魚は、群れをつくり、リーダーがいないにも関わらず、素晴らしい連携プレーで泳ぎます。
では、どうしてそれが可能なのでしょうか。
実は、魚は、それぞれがただシンプルなルール
- お互いに適度な距離を保つこと
- 泳ぎ続けること
に従い、自らを組織化しながら、自然に群れの秩序を生み出していくことができます。
実は、この現象は、自己組織化と呼ばれ、アリの巣作り・分業、雪の結晶などに見られる現象で、生命体だけでなく無機物にも広く起こっていることなのです。
以下に、群れで泳ぐ魚がどうやって調和しながら泳いでいるのかについてできるだけ分かりやすく紹介します。
群れで泳ぐ魚の特徴「自己組織化」
空の水槽に小さな魚を入れると、まず、その魚は新しい生育域を探検するために上下に泳ぎ始めます。
そこへ別の魚を追加すると、しばらくの間は単独で泳ぐかもしれませんが、ある時点で2匹の魚が出会って一緒に泳ぎ始めるでしょう。
さらに魚を追加し続けるとどうなると思いますか?
最初はしばらくの間、それぞれが単独で泳ぐかもしれませんが、その後、ある時点で、魚が集まり始め、整然と同じ方向に泳ぎ始めるのです。
このように、誰に教わるわけでもなく、自ら学習したり、追加したり、修正したりして秩序や構造が自然にできあがることを「自己組織化」といいます。
なぜ群れで泳ぐのか
魚たちは、不思議なほど決められたように動き、自らを組織化しながら、自然に群れの秩序を生み出していきます。
どうやらそれは魚のもつ生存本能と関係が深いようです。
たとえば、イワシやデバスズメダイなどは、群れで団結し、全体として動くことで、より強くなり、より身を守りやすくなります。
一匹では、捕食者にすぐに狙われてしまいますが、複数いることで狙いが定まりにくくなるのです。
また、群れで泳ぐことは、繁殖にも有利だと考えられています。
群れにはリーダーはいない
魚の群れにはリーダーはいません。誰もがリーダーなのです。
では、動きを統率するリーダーなしに、魚たちはどのように連携した泳ぎができるのでしょうか?
基本的に、魚たちは、シンプルなルールに従っているだけです。
まず、お互いに適度な距離を保つこと。近すぎても離れすぎてもいけません。水流や水圧を感じる器官や視覚の助けを借りて機敏に連携をとっています。
次に、泳ぎ続けることです。
このルールに従ってさえいれば、何度も訪れる捕食者から互いに衝突することもなく、逃げることを可能にします。
自然界でみられる自己組織化
実は、この自己組織化は、魚特有のものではありません。
たとえば、アリの群れも命令を出すリーダーなどいないにも関わらず、巣作りや分業をあっという間に秩序だてて行います。
これは、生物の体組織や社会的行動をはじめ、無生物や無機物にも数多く起こっており、実際に、いくつかの物理システムが自己組織化する魚ととてもよく似た動作をすることがあります。
自己組織化の例
たとえば、雪の結晶は、水の分子が自然と集まって放射状に結合し、美しい六角形を生み出します。
ミツバチの巣のハニカム構造、葉の先端にある未分化細胞が分化を繰り返して葉脈を形成するのもこの自己組織化の一例です。
私たちの思考や行動も、1つのニューロンだけでなく、何十億ものニューロンとその間にある何兆もの連結ニューロンの集団的な活動によって起こります。実際に、脳を個々のニューロンに分解しても全く役に立たないものになることはよく知られています。
脳でいう単純なルールとは、他のニューロンを興奮させたり、抑制したりすることです。
そして、いくつかの基本的な条件があえば、より多くのニューロンが複雑につながりますが、正しいルールに沿った習性を何度も繰り返すうちに混沌は調和に変わるのです。
DNA塩基も同様に鎖を形成し、自己組織化してペアになり、よく知られている二重らせん構造を自然に形成します。
このように、私たちの周りには、魚の群れと同じ「自己組織化」によって、あらゆる混沌の世界から秩序が生み出されているのです。
参照元:
・why do fish swim in schools? Exploring Self-Assembled Systems
・How do schools of fish swim in harmony?