なぜ振ってもないのに、ビール瓶を叩くだけで泡が噴き出るのか

2018年8月 2日

流体力学の博士号をもつロドリゲス氏(Havier Rodriguez)が、ある晩、仕事帰りに同僚たちとバーで飲んでいると、おもしろい疑問が湧き起こりました。

それは、同僚たちがお互いに、瓶ビールの底で相手の瓶の飲み口を上からコツンと当てながら、乾杯して飲んでいるときに起こったことです。

なんと、上から瓶をぶつけて乾杯すると、当てた瞬間に、ビールの泡が噴き出してくるのです。それがあまりにもおもしろいので、同僚たちは繰り返しその方法で飲み始めました。

もちろん、フタを開ける前に瓶をうっかり落としたわけでも、振ったわけでもありません。

「たった一度の衝撃だけで、なぜこのようなクリーミーな泡の火山が生じるのか」

流体力学の研究グループとして働く彼らにとって、議論が始まるのは自然なことだったのかもしれません。さっそく研究所でそのナゾについて調べてみることになりました。

ここでは、瓶を振ったわけでもないのに、ビール瓶の口元を上から叩くだけでビールの泡が噴き出すおもしろい仕組みについて、科学的にわかりやすく紹介します。

ビール瓶を上から叩くと泡が噴き出る理由

スペインのマドリードにあるカルロス3世大学の研究室で、ロドリゲス氏らは、高速カメラを用意し、瓶を叩いた後に、ビールの泡が一瞬にして噴き出す現象が起こるときの振動の波を間近で撮影しました。

衝撃後のビール瓶内の変化

まず、ビール瓶の口への衝撃による振動の波が、瓶内を伝わっての液体内の小さな気泡にあたると、気泡が振動して崩壊し始めます。これらはわずか1000分の2秒もかからないうちに引き起こされます。

この振動の波は圧縮波(周囲の気圧や温度を上昇させる波)と呼ばれ、瓶内を伝わって底までいきます。

底に届いた波は、跳ね返って、今度は膨張波(周囲の気圧や温度を低下させる波)に変わり、液体を伝わって口元まで戻ります。

このような波は、瓶内で行ったり来たりを数回繰り返して、液体内の気圧や温度を急激に変化させるため(キャビテーション)、気泡をどんどん壊していき、より一層小さな気泡のかけらを大量に形成します。

ちなみに、もともとビールには小さな気泡(炭酸ガス)がありますが、それは、大麦の糖分をアルコールに変える(発酵)過程で酵母から発生した二酸化炭素です。

瓶から飛び出す大量の泡の正体とは

この大量のガスが発生する現象は、分かりやすく言いかえると「爆発」のようなものです。

つまり、ビール瓶から飛び出すクリーミーな泡の爆発(気泡雲)の正体は、突然放出された膨大な量のガスが、瓶から逃げ出そうとしたものだったのです。

もともとあった気泡よりもはるかに小さな気泡たちは、ほんの1000分の1秒や100分の1秒の間に10倍にまで超高速で増殖します。気泡がビールに溶け込んだ二酸化炭素を取り込んで成長するにつれて、より浮力が増すため、それらは表面に向けて急激に上昇していくのです。

浮上するスピードが速いほど爆発は大きくなり、結果として、気泡がきのこ雲のように見えます。

これらは、本当の爆発のように途中でとめることはできず、最終的に液体のほとんどが気泡になってしまう可能性があります。

最後に

クリーミーな泡の爆発を作るには、ビール瓶の口元を垂直に上から叩くのがポイントで、横や下から叩いてもうまくはできません。そのため、下からの衝撃を受ける叩いた側の自分のビールには、何も起こらないのです。

一方で、相手(叩かれた側)のビール瓶は、気泡が瓶の全容積を占めるまで成長し続けてしまうため、止めどなく溢れ出る泡を飲むか、シンクにかけこむかしなければならなくなってしまうでしょう。私なら、きっと飲む方を選びますが。

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その他の参照元:
Why does a beer bottle foam up after a sudden impact on its mouth?