地球の年齢の数え方とは

地球の歴史を教えてくれる鉱物宇宙・航空科学

地球の誕生や、その後に起こったできごとを知るための重要な「鉱物」の存在について、また、マグマオーシャンと呼ばれる超高温の地球誕生初期への常識が覆された新発見について紹介します。

私たちは、地球誕生初期に生きているわけでもなく、これまで実際の地球の年齢を知るための証拠はありませんでした。

しかし、ある鉱物の発見によって今、謎に包まれた初期の5億年「冥王代」をはじめ、地球誕生のナゾ解明が一歩前進したのです。

地球の実年齢を知るのが難しい理由

月はとても古い星のようです。

少なくとも、表面全体が小惑星の衝突による凸凹やごつごつした岩石で覆われているため、古く見えるのです。

一方で地球は、どうでしょう?

大昔に、隕石が衝突して大きな凹みができたことは知っていますが、今の地球には大きなクレーターもほとんどなく、とても新しい星に見えます。

どうやら、地球が若々しい惑星に見えるのは、地球の最も外側の層が常に更新され、年齢が隠されているからです。

地球の表面は、常に生まれ変わっている

地球の表面の地殻は、下記の要因によって常に生まれ変わることで、実年齢よりも若々しくみえています。

火山の口からは新しい岩石が地表にはきだされ、
海底ではマグマが放出され、冷えて新しい海底が生まれ、
大陸同士がぶつかると岩石が変形して山ができ、
海底に積み重なった岩石がプレート運動によって大陸の下に沈みこむごとに海底はリサイクルされていきます

岩石の年齢を調べる方法

岩石が生まれ変わる過程では、見た目が若返るだけでなく、少なくとも私たちにとっては、岩石が若返っていることになります。

なぜなら、岩石を年代測定する最も優れた方法は、岩石に含まれる特定の放射性元素の崩壊量を測定することだからです。

崩壊とは、原子が放射線を出して別の原子に変わる現象のこと

放射性元素?原子?もうちょっとわかりやすく教えて。

分かったわ!

では、この世にあるものは、全て原子と呼ばれるとても小さな粒でできているって知ってる?

原子とは、物質の最小単位のこと。水も空気も私たちも、花も公園にある鉄棒も全て原子が集まってできています。

原子にはたくさん種類があり、原子の組み合わせによっていろいろなモノがつくられているのです。

そして、ほとんどの原子は安定していますが、なかには不安定な原子もあります。

それらは、安定した原子になろうとする過程で放射線と呼ばれるエネルギーを出して、別の安定した原子にかわることがあります(崩壊

放射線は、安定した原子になると放出しなくなりますが、それまでは時間とともに同じ割合で減っていくため、特定の放射性元素の崩壊量を調べることで岩石がどれくらい前に生まれたものなのかを知ることができるのです。

いわば、岩石が形成されてからの年代が記録されたもの。

しかし、岩石が溶けて新しく生まれ変わるとき、その崩壊の証拠はすべて破壊されます

海底は新しく生まれ、広がっている説

海洋底拡大説

1960年代頃から、海底は、つねに新しく生まれ、両側に拡大しているとする有力説が出てきました。

その説では、地球内部からわきでるマグマの出口「海嶺(かいれい)」付近の岩石は最も若く、新しく生まれた海底が成長しながら古い海底を両端に押し出しているので遠く離れる岩石ほど古いことになります。

古い岩石は、海嶺から離れるにつれて徐々に古くなり、大陸の下に沈み込んで(海溝)地球に還っていいくのです。

このことから、地球は岩石を常に作り変えており、また、岩石を作り変えると内部時計がリセットされてしまうため、岩石の年齢を実際に見て確認することが難しくなります。

そのため、地球の歴史を岩から調べてさかのぼるのは本当に難しいといえます。

地球の岩盤の年代を調べるのは難しい

燃えるような地球の表面で大昔に形成された最初の固体の岩石のほとんどは、おそらくとっくに作り直されています。

これでは、地球の岩盤の年代を測定することはできません。

そこで登場するのが、ジルコン(ZrSiO4)という弾力性のある小さな鉱物。

ジルコンと呼ばれる鉱物から年代を測定

ジルコンは、化学構造も耐久性も石英(SiO2)に似ているため、他の鉱物が風化した後でも長く存在し続けることができます。

さらに注目すべきは、ジルコンには、石英にはないものが2つあること。ジルコンの名前の由来にもなったジルコニウムと、微量の放射性ウランです。

ジルコンは、つくられたときにはほとんど鉛が含まれていませんが、ジルコンに元から含まれている不安定なウラン原子が最終的に放射性崩壊して鉛原子になるため、その崩壊量を調べることで鉱物の年代測定ができるのです。

なかでも、西オーストラリア州の砂岩の中に埋まっていたジルコンの結晶は、鉛の含有量がとても多いことで有名です。

このジルコン結晶は44億年前のものであることが分かりました。

ジルコンによって地球生誕6億年までのナゾが解明され始めた

これは同時に、地球が生まれてからの5億年間、「冥王代(めいおうだい)」と呼ばれるこのナゾに包まれた時代への理解を根本からゆるがす可能性もあります。

それまで、冥王代の地球は、マグマオーシャンと呼ばれ、度重なる隕石の衝突や溶岩流出からなる1000度を超える灼熱の世界だったと考えられていました。

しかし、44億年前にできたジルコンの調査から、地表面は既に冷えており、はるかに低温で、大陸地殻や海洋ができていた可能性がでてきたのです。

このジルコン結晶が地球上の最初の岩石で形成されたかどうかは分かりませんが、もしそうでなければ、さらに古い岩石もあるはずです。

隕石のかけらが教えてくれる太陽系の歴史

存在さえしていなかった私たちは、この惑星がいつ生まれ、何が起きてきたのか知るのは不可能です。

現在、それを解明できる唯一の光が地質学にあるようです。

1969年に、メキシコに落下したアエンデ隕石においては、約45億6600年前につくられた岩石で、オーストラリアのジルコンよりも古いものであることがわかりました。

それは、今発見された太陽系の中で最も古い岩石です。

その2年後には、アポロ14号によって45億年前のものとみられる月の石を持ち帰られています。

これらの岩石をもとに、太陽系や地球誕生、さらには生命の始まりについてのこれまでの有力説が見直されつつあります。

地球が、年齢を隠すための「地殻更新」をする努力にもかかわらず、ジルコンの小さなかけらを使ったウラン・鉛年代測定法は、私たちの惑星の地殻が少なくとも44億年前に形成されたことを教えてくれました。

もしかすると浸食や火山噴火、小惑星の衝突による破壊を免れた超原始的な生命が海に存在したかもしれないのです。

「失われた5億年」と呼ばれる壮大なロマンに心躍らされずにいられません。

参照元:How To Date A Planet