アリの習性から学ぶ「交通渋滞を防ぐ方法」

2020年8月22日

地球上には70億以上の人々がいて、6人に1台の割合で車が走っているため、交通渋滞は今やあらゆるところで見られます。

2015年のデータによると、アメリカのドライバーは、一年間で一人当たり約50時間、全体では100万年にも及ぶ時間を車の運転に浪費しました。

ロンドンの平均的なドライバーはもっと最悪です。年間4日以上を渋滞の中で過ごしています。

しかし、地球にはもう一つの偉大な通勤者がいます。

アリです。その人口は何兆にも及ぶとさえ考えられています。

ただし、アリは渋滞に巻き込まれることがありません。

密度が異常に高い状況でも、長い行列が詰まることなく、エサを巣穴に持ち帰るまでのスムーズな交通量を維持しつづけています。

一体アリと人間の違いは何なのでしょうか?

今回は、アリの行列が渋滞しない理由をもとに、私たちの交通渋滞を緩和するヒントを考えていきます。

幸いにも、国家予算を何兆円もかけて道路をつくるより効果的な解決策があります。

それは、私たち一人ひとりが、自分のことばかりではなく、周りの人のことを考えるだけ。それによって、通勤ラッシュが数十分は短縮できる可能性が期待できるといわれています。

アリには交通渋滞がない

軍隊アリの一日は私たちの日常と似ています。

朝起きると、隣人数千人と一緒に出発し、移動したら、家族のために家にきちんと戻る。

混雑、狭い道、のろまな運転者、 アリたちも私たちと同じ交通課題に直面しています。

しかし、彼らは渋滞には巻き込まれることはありません。

だからこそ今、科学者たちは彼らに、人間界での交通渋滞の解決策を求めています。

速度と交通密度が臨界点に達する(約40%)と移動速度が遅くなり、アクセルやブレーキの踏み間違いをしただけでも、渋滞は避けられなくなります。

しかし、アリの世界では、たとえ密度が高くても、組織力によって交通渋滞を回避できるようです。

アリによる渋滞の解決策「組織の力」

混雑しやすい道路の最も簡単な解決策は、道路を大きくすることです。

しかし、アリは道を好きなだけ広くすることができません。

道を広くすれば維持するのに時間とエネルギーがかかり、目印となるフェロモンも弱くなるからです。

その代わりに、アリは混雑を組織化します。

アリは、3車線を行きと帰りで使い分けている

目には見えないかもしれませんが、アリの通り道には車線があるのです。
食べ物を運んで巣に戻ってくるアリは中央の車線を使い、巣から出発したアリは、端の車線を通ります。

それでは、なぜ3車線なのでしょうか?2車線ではだめなのでしょうか?

行きと帰りの2匹のアリが同じ車線にいると、衝突を避けるために、最終的には1匹が道を譲らなければなりません。

そんなとき、荷を積んだアリはそれだけ動きが鈍くなってしまうため、ほとんどの場合、巣穴(反対方向)からやってくる手ぶらのアリが避けるという行動をとります。

その際、最初に出会ったアリが右側に避けると、次のアリは左側に避けるといったように交互に避けていくと、自然と3車線ができ、衝突も渋滞もない組織化された道ができるのです。

実は、人間も混雑した道を歩くときは組織化されているようです。

たとえば、混雑した横断歩道では、人間も軍隊アリと似たような行動を自然ととる姿が観察されています。

たとえば、花火大会の様子を思い浮かべてください。

誰が交通整理するわけでなくとも、自然と行きと帰りの人の列ができています。

しかし、車になると話は別で、なぜか渋滞を生み出してしまうのです。

渋滞に巻き込まれたときの人間の心的状況

私たちが渋滞を嫌うのには単純な理由があります。

並んで待つのが嫌いだからです。

行列に並ぶことは、私たちの脳の時間感覚に奇妙なトリックを仕掛けます。渋滞は、脳の時間感覚を変えるのです。

まず、占有されている時間(忙しい時間)は、占有されていない時間(ひまな時間)よりも短く感じること。

これが車の渋滞にはまると、ラジオを聞いたり、ゲームをしたりする理由です。

スーパーマーケットがレジの列に雑誌を並べるのも、これと同じ理由です。

大きな会議に遅刻しそうなとき、目の前に起きる全てのことが、あなたの邪魔をしているように感じたことはありませんか?

不安は待ち時間を長く感じさせます。

原因不明の渋滞に巻き込まれたら、それこそ最悪です。

不明な待ち時間や原因不明の待ち時間は、理由を知っている時の待ち時間や説明された待ち時間よりも長くなります。

研究がすすむにつれて、交通技術者たちは、シンプルな情報表示が遅延に対する私たちの考えや行動を変えられることを学んできました。

しかし、何よりも私たちは不公平な待ち時間が嫌いです。

スムーズな交互流入を邪魔する人間心理

たとえば、前方で車線閉鎖のサインが出ていると、時間に余裕を持って早めに車線変更をする人がほとんどでしょう。

それにもかかわらず、なかには、渋滞を横目にギリギリまで何台も追い越して、車線が閉鎖するギリギリのところで車線変更する車もあります。

今までに、不公平な気持ちで何台も抜かした車に腹を立てた経験があるかもしれません。

しかし、ちょっとした秘密を紹介します。

交通研究者が発見したのは、後者のように、合流を遅らせた方が実際には全体の交通量がスムーズに流れることです。

みんながズボンの端に向かって ジッパーのように一台ずつ交互に行けば 交通速度は、最大で15%も高速化します。

両方のレーン(閉鎖車線、走行車線)を、二列(最大容量)で使用することができるうえ、誰も不公平な気持ちになることもなく一石二鳥なのです。

渋滞時に感じる不公平な感覚は勘違いだった

そもそも、「何が公平か」という人間が持って生まれた感覚は、最大の心理的錯覚につながることがよくあります。

車を運転していると、なぜいつも隣の車線の方が速いのかとイライラした経験はありませんか?

実は、それはあなたの勘違いだったのです。

通常の進んでは停止を繰り返す渋滞に二車線で車が並んでいるとしましょう。

隣の青い車があなたの車を追い越した時と追い越された時の時間を数えた場合、実はある地点までかかる時間はほぼ同じ。

時間的な大差はないのに、それぞれのドライバーは、追い抜くよりも追い越される時間の方が長く感じる傾向があります。

なぜなら、私たちの脳は利益よりも損失に注意を払うからです。

これらすべての自己中心的な「エゴ」に過ぎない考えが、実際の交通渋滞を生む原因となります。

交通渋滞は、ドライバーが、移動時間を最短にすることを気にし過ぎて、他のドライバーが何を望んでいるかに対する配慮がないが故に引き起こされることがよくあります。

たとえば、「急いでる人間もいるんだから、もっとスピードを出せよ」とクラクションを鳴らしたり、逆に「制限速度以下でも速度を守ってることには変わりない」と遅いスピードで道路を塞いだり。

アリは、集団のために個人が行動をコントロールしている

ハキリアリは、積み荷でなかなか速く進めないアリがいたら、どうすると思いますか?

「後ろが詰まってるんだから」とつっついてせかしたり、悪口を言ったりすると思いますか?

いいえ。

彼らは単に減速し、積み荷を持って帰るアリの後ろで行進するだけです。研究では、混雑しそうな道を通らず、別のルートを探すアリの行動も見られています。

アルゼンチンアリの研究では、密度が80%に達した状況下でも、アリ同士が行動をコントロールして、交通量を低下させないことが示されています。

人間の場合は、交通密度に応じて衝突も増加し続けますが、アリの場合は、ある地点から衝突頻度が超えることはなく、スムーズな流れが保たれます。

彼らは、それがアリの組織全体の食料確保のためにベストな方法だと知っているのです。

結論:アリから学ぶ渋滞の解消策

働きアリはすべて、コロニー全体の利益という同じ目的を共有し、みながつながりをもって行動しています

それが、彼らの素晴らしい交通システムの根底にある協調的な遺伝的プログラミングです。

つまり、私たち人間が、アリよりも大きくて複雑な脳を持っているという事実は、渋滞に巻き込まれる理由そのものだったのです。

常に、個人の利益が、集団の利益よりも優先順位が高いため、自分たちが問題であることを認めるのではなく、交通渋滞を自分たちの身に起こった悲劇だと考えてしまうのです。

アリは、基本的にシンプルなプログラミングをした小さな機械です。

いくつかのルールを持ち、お互いに個人が通信してつながりをもちながら、複雑な交通ネットワークが、最大効率で動作するようにしています。

つまり、基本的には、自分のエゴに振り回されるのをやめて、一人ひとりが集団的な利益のために行動するのが、交通渋滞を緩和する近道となるのです。