私たちのように汗をかくことで体温調整ができない動物は、一体どのように体温の上昇を防いでいるのでしょうか?
以下に、動物の驚くべき体温調整方法や暑さ対策について「コアラ」や「犬」を例にナタリー・ブリスコー博士の話をもとに紹介します。
汗が体温を下げる働き
ロボットでない限り、私たちの体は、気温が高かったり、運動をしたりすると身体が熱くなったように感じます。
他の多くの動物もそうです。そして、それぞれの動物は体温の上昇を防いで涼しさを保つための異なる機能を持っています。
私たち人間の機能でいうと「汗」。走り回った後、髪や顔は汗で濡れていますね。
汗は、乾く時にあなたの体から熱をうばい、熱くなった体温を下げてくれます。
これを「気化熱」といいます。
犬の暑さ対策とは?
犬は、足の裏のように、毛皮で覆われていない体の部分からしか汗をかくことができません。
そのため、犬は、鼻をなめたり、舌を出して呼吸を速くして体温の上昇を防いでいます。
落ち着いた状態では鼻からゆっくりと呼吸をしている犬も、体温が高くなると鼻をなめ、「ハァハァ」と短くて速い呼吸をたくさんするようになるのです。
鼻の水分が乾くとき、汗が乾くのと同じように水分が熱を奪っていくので、鼻は冷やされます。
さらに、暑くなると呼吸が激しくなり、舌の血液量も増えます。
犬は、身体の体温を下げるために舌をだらんと垂らして、息によって唾液を乾かして放熱させ、血液の温度を下げているのです。
一方で、暑さに対して大きな問題を抱えている動物がいます。
コアラです。
コアラにとって水分は貴重な資源
コアラが生育するオーストラリアは、夏は特に暑くて乾燥しやすい土地です。
しかし、コアラは汗腺がないので汗をかくことができません。
さらに、彼らは体をなめるのを好みません。
なぜなら、なめると彼らの体の貴重な水分をたくさん使ってしまうおそれがあるからです。
暑くて乾燥した地域では、水は手に入れるのが難しい貴重な資源なので、コアラは、木の幹から雨水をなめる他、必要な水分のほとんどをユーカリの葉から摂取しています。
では、貴重な水分を使わずに、身体の熱を冷ますためにコアラたちは一体どうしているのでしょうか?
コアラの暑さ対策:木を抱きしめて体温を調節
近年、科学者たちはコアラがどうやって体温の上昇を防ぎ、身体を涼しく保っているのかを発見しました。
コアラは、木を抱きしめます。
科学者らは、コアラが木の幹や枝に腕を巻きつけて多くの時間を費やすことに注目しました。
コアラはほとんどすべての時間を木で過ごすので、それはそれほど驚くべきことではないように思われるかもしれません。
しかし、サルのように木を生活の場としている動物は他にもたくさんいますが、彼らはいつも木を抱きしめる必要性を感じていません。
では、コアラはなぜ木を抱きしめるのでしょうか?
気温が高いときでさえ、木は通常、周囲の温度よりもはるかに涼しいからです。
基本的に、体温よりも低いものと接すると、そこから熱の移動が起きて体を冷やすことができます。
どうやら、コアラは自分の体をできるだけ冷たい木の幹に向けて広げることで、犬のように体をなめたり舌を出したりして水分を失うことなく、体を冷やしているようです。