答えは、クッキーやパンをはじめとする焼き菓子の種類によって使い分けること。
特にクッキーの場合、バターを使うとサクサクした食感になるのが一般的です。
ショートニングを使うと、よりふんわりとした軽い食感になります。
よくレシピに「さくさくの絶品クッキー」といった類のキャッチコピーがありますが、「バター」の力によってそれは実現しやすいようです。
わずかに溶けたバターは、オーブンの中でクッキー中に広がり、パリッとした歯ごたえのある食感をつくり出します。
しかし、ふわふわした、柔らかな食感のクッキーやパンを作りたいなら、バターを減らし、ショートニング(植物油から作られた固形脂肪)に置き換えた方がよいでしょう。
以下に、焼き菓子には、ショートニングとバターのどちらが良いのかについて、それぞれ目的別のメリットをあわせて紹介します。
焼き菓子での油脂の役割
バターやショートニングなどの油脂はおいしい焼き菓子作りに欠かせないものです。
水分を与え、気泡を閉じ込めて、ふっくらとした食感を生み出します。
また、風味を運んで閉じ込め、食感を良くするのも油脂の役割です。
では、どのような種類の油脂を使えばいいのでしょうか?
実は、ショートニングは100%純粋な脂肪ですが、バターは約81%しか脂肪がなく、残りは水分です。このことが、それぞれの用途に影響を与え、レシピの中でのパフォーマンスを決定づけています。
バターを使うと歯ごたえがでる
サクサクした食感のカギとなるのは、タンパク質によってできるグルテンです。
グルテニンやグリアジンなどのタンパク質を含む小麦粉は、水と合わさったときに、これらがグルテンを形成します。
カリカリのパンやクッキーに歯ごたえを与えているのはこのグルテンです。一方で柔らかいケーキや焼き菓子に形成されているグルテンは少なくなります。
バターは通常約80%の脂肪、15%の水分、そしていくつかの乳タンパク質からなります。この少量含まれた水分が、小麦粉のグルテンを活性化するのを助けているのです。
また、バターの融点はショートニングより低いので、調理時のバターの温度は食感に大きく影響します。バターのみでクッキー生地を作る場合は、焼く前に冷蔵庫で1時間程度冷やすと、平たく広がるのを防いでよりショートニングに近いまとまりのある生地に仕上がります。
ショートニングはふんわりとしたソフトな食感
一方で、ショートニングは100%脂肪で融点が高いため、グルテンを形成しにくく、よりふんわりとしたクッキーにします。
また、脂肪の使用量とクッキーの品質に関する研究によって、バターよりショートニングの方が密度の低い生地ができることも確認されています。
この生地密度は、できあがりを左右する最大因子の1つで、低密度の生地はオーブン内での広がりが少ないため、硬くなりにくく「適度な食感」を生みやすくなります。
パイ生地にはバターというイメージが強いのですが、ショートニングを使うと、よりきめ細かく軽い食感のパイができます。
バターとショートニングの味の違い
ショートニングは、無味無臭な植物性油脂であるのに対し、バターは塩分とクリーミーさがあります。
リッチなバター風味を選ぶか、または、小麦や酵母など素材そのものを味わいたい場合は、それらを邪魔しないショートニングを選ぶというように、焼き菓子の目的によって選ぶとよいでしょう。
クッキーの場合、風味のよいバターだけを使うよりもショートニングと半々で混ぜた方が生地にまとまりがでやすいので、両方を混ぜて使う人も多いようです。