ビッグ・ベンって何?

人に話したくなる話

ビッグ・ベン(Big Ben)は、正式には「エリザベス・タワー」と呼ばれ、イギリスのロンドンを象徴する最も有名で人気のあるランドマークのひとつです。

塔には4面に直径7.5mもの時計の文字盤があり、内部には5つの鐘がぶら下がっています。

実は、ビッグ・ベンについてほとんどの人が驚くことがあります。

それは、「ビッグ・ベン」が時計や塔そのものではなく、塔の中にある一番大きな鐘の愛称であること。

おそらく残りの4つの鐘が奏でる音楽が、日本の学校で流れるチャイムの音ウェストミンスターの鐘」であることも驚くでしょう。

現在も、地盤や地下工事などの影響によって、時計塔の傾きが進み、数千年後にはピサの斜塔くらいまで傾く可能性があるようです。

さて、今回は、そんな有名なビッグ・ベンのとても興味深いストーリーを紹介します。

ビッグ・ベンとは

ビッグ・ベンの物語は、1834年にウェストミンスター宮殿(英国国会議事堂)が火災で、そのほとんどを焼失したときに始まりました。

ウェストミンスター宮殿の火災

新しい国会議事堂が建設され、それに伴って北の端に時計塔も建設されたのです。

しかし、新しい建物の建設が1840年に始まったにもかかわらず、時計塔はそれから10年経っても完成しませんでした。

その理由のひとつは、王立天文学者が時計に一日の誤差を1秒以内という精度を要求したためで、当時は不可能とされていたから。

最終的に、デザインは1851年に完成し、時計は1854年に完成したわけですが、塔の準備が整ったのは1859年のことでした。

19世紀半ばのロンドンを代表する古典的なネオ・ゴシック様式で、世界最大で最も正確だとされる四面時計が設置されました。

ビッグ・ベンの始まり

ビッグベン

一番大きな鐘は、正式にはグレート・ベルと呼ばれますが、ほとんどの人は「ビッグ・ベン」と呼んでいます。

その名前の由来は誰にも定かではないようです。

建設設置の指揮を執ったベンジャミン・ホール卿に敬意を表して名付けられたのかもしれませんし、

ベンジャミン・ホール卿

この怪物のような巨大時計は、有名なボクシングのヘビー級チャンピオンであったベン・コーントにちなんで名付けられたのかもしれません。

ベン・コーント

ビッグベンの鐘

この大きな鐘は一時間ごと(小さな鐘は15分ごと)に鳴り響きます。

オリジナルの大鐘は1856年に鋳造されました。

重さは16トンもあり、16頭の馬に引かせたトロッコで運ばなければならないほど大きなものでした。

16頭の馬にひかれるビッグベン

そして、塔に設置されるのを待つ間、鐘はテストされました。

しかし、鐘を打つために使われたハンマーが原因で、修復不可能なほどの亀裂が入り、鐘は再鋳造されることになってしまったのです。

壊れたビッグベンの鐘

新しい鐘は1858年に鋳造され、重さは13.5トン。

高さは7フィート半(2.3メートル)、直径は9フィート(2.75メートル)に。

鐘を鳴らす試み

塔の準備が整うと、ビッグ・ベンを鐘楼まで運ぶには、200フィート(61メートル)を持ち上げなければならず、その作業には1日以上かかりました。

持ち上げるのも1日以上かかったビッグベン

ビッグ・ベンが初めてチャイムを鳴らしたのは、今から150年以上前の1859年のこと。

ビッグベンの試運転

しかし、残念なことに、鐘を打つためのハンマーが重すぎたため、ビッグ・ベンは、設置後わずか数ヶ月で割れてしまいます。

その後、ビッグ・ベンは3年間使用できませんでした。

亀裂の周囲から四角い金属が取り除かれ、ハンマーが無垢の金属に当たるように鐘がわずかに回転されました。

ビッグベンの四角い穴

鐘のこの損傷は今日まで残っており、ビッグ・ベンはロンドン市民に時の移り変わりを正確に告げ続けています。

ビッグ・ベンの特徴

ビッグ・ベンの他に、鐘楼には4つの小さな鐘が吊るされています。

この4つの小さな鐘はクォーター・ベルと呼ばれ、これらは15分ごとにメロディーの一部を奏で、毎正時には完全なメロディーを奏でています。

4つの時計の文字盤にはそれぞれ、イギリスを構成する国を表す紋章が描かれています。

イングランドの「バラ」、スコットランドの「アザミ」、ウェールズの「リーキ(西洋ねぎ)」、アイルランドの「シャムロック」です。

エリザベス・タワーの高さは315フィート(約96メートル)で、レンガ造りと鋳鉄製、厚いコンクリート基礎でできています。

4つの時計の文字盤はそれぞれ地上から180フィート(約55メートル)の高さにあり、横幅は23フィート(約7メートル)。

それぞれの時計の文字盤の鉄のフレームは312枚のガラスを支えています。

夜になると、それぞれの巨大な時計の文字盤は28個の電球で照らされますが、もともとはガス灯で照らされていたようです。

ビッグベンの灯り

当時は毎晩、誰かがそれぞれのランプに火をつけ、朝まで点灯していることを確認し続けなければなりませんでした。

時計はネジ巻き式

ビッグ・ベンの信頼性の高さは有名です。

時計の速度を決める振り子は2秒ごとに揺れ、振り子を速くしたり遅くしたりするには、小銭を足したり抜いたりされます。

振り子に1円玉を足したり抜いたりすると、1日に0.4秒ずつ速度が変わるようです。

驚くかもしれませんが、この巨大な時計は、電気で動いているのではありません。週に3回ネジを巻き上げられているのです(故障に備えて予備の電気モーターは装備)。

かつては手作業で巻かれていましたが、現在はほとんどが機械で巻かれています。

150年以上もの間、この塔は単に時計塔として、時には「セント・ステファンズ・タワー(St.Stephen’s Tower)」と呼ばれていました。

エリザベス・タワーと改名されたのは、女王エリザベス2世の60周年を祝うダイヤモンド・ジュビリーの2012年になってからのこと。

ビッグ・ベンは、1859年に鐘を鳴らし始めてから、時計が止まるといったトラブルはほとんどありませんでした。

しかし、1878年と1900年の大雪の時、1916年と1939年の戦争時に鐘は止まりました。1938年に画家が誤ってシャフト(針を動かす部位)にハシゴをたてたときは、午前8時47分があまりにも長いため、ロンドン市民は眉をひそめたようです。

参照元:Big Ben