イグルー(かまくら)はどうして暖かいのか?

2017年1月16日

何千年もの間、ヒトや動物、植物は、空から降ってくる冷たい水「雪」を利用して暖をとってきました。

「冷たい雪で暖かく保つなんてどういうこと?」と頭をかしげる人もいるかもしれません。

しかし、雪は確かに寒さからあなたを守ることができ、それは、物理学的にも証明されています。

ここでは、イグルー(かまくら)の中がどうして暖かいのか?や雪(氷)の壁が簡単に溶けないのはなぜか?について、イグルーの仕組みをもとに分かりやすく紹介します。

寒さからの避難所としてのイグルー

広大な氷からなる北極圏は、地球上で最も寒さの厳しい環境の一つですが、イヌイットは約5,000年間そこに住み続けています。

氷上では、冬の気温はマイナス50度近くまで下がるため、人々は、寒さをから避難できる場所を見つけなければなりません。

そこには、森林はありません。イヌイットの人たちが利用できるのは雪だけです。

イヌイットが話すエスキモー語には、雪についての異なる言語が、何十も存在するって知っていますか?

それは、「イグルー」を作る時に選ぶ雪の種類によって、暖かさや断熱性が全く異なるため、イヌイットたちは雪についての見識がそれほど深いからです。

寒さとは何か?熱が伝わる仕組みについて

雪で作られているイグルーがどうして暖かいのか、その仕組みについて学ぶ前に、私たちはまず、「寒さとは何なのか?」について理解しておく必要があります。

ヒトは、体温が急激に低下し始めると、熱が体から逃げていくのを感じます。

それでは、熱を量として考えてみてください。熱が体から逃げていく量が多くなるほど、私たちはより一層寒さを感じます。

熱のやり取りは、「対流」、「伝導」、および「放射」の3つの異なる方法で起こります。そして、3つともイグルーで実際に起こっています。

イグルーが暖かい理由

イグルーの中では、体から逃げていった(放射された)熱によって空気が温められて対流(暖かい空気は上に、冷たい空気は下にという空気の流れによって熱が伝わること)が起こり、内部全体が暖められています。

そして、雪の壁によって、熱が外に伝わる(伝導)のを遮(さえぎ)り、外の寒さの影響を受けないようにしています。

これはまさにあなたの家で起こっていることで、リビングの断熱材も同じ役割をしてます。

雪は優秀な断熱材

クジラやアザラシのような動物は、たくさん蓄えられた脂肪によって、熱が体内から逃げる(伝導)のを遮っていますが、脂肪の少ない動物は、体を空気で包んで同様の効果を得ています。

例えば、ラッコの毛皮は、人間の毛の1,000倍も密度が高く、その断熱力の秘密は毛質にあるといわれています。やわらかくてツンツンとした毛は、空気の分子を閉じ込めるのに非常に適しています。

雪にも同じことがいえます。

ふわふわとしたできたばかりの新雪には、最大で95パーセントの空気が閉じ込められており、優れた断熱性があります。しかし、手で握ってかためられるほどの密度がないので、新雪では雪だるまやイグルーを作ることはできません。

一方で、密度が高い氷は、風よけに最適ですが、持ち運ぶには重すぎます(1000kg/m3)。

そこで、イヌイットは、粉雪と氷の中間のちょうどよい密度の雪を使って、断熱力の高いイグルーを作る方法を考え出しました。

イグルーに使われる伝統的な雪は、固めて成形するのではなく、地面で固まった雪から切り取られています。地面の固い雪は、氷ほど強固ではありませんが、氷よりも軽くて加工しやすく、空気も含まれています。

動植物も寒さから身を守るために雪を活用している

実は、動物は人間よりもずっと前に、雪による避難所を活用していました。

ホッキョクグマやウッドチャック、鳥類などは、雪に穴を掘ったり、雪で巣を作ったりして、寒さから身を守っています。

植物の中にも、凍結による死を防ぐために、雪で身を覆い隠す種類があります。

雪は、太陽の光によって土壌にたくわえられた熱エネルギーが逃げる(放射)のを防ぐ役割をします。この雪の毛布は、植物の根や種、芽の中で氷結晶が形成されるのを防いでくれます。

イグルーは、力学的に安定した理想的な形

動植物たちは、凍え死ぬことがないように知恵を使ってきましたが、ヒトの脳は、イグルーによってその一歩先を進み、暖かさと快適性を得ました。

よく漫画では、平底で半球のような形のイグルーが描かれていますが、実際には、イグルーを半分にスライスすると、「カテナリー曲線」と呼ばれるロープの両端を持って垂らしたときにできるたわみのような形になっています。

カテナリー曲線は、半球よりも雪の重みによる圧縮力を均等に分散するため、雪の重みによって、へこみや突起ができることなく、アーチの形状を維持する力があります。

このカテナリー曲線は、自然の中で最も安定したアーチの1つだといわれ、建築や橋梁にもたくさん取り入れられています。

イグルーの中はどうなっているのか?

イグルーの家は、内部の床の高さを変えることで温かさや快適性を維持しています。暖められた空気は上昇するため、食べたり寝たりする場所の床は高く作られ、冷たい空気は沈む性質を活かして入り口を低くして、そこから逃がしています。

また、そこに住む人の体温によって、イグルーの最も内側の壁の層が溶けると、再び凍った時に、空気の隙間のない壁なり、強度が増します。

時間の経過とともに、溶けたり凍ったりが繰り返されことによって、イグルー内の温度は、外の気温よりも40度から60度高くなります。そして、人数が多いほど、イグルーの内部は早く暖かくなります。