地球と太陽系にある他の惑星の決定的な違いは、水の存在です。
この水の起源は一つではなく、地球が誕生するはるか昔、小惑星の衝突や太陽系星雲ガスによってもたらされたなどパズルのピースのように複数の要因が関係していると考えられています。
どうやらこの地球を青く色づけた水は、 全く予期せぬものから生まれたようです。
それでは、地球にどのようにして水が生まれ、他の惑星と違う運命をたどるようになったのかについて現段階で考えられている有力な説を中心に以下に分かりやすく紹介していきます。
地球は、表面の約70パーセントが水で覆われています。
水は、生物が生きていくにはなくてはならないものですが、実は、地球の成り立ちを考えると表面は乾燥しているはずで、水が液体の状態で存在しているのはとても不思議な現象なのです。
地球の成り立ち
地球という惑星が存在する太陽系は、今から46億年前に、太陽が誕生したことによって始まりました。
太陽は、銀河の片隅で、宇宙空間にあるガスや塵(ちり)が集まってどんどん重たくなり、その中心部分がぎゅっと圧縮されて温度が上昇し、発火したことによって形成されました。
できたばかりの太陽は、若く、不安定で、強烈な熱風「太陽風(たいようふう)」を放つ恒星(自らのエネルギーで光を放つ天体)でした。
時とともに、太陽の周りには無数の微惑星(小さな天体)や岩が形成され、それらが衝突を繰り返して惑星が誕生します。
地球には本来、水は存在しないはず
ここで問題です。
太陽系の中では、水の材料は、どの惑星にもあったといわれますが、実際には、初期の太陽系の内部は、あまりにも温度が高すぎたため、水や氷、水蒸気も全て、強烈な太陽風によって吹き飛ばされてしまったはずです。
それではもし、地球ができたときに水がなかったのなら、今ある海洋はどこからきたのでしょうか。どうして、地球上には、水が液体としてこれほどまでに大量に存在するのでしょうか?
地球上の水(H2O)が、イオンからできたものではないことはすでに知られています。
燃焼、呼吸、光合成といった自然過程において生産される水の割合は、消費されるものとほぼ同じで、余剰分はほとんど生まれません。
どちらにしろ、地球上にありあまる量の水を、地球自らが作り出してきたと説明するにはほど遠いものです。
地球の水は、最初からあったものでも、後に地球で生産されたものでもないとすれば、果たしてどのように生まれたのでしょう。
地球にぶつかった彗星から水が生まれた説
彗星とは、氷や塵からできた(氷が残存できる)小さな天体です。
一説には、太陽系の外側の小さな天体が、流星体、または、彗星に乗って、地球に飛んできた時に、水の源を運んできたのではないかといわれました。
しかし、彗星の水は、地球の水よりも重水素(核に陽子と中性子両方を持つ水素)に富んでいることが分かり、その可能性はなくなりました。
水素原子の比率が、地球と彗星のものでは不釣り合いであることは、科学的に考えて、地球の水を彗星を起源とする考えはありえないことを示しています。
隕石の衝突によって水が生まれた説
地球の水の源は、「炭素質コンドライド」と呼ばれる流星体の一種であろうといわれるようになりました。
コンドライドとは、地球にぶつかった石質隕石につけられた一般的な名前で、炭素質コンドライドは、そのなかでも有機物として炭素を含む隕石をさします。
炭素質コンドライドには、水が含まれています。水が含まれているのは、太陽系にある凍結線(とうけつせん)の外側で形づくられたからです。凍結線とは、恒星(太陽系でいうと太陽)からの距離によって区切られた線で、この境よりも遠方の宇宙空間では、低温のために水は液体としては存在できず氷(個体)になります。
重要なのは、この炭素質コンドライドの水が地球の水と同じ化学的特徴をもつことです。
特に注目すべきは、重水素(質量が水素の約2倍ある重たい水素)と普通の水素が、同じ比率を有することです。
また、過去の研究で、非常に強力な衝突によって生み出された熱とエネルギーにもかかわらず、隕石からの水は地球上に残されることが既に示されていることも後押ししています。
これらは、初期の地球に衝突した小惑星からの水が、海洋や雲、川の源であることを強く示しているといえるでしょう。
しかし、それでもなお、地球の水の起源にはナゾが残されています。
地中深くにある水素のナゾ
地球に存在する水に含まれる水素はすべて同じ種ではなく、地球の中心深く(内部)から収集された水の水素は、重水素の割合が異なり、非常に少量で隕石からのものではない可能性がでてきたためです。
これについては、アリゾナ州の研究者であるSteven Desch氏は次のように述べています。
地球内部の水素は、小惑星以外からもたらされたもので、今可能性として考えられるのは太陽系星雲ガスだけです。
これは、これまでの太陽系誕生の考え方を変える新たな一歩となります。
私たちの太陽系は、宇宙にあるガスや塵が集まった星間雲から生まれました。このガスや塵の塊が引力によって回転しながら縮み、中心には太陽が生まれ、その周辺にはガスや塵が円盤状になった太陽系星雲ができたといわれています。
地球や惑星は、星間雲のガスや塵からできた微惑星の衝突によって大きくなったものです。
かつては、このような惑星の形成が始まる前に、太陽系星雲ガスは消滅したと考えられていました。
しかし、新たに、惑星が衝突によって形成され始めた頃にも、太陽系星雲ガスが存在し、地球のより深い部分に水素が取り込まれた可能性があることが分かってきたのです。
もちろんこの説を明確にするにはまだ研究が必要ですが、地球の水の起源は一つではなくパズルのピースのように、その他の要因も考えられることとなりました。
つまり、地球が誕生するはるか昔、小惑星の衝突や太陽系星雲ガスによって水がもたらされたという複数の要因です。
どうして他の惑星には水が液体の状態では存在しないの?
ここで、地球以外の惑星にも、炭素質コンドライドの隕石が衝突した時に水が生まれるのではないかという疑問が浮かびます。
例えば、火星には、かつて水が存在していた痕跡があるといわれますが、太陽からの距離が地球よりも遠く、現在は惑星が冷えて、気温がマイナス60度にもなるため、もし水があったとしてもすぐに氷結してしまい、液体の状態では存在できません。
月は、太陽からの距離が地球と同じですが、小さくて重力が地球の1/6であるため、水や大気の分子を地表にとどめておくことはできません。
また、地球の約4000万キロ内側を回る金星は、地球とほぼ同じ大きさですが、太陽からの距離が近く、灼熱の惑星であるため、水はすぐに蒸発してしまい、液体で存在することは不可能です。
このように、地球を青く色づけた水は、全く予期せぬことから生まれたものであり、さらに、地球が奇跡的にも水を液体の状態で保持できているのは、水分子をとどめられる引力をもつ大きさで、かつ、太陽との絶妙な距離間であるからなのです。
地球の水の存在には謎が残されている
実のところ、地球上の水の起源、または、水星や金星、火星のような太陽系にある他の地球型惑星(岩石惑星)と比べて地球にある液体の水が明らかに多い理由に関しては、いまだ完全には理解されていません。
過去45億年にわたって、地球の表面上に海洋を形成するのに十分な量の水がどのように蓄積されてきたかに関しては、多かれ少なかれ互換性のある仮説が存在し、今も研究が続けられています。
参照元:
・Where Did Earth’s Water Come From?
・The origins of Earth’s water are a big mystery