ここでは、世界からサンゴ礁がなくなると何が起き、私たちの生活はどのような影響を受けるのかについて分かりやすく紹介します。
恐ろしいことに、このままサンゴ礁の白化現象に対して何もしないでいると、サンゴ礁は、もう何十年ももたないと予想されています。
サンゴ礁が絶滅すると、まず海の生態系は崩れ、数十億の生物が被害を被るでしょう。
観光資源や漁業(労働)、食料源、医療の分野で多大な影響を受けるといわれています。
私たちは、すでにここ30年間で地球のサンゴ礁の50%を失っているのです。
サンゴとは
サンゴは、海を色とりどりに彩る海洋生物です。
自分の力では移動できないので、植物だと思われるかもしれませんが、実のところ、クラゲやイソギンチャクと同じ動物(刺胞動物)。
幻想的な産卵シーンは有名ですが、分裂によって増える種などサンゴにはさまざまな種類があり、サンゴが集まって隆起した地形をサンゴ礁と呼びます。
サンゴは、生きていくために、細胞内に褐虫藻(藻類)を共生させ、褐虫藻の光合成による有機物を主な栄養源として生活しています。
近年よく耳にする「サンゴの白化」とは、サンゴが、なんらかの外的なストレスによって損傷した褐虫藻を放出したことで、石灰質の骨格がむき出しになって白くみえている状態です。
白化状態の期間が長くなると、サンゴは栄養源を失い、繁殖や酸素を作りだすこともできず、必然的に死んでしまいます。
そしてもし、海からサンゴ礁がなくなると、私たちの生活に下記のような多大な影響を及ぼしていきます。
サンゴ礁の影響
サンゴ礁は、面積でいえば、海底の1%にも満たないものですが、それが地球上の4分の1に相当する海洋生物に不可欠な生態システムのを提供しています。
おそらく、サンゴ礁がなければ、数十億の生物が被害を被るでしょう。
そして、何百万人もの人々が重要な食糧源を失い、経済は大きな打撃を受けるといわれています。
食料や仕事だけではありません。多様な生物の宝庫であるサンゴ礁は、病気の治療や新薬の開発源としても期待されているのです。
病気の治療や新薬の開発源としてのサンゴ
これからは推定で、サンゴ礁の生態系による新薬の開発が、陸上のものよりも300倍から400倍多くなるだろうことが予想されています。
たとえば、熱帯のサンゴ礁などに生育するウミウシの成分は、医薬品の化合物として注目を集めています。
しかし、それらは次世紀まで彼らが生き残った場合の話で、サンゴ礁の生態系が崩壊した場合、医療の未来にも影響を及ぼすでしょう。
このような画期的な医薬品に加えて、5億人を超える人々が、これらのサンゴ礁に食糧や労働を依存しています。
食料源
食料でいえば、世界のたんぱく源の約5分の1は魚介類に由来するもので、私たちは、年間で平均約22.6キログラムを消費しています。
繰り返しますが、それらの海洋生物に不可欠な生態システムを提供しているのがサンゴ礁です。
米国だけでも、漁業は50万人の雇用を支えており、それは肉や畜産業のほぼ4分の1を占めています。
観光資源
サンゴ礁は、世界中の100以上の国や地域に観光客を呼び込んでいます。
これらの観光客は、ダイビングやシュノーケルをはじめ、海の神秘的な世界を体験するために、何千億円も費やしています。
そのため、経済学者は、サンゴ礁がもたらす魅力がなければ、沿岸地域の観光財源が9%以上、約3、6兆円相当も減少するだとうと予測しているのです。
海岸線を守る役割
サンゴ礁はまた、自然の防波堤として活躍し、海岸線を侵食から保護する役割もあります。
それは、外洋からの高い波や強い波の97%を打ち消し、2億人以上の生活を保護しています。
仮にサンゴ礁がなくなった場合、同じような防波堤を建てるのに1マイル(1.6km)あたり250万ドルはかかるでしょう。
最後に
サンゴ礁の白化には、さまざまな要因がかかわっていますが、その最たるものが環境悪化による影響です。
2005年にアメリカのカリブ海岸で起きた「サンゴ礁の半数以上におよぶ大規模な白化現象」などは記憶に新しいかもしれません。
白化現象によって、サンゴ礁が酸素を作れなくなる可能性もあります。
このまま何も対策をしなければ、地球上からサンゴが消滅する日は数十年以内に確実に訪れるといわれているのです。