こんがりと焼けたステーキを火から下ろしたとき、あなたにとっては出来上がりかもしれませんが、肉は違います。
肉の中の温度は上がり続けているのです。
これがいわゆる「余熱」と呼ばれるもので、食材が熱を持ち続けているために、私たちはたくさんの食品を焼きすぎてしまいます。
しかし、熱を加えていないのに、どうして肉は熱くなるのでしょうか?
料理の焼きすぎを避けたいのなら、どうすればいいのでしょうか?
以下に、なぜ余熱が生まれるのか、その3大要因や焼きすぎを防ぐための方法について紹介します。
余熱が生まれる理由
まず初めに、はっきりさせておきたいことがあります。
肉料理でよく見られる余熱は、野菜からゆで卵まで、あらゆる食材で起こることです。
一般的に食品は熱伝導がとても悪く、外側に加えた熱が内側に広がるのに時間がかかります。
そのため、何かを調理すると、熱はまず表面にたまり始め、さらに熱を加えれば加えるほど、そのたまりは内側に向けて積み重なるのです。
調理中のものを火から下ろす頃には、外側と内側でかなり大きな勾配(温度の変化率)が生じていることがあります。
たとえば水の入ったグラスに氷を入れると、水は少し冷たくなり、氷は少し溶けます。
熱は常に高温の部分から低温の部分へと移動します。
熱々のフライパンで焼いたステーキで起きているのは、まさにこれなのです。
氷水の中と同じように、熱は外側の熱い部分から内側の冷たい部分へと移動していきます。
また、熱くなった肉の表面と、それを取り囲む冷たい空気との間にも勾配があるため、一部の熱はステーキの外へと移動し、残りの熱は内側へと移動して内部の熱が肉全体に行き渡るまで焼き続けるわけです。
この熱の勾配と移動というものを理解すれば、なぜ誤って焼きすぎてしまうのかがわかるでしょう。
焼きすぎのもと「余熱」の3大要因
そして、この知識を使うと、焼きすぎを避けることができます。
内部温度や食感など、あなたの焼き加減の基準が何であれ、その基準に達する前に火を止め、あとは余熱に任せるだけでいいのです。
しかし、それはどれくらい早いタイミングなのでしょうか?
科学的にはいくつかの目安があります。
形
第一に、平らな食品は丸くて厚みがある食品よりも余熱が少ないこと。
なぜなら、平らな食材は熱を外に逃がす表面積が大きいからです。一方で、丸いものは表面積が小さく、より多くの熱を閉じ込めておくことができます。
そのため、平らな食材の方が、余熱を考えて、早めに加熱を止めなければなりません。
大きさ
まず、大きければ大きいほど、同じ体積における表面積の割合が小さくなります。
表面積の割合が小さいことは、保持できる余熱が多いことを意味します。
小さなコップよりも巨大な水差しの方がどれだけ多くの熱を持ち、その熱がどれだけ簡単に内側に広がって1つの氷を素早く溶かしてしまうかを考えてみてください。
調理温度
温度が低いとは、例えばじっくりと燻製を作ったり、真空調理(低温調理)をしりする場合です。
熱は蓄積されることなく、勾配がほとんどない状態で、食材に行き渡ります。
温度差がほとんどないため、調理後に熱が移動することはあまりないのです。
しかし、高温で調理する場合、外と内部の温度勾配が大きいために、余熱も多くなります。
焼きすぎを防ぐ方法
このような「形、大きさ、温度」の危険因子が多ければ多いほど余熱を考えて調理する必要があります。
例えば、大きくて丸い七面鳥は、オーブンから取り出した後、内部温度が15度も上昇することがあります。
一方で、危険因子が少ないほど、余熱も少なくなります。
例えば、野菜は一般的に小さく、表面積が大きいので、余熱が発生しにくいのです。
もしあなたが本当に数学が好きなら、料理を一番おいしく仕上げるには、いつ火から下ろせばいいのか、微分方程式で計算することもできるでしょう。
幸いなことに、難しい計算をしなくても大いに役立つガイドラインがあります。
もしあなたが判断を誤り、余熱を考えずに焼きすぎてしまった場合は救世主に頼りましょう。
冷凍庫の出番です。
食材の表面と周囲の空気との温度勾配を大きくすることで、たとえ1分間でも、食材から多くの熱を奪うことができます。
冷凍庫からできあがった夕食を取り出すと、ゲストは少し驚くかもしれませんが、焼きすぎるよりはずっといいはずです。
食材を焼きすぎるのを防ぐ方法については以下の動画で見ることができます。