枕元の水を目が覚めた時に飲むとなぜ「まずい」と感じるのか?

2020年3月 3日

今までに、「のどの渇きに備えて用意した枕元の水を、夜中に目が覚めたときに飲むとまずく感じた」という奇妙な経験をしたことはありませんか?

ほんの数時間前までは冷たくておいしかったはずの水が、なぜ、少しカビ臭いなまぬるい水になってしまったのでしょうか。

実は、水の味が変わったように感じるのは、全て科学的な要因が関わっています。

ここでは、夜に枕元に置いた水が、ほんの数時間で口当たりが悪くなり、おいしいとはいえなくなる理由について、科学的な要因をもとに分かりやすく紹介していきます。

どうやら水の味に影響を与えていたのは、細菌よりも他にあるようです。

数時間で水の味を変える要因はひとつではない

そもそも科学的に安定した無機質であるはずの水が腐るなんて考えられないことです。

しかし、一般的な飲料水は、純粋な水(H2O)分子そのものの集まりではありません。

他にも多くのイオンや分子が含まれており、それらが時間とともに変化し、水の味に影響を与える可能性があります。

それでは、まず二酸化炭素の話から始めましょう。

二酸化炭素が溶け込む

身近なところで二酸化炭素は、吐く息や炭酸飲料などに含まれています。最近では、大気中の二酸化炭素濃度の上昇による海の酸性化問題も話題となっていますね。

さて、あなたのコップもまた、ある意味、小さな海のようなものだと考えてみてください。

水は、1つの酸素原子に2つの水素原子が結びついた粒子で、ものを溶かすという意味で、とてもすぐれた「溶媒」です。

それは、分子の+(プラス)、-(マイナス)を問わず(双極性)、大気と(時間によって変化しない)平衡に達している状態のガスを含む地球上のさまざまななものを溶かし込んでしまいます。

そのため、水の入ったコップ部屋に置くと、空気中から二酸化炭素が徐々に吸収されていきます。

その後、水分子と二酸化炭素分子は互いに反応して炭酸(H2CO3)を形成し、水のpHを低下させてわずかに酸性にします。

このようにして水に入り込むガスは、pHを低下させて味の違いを引き起こす可能性がありますが、一方で水から出るガスも味に影響を及ぼします。

水道水の塩素が抜ける

水道水には、1リットルあたり0.1mg以上の塩素が含まれています。

塩素は、水に含まれやすい細菌やウイルス、藻類への殺菌作用に優れた物質です。スイミングプールが塩素処理されているのもそのためです。

しかし、コップの水を放置したままにしておくと、塩素は気体となって空気中に消えて(気化)しまうため、水の味が変わってしまうのです。

塩素処理が少ない地域ではほとんど味の違いに気づかないという人もいるようですが、多くの人が、塩素が気化して抜けたことによる味の変化を感じるといわれています。

そして、これらの味を変化させている科学的要因よりもさらに大きな問題が「温度」です。

水の温度が高くなる

私たちは、温度によって水の味の感じ方が異なります。

基本的に、低温では水の味はあまり分かりません。

しかし、ぬるくなった水では、温度が高くなったことで分子の動きが活発になるため、味蕾(みらい)で検出できる風味や嗅覚受容体への刺激(匂い)が増幅します。

それによって、水が冷たいときには気付かなかった微妙な風味まで感じとれるようになるのです。

「温かいビール」と「冷たいビール」で考えると分かりやすいかもしれません。ビールを冷蔵庫の外に長く置いておくほど、その酸味や香りが増幅されます。

よって、冷たい水は冷やして飲むべきで、上質のワインは室温で味わうことをおすすめします。

最後に

幸いにも、一晩置いておいたコップの水は、おいしいとはいえませんが、飲んだからといって体を害することはほとんどないようです。

もちろん、不衛生なコップを使用したり、他人と共有したり、数週間も水を放置したままだったりすると、空中の浮遊微生物や病原体にさらされるリスクが高まるので注意が必要です。

また、暖かい場所や日当たりの良い場所で水を保管したり、適切に洗浄、および、密閉されていない容器に水を保管したりする場合も水の腐敗がすすみやすいので注意してください。

これについてジョンズ・ホプキンズ大学水研究所所長のケロッグ・シュワブ博士は次のように言います。

「水(H2O)を一口飲むとすぐに、唇や口から微生物が水に侵入するので保存はできません。それに、周囲の温度と窓から差し込む日光が組み合わさると、微生物が急速に増殖し始める要因にもなります。

しかし、衛生的なコップときれいな水道水であれば、1日、2日置いたからといっては問題はなく、それは公衆衛生上の懸念のリストのトップからは程遠いものです」

もし備蓄用に水道水を保存する場合は、塩素の気化を進めないようにできるだけ水温を低く保って直射日光を避けること、そして、微生物の影響を抑えるためにも水を空気に触れさせないように気を付けてください(ポリタンクやペットボトルなど清潔でふたのできる容器を使用する場合は、口元までいっぱいに入れてきっちりフタをする)。

やむおえず長期間保存する場合は、冷蔵庫の中で10日を目安に入れ替えるようにするとよいでしょう。

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