しっとりとした天ぷらやべちゃっとした揚げ春巻きの皮ほど残念なことはありません。
ここでは、カリッとした歯ごたえのある揚げ物を作る方法を科学の力で解明します。
「カリッ」とした食感を生み出す作用を最大限活用するには、「食材の空洞」「油の温度」「2度揚げ」がカギとなります。
つまり、以下の3つの対処法を知るだけで、「サックサク」の揚げ物を作ることができるのです。
まずは、パリッとした揚げ物の食感を実現するために、「歯ごたえがいい」とは何であるかを理解することからはじめましょう。
「カリッ」とした歯ごたえを作る2つの要素
科学者たちは、さまざまな方法で「カリッとした歯ごたえ」をテストし、数値化していますが、それは、食品がどれだけ大きな音で砕けるかということにいきつきます。
「カリッ」と「サクサク」の違いについては意見が分かれるところですが、それは別のところで議論するとして、ここでは「カリッ」でいこうと思います。
私たちが大好きな「カリッ」とした食感には、主に2つの要素があります。
1つ目は、食品(少なくとも食品の表面)が脱水されていること、つまり乾燥していることです。
そして2つ目は、多孔質であること、つまり内部に空間があることです。
家庭で究極の歯ごたえを得たいなら、この2つの性質を考えて、最大限に生かす必要があるのです。
さて、「カリッ」とした食品にはさまざまな形がありますが、その多くがアジフライやカツ、クルトン、揚げ春巻きのような揚げ物です。
揚げ物の泡の正体
揚げ物から「カリッ」と感を連想するのには理由があるんです。
熱くなった食材の水分が気化して逃げ出すと、もともと水分があった場所には穴、水分の通り道にはトンネルや隙間ができます。
つまり、気泡ができるたびに、食材の表面が脱水され、内部に空間ができるのです。
この2つの性質が、「カリッ」とした食感を生み出す理由で、その多くが揚げ物に関係があるというわけです。
揚げ物に空洞をつくる
例えば、天ぷらに衣を使う場合、その衣で空洞を増やすことができます。
ベーキングパウダーのような膨張剤、あるいは気泡を放つビールを加えれば、衣に美しい気泡のネットワークを形成するのに役立つでしょう。
ビールに含まれるアルコールは揮発性が高いので、熱を加えると爆発し、大きな気泡を残すことができます。
パン粉のような大きくて不規則な形状のものを衣に選ぶのもよいでしょう。そもそもパン粉自体が表面に凹凸や割れ目、隙間が多く、空気感がある化合物なのです。
さて、揚げ物の準備が整ったら、次に大切なのは油の温度です。
油は高温に保つ
(料理によって適した温度は異なりますが)基本的には、油が170度から190度程度に熱くなるまで待ち、鋳鉄製など保温性の高いフライパンを使い、(食材を入れたときに温度が下がりすぎないように)食材同士が混み合わないように、少量ずつ揚げましょう。
2度揚げした方が歯ごたえがよい理由
この分子が、2つの物質の境界である界面に働いて油と食材が接触しやすくなることは、より食材の脱水が進み、より空気の多い空間ができることを意味します。
そのため、使いかけの油でもある程度まではカリっと揚がります。
ただし、何度も使い古した油、たとえば6回くらい使った油は、界面活性剤の働きをする分子が多く作られすぎて、食品が乾燥しすぎてしまうようです。
そのため、新しい油1カップに対して、古い油を大さじ1杯ほど入れておくと、「2度揚げ」の最大の効果を再現することができます。
さて、これで揚げ物料理は完成です。
しかし、カリッと感の追及はまだ終わりではありません。
時間が経つと揚げ物がべちゃっとなる理由と予防方法
せっかくカリッと揚げても、すぐに食材の内部の水分が、じわりと外にしみ出し始めます。
それが、水分が抜けた表面に再び水分を与えるのです。
多くのレストランが2度揚げをするのはそのためで、高温の油で2度揚げすることで、内部から出た余分な水分が取り除かれ、さらに空洞ができ、サクサク感が倍増するのです。
もしご家庭で時間があれば、ぜひ2度揚げを試してみてください。
さらに、でき上がった揚げ物に湿気がこもるのを防ぐため、金属製の網に食材をのせて、食べるまで低温のオーブンに入れておくのもよいでしょう。
それによって、「カリッ」とした食感を生み出す作用を最大限活用することができます。
もちろん揚げ物のおいしさはサクサク感だけではありません。
しかし、今回は、揚げ物の「カリッ」とした食感を生み出す方法について分子の中の結合に焦点をあててみました。
過去には、異なる食べ物でのにおい分子の構造的な類似性を強調した記事もあるので参考にしてみてください。