科学者が驚いた「カナリアの病気の予防方法」とは

2021年9月14日

人間と違って、カナリアは、ソーシャルディスタンス(社会的に距離を置く)という選択肢がありません。たとえ、鳥かごの中で病気になった仲間がいても。

しかし、カナリアは、病気から群れを守るために巧妙な防衛策を進化させたと考えられています。

なんと、カナリアの免疫システムは、病気の鳥を見ただけで自動的に発動するというのです。

今回は、カナリアが病気の仲間を見るだけで、感染を防ぐために免疫力をアップさせる仕組みについて紹介します。

この免疫反応の仕組みを正確に理解できれば、病気がカナリアの群れ、さらには人間を含む他の生物種にどのように広がっていくのかを解明できるのではないかと期待されています。

カナリアの病気の予防方法とは?

研究者たちは、これまで、病気になるとさまざまな動物の行動が変わることはわかっていましたが、病気の仲間がそばにいることで実際に身体的反応を起こすことは明らかにはされませんでした。

そこで、この疑問を探るために、2021年にペットのカナリアを使った実験の研究論文が発表されました。

カナリアの免疫システムを調査

まず、数羽のカナリアに、呼吸器感染症を引き起こす細菌を感染させました。

そして、感染した鳥と同じ部屋に、健康なカナリアの鳥かごを置きます。

この時、健康な鳥は、目の充血や倦怠感など目に見える症状が出ている病気の鳥を見ることができますが、彼らのケージは十分に離れているので、感染からは守られています。

次に、研究チームは、比較対象として、2つ目のグループのカナリアも部屋に入れました。

唯一の違いは、このグループは仕切り板で視界が遮られていたために、病気の鳥を見ることができなかったことです。

1ヶ月後も鳥は健康のままだった

その後、約1カ月間、研究者たちは、カナリアたちの健康状態と免疫反応を追跡調査しました。

血液検査の結果、予想通り健康な鳥たちは、一匹も病気の鳥から呼吸器感染症をうつされませんでした。

しかし、驚くべきことに、病気の鳥を見ることができた実験グループの鳥たちにおいては、白血球の数が増加したままで免疫システムが活性化し続けていたのです。

白血球とは、体が細菌などの侵入者を撃退するために作り出す細胞で、さらに、免疫反応を媒介する「補体」と呼ばれる血中タンパク質値も高かったのです。

これらのタンパク質は、通常、感染に対する免疫反応で活性化されます。

つまり、鳥たちは、実際には感染症にかかっていないのに、まるで病気にかかっているかのように身体が反応していたのです。

病気の鳥を見るだけで免疫反応が活性化

一方で、仕切り版で視界が遮られた鳥では、免疫系に変化が見られませんでした。

今回の発見は、仲間が病気になった証拠を見ただけで、カナリアは十分に免疫反応を引き起こせることが示されました。

研究者たちは、カナリアのこの戦略が、病気にならないようにするために進化したのではないかと考えています。

この初期の免疫反応は、感染を未然に防ぐ方法として機能しているのです。

白血球を増やしたり、補体を増やしたりするのは大変なエネルギーを必要とします。

しかし、そのおかげで、これらの鳥は社会集団に住む多くの恩恵を受けながら、伝染病が増えるデメリットを抑えているのです。

人間も病気の画像を見ると免疫システムが活性化

カナリアだけではありません。

2010年に行われた研究では、人間も病気の症状の画像を見ただけで白血球の活動が活発化すると示されました。

研究者たちは、この身体的反応が、人間の行動免疫システムと呼ばれるものに関連していると考えています。

行動免疫とは、人間が生存や繁殖に有利に働くように進化させたもので、病気への防御の第一線としての役割を果たします。

私たちが、病気になる能性のある汚い場所や腐った食べ物に嫌悪感を抱くのもそのためです。

さらに、このような行動的な免疫システムは、身体的な免疫反応を引き起こす引き金となっている可能性があります。

無意識の免疫反応への理解が将来に光をもたらす

これから、カナリアや他の生物がとる無意識の反応への理解がすすむと、集団の中で病気がどのように移動するのかについて、新たな知見が得られるかもしれません。

まだまだ先の話ですが、将来的には、これが病気の蔓延を防いだり、遅らせたりする新しい方法の開発に役立つかもしれないのです。