「骨折すると、その骨は強くなる」のは本当か?

2018年8月17日

「骨折すると、その骨は前より強くなる」といわれることがよくあります。

しかし、ニーチェの名言「(どんなにつらくとも)すべての経験は人を強くする」ではありませんが、一度折れた骨が、さらに丈夫になるなんて本当にあるのでしょうか?

実のところ、骨折した骨が、治癒後に、より強く丈夫になることを証明する研究はありません。

たしかに骨折が治癒する過程で、一時的ではありますが、骨が元の状態よりも太くなる時期はあります。

おそらく、その一時期だけをいえば、強くなったといえるかもしれませんが、治癒の後には元通りの太さになるどころか、元の骨よりも弱くなる可能性を示す研究もあります。

ここでは、骨折後に骨がどのようにして元通りに治るのかについて、骨の強度や骨密度の変化もあわせて分かりやすく紹介します。

骨折とは

骨折とは、なんらかの力が骨に加わって折れたり、骨の一部、または全体が壊れたりすることです。

骨折した骨を治すためには、まず、ずれたり壊れたりした骨を適切な場所に戻し、組織が再び修復するまでそこに固定しておかなければなりません。

それゆえに、骨の修復プロセスを円滑にすすめるために、治療の一環として、ギプスや添え木で骨がずれないように固定されることがよくあります。

骨折の治り方

骨折すると、骨の周囲にある血管が破れます。

するとすぐに、骨折によってできた骨の隙間に血液がたまり始め、それらが凝結し始めます。

この血の塊は「血腫(けっしゅ)」と呼ばれ、その中では、壊れたり死んだりした骨の細胞が溶かされて血液に吸収され、新しく骨を形成する細胞が生まれます。

骨の新生プロセス

健康な人の場合、骨は常に、新しく骨を作る「骨芽細胞(こつがさいぼう)」と古くなったり壊れたりした骨を酵素によって溶かして吸収する「破骨細胞(はこつさいぼう)」の働きによって、バランスが調整されています。

つまり、体の他の部位と同様に、骨も新陳代謝によって、新しく置き換わりながら常に骨量(こつりょう、骨に含まれるミネラル分、骨密度ともいう)が一定に保たれているのです。

骨折すると、このバランスが骨を新しく形成する方に偏り始めます。骨芽細胞が活性化してやわらかくて未熟な仮骨(かこつ)を形成し、骨折によって生じた隙間を埋めていき、骨の破片同士をできる限り動かないように固定するのです。

それから6週間から12週間かけて、このやわらかい仮骨は硬い組織に置き換えられていきます。

「骨折すると、その骨は強くなる」という誤解

この仮骨が硬化していく過程で、その部分が他の骨よりも盛り上がって太くなるため、実際にはただ一時的にサイズが大きくなっただけにも関わらず、骨自体が強くなったと勘違いされてしまったのかもしれません。

骨を新しく形成する過程でみられる仮骨は、繊維が網状になってランダムに絡み合っているため「線維性骨」とも呼ばれ、通常の骨の層よりも、単位面積当たりは弱くはなりますが、それだけ分厚い構造をしているため、部分的には強くなります。

つまり、「骨折すると骨が強くなる」という言葉は、この一時期のみでいえば本当だといえます。

しかし、その分厚い仮骨は、長くはそこにとどまらず、1ヶ月くらいかけて硬化していくにつれて、骨折していない他の骨と同じ太さや強さになっていきます。そうなると、どこを骨折したのかを確認するのさえ難しいかもしれません。

そして、物事は、必ずしもうまくはいかないもので、骨折後の治癒した骨は、元の骨よりも骨折しやすくなるとさえいわれています。

「骨折すると、その骨は弱くなる」可能性もある

骨のタイプによっては異なりますが、女性の骨を調査した2012年の研究によると、骨折すると、治った後に同じ骨を骨折する確率が6倍以上も増すと推定されました。

しかし、そのような統計は、必ずしも新しい骨が弱いことを意味するわけではありません。

たとえば、2回目の骨折箇所が全く同じ骨であるかどうかまでは、通常は正確に記録されていないのも一つの理由です。

また、たとえ同じ骨であるとしても、なかには特定の骨に過度な負担のかかるスポーツをしていたり、日が浅くて骨折がまだ完全に癒えていなかったりする可能性もあるため、新しい骨が弱いことの証明にはならないといえるでしょう。

骨は強くもなり、弱くもなる

基本的に、私たちの体は、骨が筋肉によって引っ張られたり、圧力をかけられたりすることがないと、骨の強度がそれほど必要ないと考えて、骨から血液を介してミネラルを奪い、他の部位のために使い始めます。

宇宙飛行士が、無重力状態で骨が弱くなったり、寝たきりの人の骨密度が減少するのはそのためです。

しかし、これを裏返して考えると、運動によって骨は強くもなります。

実際に、この骨の強化に関する科学的な考え方は、運動選手や宇宙飛行士などに日常的に取り入れられています。

たとえば、ジョギングのような体重負荷運動、ウエイトリフティングのような筋力トレーニングなどを行い、骨に十分なストレスを与えて、骨形成細胞を活性状態に保ち、カルシウムのような硬化性ミネラルをより多く蓄えることで、骨の密度や強度は増すといわれています。

まとめ

骨の形成には、外からのストレスが大きく影響するため、運動によって今より少しストレスをかけると、骨はより強く丈夫になります。

しかし、強すぎるストレスを与えて骨折したからといって、骨が前よりも強くなるわけではないので、決して骨を壊す必要まではありません。

また、食べ物から摂取するカルシウムが不足したり、生活習慣やホルモンバランスの乱れなどによっても、骨芽細胞と破骨細胞の働きにおけるバランスが崩れて、骨密度が減少してしまうこともあるので、骨の健康のためには、適度な運動と食事のバランスが大切なのです。