「天気予報の湿度はあてにならない」といわれる理由

自然科学・地球科学

スマホの天気予報アプリで湿度を気にしたことがある人は、その湿度があまり意味をなさないことに気づくかもしれません。

今回は、同じ湿度75%でも、夏と春とでは感じ方が全く違うのはなぜなのかについて、天気予報が採用する湿度の出し方をもとに分かりやすく紹介します。

例えば、夏に天気予報が湿度75%と表示すると、汗でベタベタになってしまいます。

一方で、冬になると、湿度75%は肌が超乾燥していることを意味します。

一般的な湿度の定義がこれでは、ちょっと不便ですよね。では、一体何が起こっているのでしょうか?

それは、天気予報の湿度のほとんどが相対湿度と呼ばれるものを採用しているからです。さっそく以下にみていきましょう。

天気予報が示す湿度とは

携帯電話やほとんどの天気予報チャンネルは、相対湿度を具体的に表示しています。

相対湿度。少し難しい響きですが、その数値は、

空気中に実際に含まれている水分量」と「同じ温度下で空気が保持できる水分量」の比率を割り算で計算し、(100をかけて)パーセンテージで表されたもの。

つまり、同じ温度下で、空気がどれだけの量の水分を空気中に保つことができるかがカギになるのです。

重要なのは、空気中の水分量は気温によって大きく左右されるということです。

一般的に、空気の温度が高い状態の方がより多くの水蒸気を含むことができます。天気予報の湿度が低い日でも、冬の窓際やグラスのコップの周辺は、空気が冷えやすいのでそこだけ部分的に湿度が高くなります。

湿度が高いと不快な理由

空気中の水蒸気が出てくるには、気体から液体にならなければなりません。

水滴は通常、窓ガラスやほこりのようなものに凝縮して出てきます。

たとえば、グラスについた水滴の場合、部屋の空気中に含まれた水分(水蒸気)が、グラスに当たって急激に冷やされたものが液化して表面に水滴となってあらわれたものです。

物質が気体から液体になるためには、エネルギーをいくらか失わなければなりません。

言い換えれば、分子の動きが物理的に減速してしまうのです。

さて、空気が暖かいとき、その中の水分子は大きなエネルギーを持っているため、冷たい空気中の水分子よりも活発に動き回っています。

つまり、水分子は大気中で凝縮しにくくなります。温度が高い日だと特に水分子が空気中のあちこちでうろうろしているので、ベタベタした感じになるのです。

相対湿度は温度の影響を受ける

相対湿度には温度が大きく関わっています。

これが、この統計がおでかけの計画を立てるのにあまり役に立たない理由です。

気温がマイナス10度の場合、空気中にはそれほど多くの水分が含まれません。そのため、湿度75%は実際にはそれほど水分量がなく、湿度は高くないのです。

しかし、気温が20度であれば、受け皿となる水分量自体が大きいので、湿度75%は必然的に水分が多く、蒸し暑さを感じさせます。

もしあなたが、温度に依存しない湿度を知りたかったら、露点温度を参考にするとよいでしょう。

温度に依存しない「露点温度」とは

一定の気圧のもとで温度を下げたときに、空気中に含まれている水蒸気が冷やされて、液体に凝結し始めるときの温度を「露点温度(ろてんおんど)」といいます。

簡単にいうと、窓ガラスに結露ができたり、芝生に水滴や露ができたりするときの温度のことです。

これは、空気中に持つことができる水分が、最大限にまで量が達した時(完全に飽和している状態)の温度です。

この露点が、空気の温度より低いほど、水滴は発生しにくくなり、空気は乾燥しますが、露点温度が気温に近いほど、ベトベトした不快感を感じるようになります。

露点温度と気温が同じ場合、相対湿度は100%となるわけです。

参考までに、人によって露点温度への反応は異なりますが、多くの人は露点が10℃程度であれば快適に感じ、15度や21度あたりになると、かなり湿度が高くなり、不快感を感じるようになるようです。

露点温度に関しては、まだまだ新しい尺度ですが、外気温がどんなに低くてもこれなら一貫しています。

天気予報はなぜ「露点温度」を使わないのか

もし露点温度が、外界の湿度の感じ方を伝えるのに最適な方法なら、なぜ天気予報アプリや天気予報チャンネルは露点温度を使わないの?

それは、歴史的な問題が大きいようなの。

相対湿度を測定する機器の方が、露点を測定する機器よりも先行しています。

例えば、湿度を測る機械式の湿度計が最初に登場したのは1783年。

これらの装置は一般に広く普及し、当時としては信頼性の高い相対湿度の測定が可能であったため、残念ながらこの言葉の方が定着してしまったようです。

飛行機雲も湿度に影響する「飛行機雲が消えないと雨が降りやすいといわれる理由」

上空の空気中に水分がたくさん含まれている場合(湿度が高い)、飛行機の排気ガスに含まれる水蒸気が加わることで、水蒸気が飽和状態になりやすくなり(空気中に水分がいっぱいになって余地がなくなる)ます。

そのまま露点温度(水蒸気が凝結して水滴になる温度)に達すると飛行機雲ができるわけですが、このとき上空の水分量が多い(湿度が高い)と、この飛行機雲は消えにくくなります。

それが、「飛行機雲ができやすかったり、なかなか消えなかったりすると雨が降る」といわれる理由です。

つまり、空の上の水蒸気の量が多いということは、これから雲が発生して雨が降りやすいことを暗に示しているのです。

参照元:Relative Humidity Isn’t What You Think It Is