人体の不思議

リンパの仕組みをわかりやすく解説

人体の不思議

実は、体内を循環する液体は、血液だけではないことを知っていますか?

解剖学において重要な、そして見落とされがちな「リンパ」と呼ばれる液体です。

たしかに怪我で血は見ることはできますが、リンパ液は無色透明に近く、通常リンパ管も見ることはないので存在を知らない人もいるかもしれません。

身近な例でいうと、やけどの水ぶくれの中にある液体がリンパ液(または浸出液)です。

しかし、心臓を中心とした循環器系のすぐそばではこの別の配管システム「リンパ系」が機能しており、それがなければ人は24 時間以内に死んでしまうでしょう。

さっそく以下に、リンパについてわかりやすく紹介します。

リンパ系について

血液は、体の隅々に栄養と酸素を供給します。

リンパ系は、体全体に広がるリンパ管、リンパ腺(リンパ節)、脾臓や胸腺などの器官の複雑なネットワークで構成されています。

ただし、その重要性を理解するには、たった3つの主な機能を調べるだけで済みます。

1. 余分な体液を血液循環に戻す

まず第一に、リンパ系は、余分な体液を血流に戻します。

驚くかもしれませんが、毛細血管は漏れやすく、血液は一定量の水分を失っています。

というのも、栄養素と酸素が毛細血管の小さな隙間(孔)から出て、それらを必要とする細胞に届けられているからです。

ただし、血圧により、血液の液体成分である血漿も毛細血管から漏れだし、毎日約20リットルの液体が毛細血管から漏れているといわれています。

そして、この液体には主に水、栄養素、ガス、イオン、タンパク質などが含まれています。

その量のうち、約17リットルは毛細血管の静脈端に再吸収されますが、3リットルは血管には再吸収されません。

そこでリンパ系の出番です。

リンパ管は毛細血管の周りを網目状に分布しており、余分な組織液を収集し、最終的には循環系に再堆積させます。

毛細リンパ管が合流して、より大きなリンパ管になり、胸腔内にあるリンパ本幹に到達すると、そこで余分な体液(現在はリンパ液と呼ばれています)を静脈に戻すことができるのです。

胸のあたりには、体内の主要なリンパ系主管の1つ、胸管(きょうかん)があります。

ではなぜ、過剰な体液は血流に戻る必要があるのでしょうか?

余分な体液が血流に戻る理由

まず、液体による細胞の膨張や損傷を防ぐためです。

次に、体液が循環系から出るのと同じ速度で循環系に戻らない場合、血液が濃くなり、循環系が酸素と栄養素をうまく運ぶのに影響を与える可能性があるためです。

最後に、体液には、体が除去する必要がある老廃物分子や毒素が含まれているからです。

リンパに集められた毒素や老廃物は、リンパ節でろ過されたのち、静脈から血液に戻ります。その後、血液によって全身に運ばれて、腎臓でろ過され、排泄物や汗として体外に排出されるのです。

リンパ液はどのように移動するのか

さて、リンパ液には血液でいう心臓のポンプ機能はありません。では、どのようにしてリンパ液は組織内を移動しているのでしょうか?

心臓ではなく、周囲の筋肉の収縮と弛緩によってリンパ液が押し出されて移動します。

体を動かすたびに、リンパ管の周りにある筋肉が収縮・弛緩し、その筋肉のポンプ作用によってリンパ管が圧迫されることで、リンパ液が押し出されて動きます。

これがあなたが運動すべき1つの理由です。

運動するとリンパ液が血液に戻る速度が速くなり 、最終的には血液循環が改善されます。

そして、血液循環が良くなると、体内のすべての細胞がより多くの必須酸素と栄養素を受け取ることができるのです。

2. 免疫系が侵入した細菌をつかまえるのを助ける

第二に、リンパ系は、免疫系が病原体を感知して免疫反応を起こすのを助けています。

細菌は細胞の間に静かに隠れ、リンパ管の大きな孔から体内に侵入し、病気を引き起こす可能性があります。

しかし、リンパ管には、リンパ節と呼ばれる免疫チェックポイントがあります。

リンパ節には、マクロファージ、樹状細胞、B細胞やT細胞、リンパ球などの免疫細胞があり、侵入者がいないかリンパ節をパトロールしているのです。

細菌に遭遇すると、これらの樹状細胞などの免疫細胞がその脅威を中和し、同時にリンパ内の他の毒素や異物も除去します。

脾臓や胸腺などのリンパ器官は、これらの免疫細胞が感染症と戦うことができる細胞に成熟する重要な部位です。

たとえば喉の感染症があると、細菌と白血球が喉のリンパ節に蓄積し、リンパ節が腫れます。

これらの腺が腫れると喉が詰まりやすく、飲み込むことが困難になったり、痛みを感じたりすることがあるのです。

感染症があるかどうかを判断するために、医師が喉のリンパ節の腫れをよく検査するのはこのためです。

3. 脂肪の吸収を助ける

最後に、リンパ系は消化された脂肪を吸収する役割も果たしています。

消化された脂肪は、水への溶解を助けるタンパク質と塩で覆われています。

ただし、これにより脂肪の塊が大きすぎて毛細血管に入ることができなくなっているのです。

代わりに、脂肪の塊は大きなリンパ管を通って入り、そこから、胸管の静脈に移されます。

結果的に、もしリンパ系がなければ血液は濃くなり、免疫力は低下してしまうでしょう。

そして、栄養ニーズを満たすことができなくなり、24時間以内に死亡する可能性が高いことは言うまでもありません。

良いニュースは、健康なリンパ系を維持するのはとても簡単だということです。

医師の指示に従い、ぜひ栄養のある睡眠をとり、定期的に運動し、栄養価の高い食事を摂ってください。

リンパ系の役割と仕組みについては、以下の動画で見ることができます。

Lymphatic System Explained In Simple Words