さて、地球の表面の70%を占める海が透明になった世界を想像してみてください。
人類が海についてわかっているのはわずか5%ほどしかありません。
それは、海のプランクトンや浮遊砂などさまざまなものが海を濁らせて視界を遮っているためです。
特に植物プランクトンは、海を青や緑色にしている大きな要因のひとつ。
透明な海は、そのままこの植物プランクトン不足を意味し、これは海中のあらゆる生物の食料資源の不足につながります。
光合成を行うプランクトンが減ると、水中の酸素が減り、海の生物は大変なことになります。
その他にも海が透明になると、以下のような大混乱が引き起こされてしまうでしょう。
魚たちは捕食者に狙われやすくなる
海が透明になると、そのほとんど解明されていない海にどんな生き物がいるのかが見えてきます。
世界で最も深いといわれるマリアナ海溝の底では、何千もの新種の生物に出会えるはずです。
海の生き物たちは、それこそ捕食者から身を隠すのが難しくなり、海の生態系はどこもかしこも大混乱に陥るでしょう。
海底に隠された難破船の宝物が姿を現すかもしれない一方で、私たちは、これまで海に捨ててきたゴミの多さを思い知らされることになります。
海の温度が上昇する
太陽光の届く海洋層「有光層」では、植物プランクトンによる光合成が行われ、そのおかげで海の生き物は酸素をもらい、成長することができています。
もし海が透明になれば、海のあらゆるところに太陽の光がふりそそぐことになります。
これは、光合成を行う植物にとっては良いニュースのようにみえますが、実際には悪いニュースです。
太陽の光や熱エネルギーが海底まで届ようになると、海水は温められます。海底の堆積物がこれまで以上に熱を吸収するようになるからです。
海洋生物の多くは、この温度上昇に適応できないでしょう。
潜水艦のメリットが失われる
潜水艦の最大のメリットの一つが失われることになります。
誰でも潜水艦を発見することができるようになってしまうのです。
潜水艦は、海の忍者のようにステルス(ソナーで音波探知されにくくする技術)に頼る時代は終わり、スピードと守りを重視するようになるでしょう。
生物は適応が難しくなる
最後に、暗闇の中で進化してきた海洋生物は、それを受け入れることが難しくなるかもしれません。
透明度の高い海は、美しく、とても素晴らしいものに見えるかもしれませんが、以上のことを考えると、私たちは、今の濁った海洋に感謝すべきなのかもしれません。