登山家が「デスゾーン(死の地帯)」と呼ぶ山の領域とは

身近なふしぎ

「デス・ゾーン」とは、その名の通り、登山家たちから「死の地帯」と恐れられている山の領域です。

なお、そこには数々の登山家たちの死体が、回収されることなく放置されたままとなっています。

そこは、救援部隊やヘリコプターでさえ、たどり着けない場所なのです。

ここでは、高い山にある特定の領域が、なぜ「デス・ゾーン」という恐ろしい名で呼ばれるようになったのか、そこに足を踏み入れると何が起こるのかについて、世界各地にある最高峰の山々の最速登頂記録を持つ登山家Vanessa O’Brienさんが説明したものを分かりやすく紹介します。

彼女は、エベレストに次ぐ世界第2位の高さを誇るK2(ケーツー、標高8,611m)を登った最初の女性です。

デス・ゾーンの恐ろしさ

エベレストやK2、カンチェンジュンガなど標高の高い山を登ると、標高8000メートル付近で「デス・ゾーン」に足を踏み入れることになります。

そこは、対流圏の境界を越えた地球の大気の上層部「成層圏」であることを覚えておかなければなりません。成層圏とは、ジェット機が飛ぶ領域です。

つまり、人間が死に至る場所を意味します。

8000メートル付近は、気圧が低く、酸素が非常に薄いため、少し動いただけで、体内の酸素を使い果たしてしまいます。

たとえ酸素ボンベを用意していたとしても、死から私たちを守るには十分とはいえません。

脳では、極度の酸欠状態が続き、脳細胞が死んで認知機能障害を引き起こします。

知っているように、脳と肺は、人が生きていくうえで、最低限必要な器官です。

また、氷点下の寒さに長時間さらされることで、手足の体組織が凍結し、凍傷になります。

そして、消化機能はストップし、副腎不全に陥ります。

簡単に言うなら、デス・ゾーンに足を踏み入れた時点から、死への時限爆弾のカウントダウンが始まったようなものです。

おそらく、人間がデス・ゾーンに滞在できるのは、24時間が限界でしょう。

それ以上は死を意味します。

Vanessaさんの登山チームがK2を登ったときも、時間がなによりも心配の種だったといいます。

頂上に達したときには、すでに、16時間が経過しているうえ、下山は夜、そして、最終的に23時間かかりました。

それは、24時間まであとわずかしか残されていない、本当に死と隣り合わせのぎりぎりのラインだったのです。

参照元:What It’s Like In The ‘Death Zone’ Of The World’s Tallest Mountains