30分でできると言われていますが、標準的な方法で1時間10分でできた玉ねぎとほぼ同じくらいのカラメル度に達するには50分もかかりました。
玉ねぎのカラメル化は時間短縮できない
結果、玉ねぎをカラメル化する時間を大幅に短縮しつつ、おいしく仕上げるのは、現実的には不可能だといきついたのです。
その科学的な理由は、カラメル化はとても繊細な反応であり、考えられるあらゆる条件やパラメータの影響を受けるため。
カラメル化のプロセスを大幅に加速するには、その条件を大幅に変更する必要があります。
例えば、高温、加圧、乾燥調理法、アルカリ度の増加などです。これらはすべて最終的な結果を左右します。
最後の蒸す工程を追加したレシピは、糖質や大きな炭水化物の分解が促進され、玉ねぎが柔らかくなってフライパンとの接触が増えるという利点があるものの、最終的にはほぼ標準的なカラメル化プロセスに戻ってしまい、時間がかかってしまいました。
解決策:大量に作って保存
しかし、幸いにもカラメル化した玉ねぎは冷蔵庫でも冷凍庫でも、とても長持ちするメリットがあります。
つまり、カラメル化した玉ねぎを作るのには時間がかかりますが、大量に作っておけば、必要な時にはいつでも手元にあることになります。これが、今までで一番早くカラメル化した玉ねぎを作る方法です。
玉ねぎのカラメル化については以下の動画で詳しく見ることができます。