マクドナルドでついお金を使ってしまうのはなぜ?したたかな企業戦略とは

マクドナルドではついお金を使ってしまうのはなぜ?人に話したくなる話

あなたは、誘惑を撃退できるのか?

ファーストフード店は、「お得」認識を消費者に作り出す集客のプロ。

複数のサイズオプションと安価なアップグレードの組み合わせ、メニューの配置など巧妙なテクニックによって、実際には割りに合わないにも関わらず、消費者が来店し続け、より多くのお金を使うように仕向けることに成功しているのです。

今回は、「なぜファーストフード店に行ってしまうのか」について、私たちの行動心理を巧みに利用した企業の見事な戦略をもとに紹介します。

もしあなたが、

「一か月に一度はなぜかハンバーガーセットを食べたくなる」
「クーポンをもらったから、今日の昼はファーストフードにしよう」
「ハンバーガー単品より、セットが絶対お得」

とハンバーガーセットを注文した経験があるなら、彼らの戦略にはまってしまった中の一人かもしれません。

もちろんあなただけではありません。

ファストフードといえば、安くて手軽な食事はずなのに、どうやら多く人が、予想以上にお金と時間を費やしてしまっているのが現実なようです。

どうやらハンバーガーセットへの誘惑と闘い、賢く活用するには、まずは目には見えない企業の戦略の秘密を知る必要がありそうです。

ファーストフードでは予想以上にお金と時間を使う傾向が高い

残念ながら、冷静になって考えると、ファーストフード店のハンバーガーセットが必ずしもお得とはいえないことが分かります。

たとえば、マクドナルドの人気商品といえば、ハンバーガー、フライドポテト、ドリンクですが、
ニューヨークでこれらを注文すると、お会計は約11ドル。

これは日本円では千円を超え、ランチの相場で考えても決して安いとはいえません。

ある研究によると、アメリカ人は毎年10万円以上(約1,200ドル)をファーストフードに費やしています。

なぜなら、ファーストフード店は、あの手この手を使って、あなたにもっとお金を使わせることに全ての頭脳と力を結集しているからです。

ファーストフードのメニューの裏には秘密が隠されている

ファーストフードのメニューの秘密

もしあなたが、ファーストフードにお得感を求めるなら、結果的に期待は裏切られてしまうかもしれません。

ご存知のようにファーストフードは、「クーポン」や「コンボ(組み合わせ)」をはじめ、私たちをウキウキさせるお得で魅力的な情報で溢れています。

そして、これこそが、ファーストフード店のお金を使わせる戦略の一部。

お店は、この一見するとシンプルなメニューの裏に、さまざまなオプションを隠しています。

それでは、ファストフードのメニューと高級レストランのメニューを比較してみましょう。

レストランのメニューはシンプルであまり刺激的ではありません。

一方で、ファーストフードのメニューは、オプションとカテゴリでごちゃごちゃ。赤やオレンジ色の枠で囲まれた文字は、食欲をそそる大きな写真とともにあなたの心をわしづかみにします

ポイントは階層

ファーストフードでは予想以上にお金と時間を使う傾向が高い

ファーストフード店は、ボリュームのある写真や、文字のサイズで視覚的階層をつくり、私たちをうまくコントロールしています。

「写真は大きく、価格は小さく」、さらに、ジューシーでボリューム満点のハンバーガーセットを、メニューで最初に目を向ける左側の列に並べることで、あなたの目を釘付けにしてしまいます。

そのとき、そのハンバーガーに500円の価値があるかどうか疑問に思う人はほとんどいません。

客はただ、食欲を駆り立てる大きな写真を見ているだけなのです。

それについて、PBIの消費者向けビジネスの責任者で、ニューヨーク大学の経営大学院(レナード・N・スターン・スクール)の教授でもあるハンス・タパリア(Hans Taparia)氏は次のようにいいます。
食べ物の写真は 脳を刺激して活性化させます。

特に空腹時は、食品会社の大きな食べ物の写真がカギとなるのです。

ファーストフード店は他にも仕掛けを使っています。

料金表示の仕掛け

料金を見てみましょう。

ファーストフード店では、1000円ではなく980円、900円の手前の890円というように、位を上げない価格設定が目立ちますね。

それは、消費者に、ほぼ1000円であるにも関わらず、端数を切り捨てて900円のような錯覚を起こされる効果があります。

セットメニューの秘密

セットのメリット

もし、あなたが、セットメニューではなく、単品で商品を複数購入する場合、それは、店が期待するような利益には貢献していないかもしれません。

しかし、ファーストフード店は、利益の大きなセットメニューを購入してもらうために、さまざまな方法でアプローチしてくるのです。

たとえば、マクドナルドに入ると列ができているとします。

さて、「何を食べようかな」と後列からメニューを見ると、まず目に入るのはやはり左側に配置された大きな写真とそのセットメニュー

その右側にある単品メニューは、基本的に字が小さくごちゃごちゃして見えにくいため、あなたはだんだんと選ぶのが面倒くさくなってしまうでしょう。

自分の番が近づくにつれて、探しているメニューを正確に見つけやすくはなりますが、今度は時間によるプレッシャーがかかってきます。

後列の視線も気になるし、速く選ばなければならないとなると、大きくて目立つセットメニュー「3番」でいいやと手軽なところで手を打ってしまうのです。

さらに、この3番のセットメニューに、本当の秘密が隠されています。

注文するときの便利さ

ファーストフード店が売りたいのは、やはりセットメニュー。メニューの主役はセットメニュー(コンボ)なのです。

セットメニューであれば、あなたは、3番と番号を一つ言うだけで、ナゲットの数やポテト、ドリンクのサイズも言う必要がなく、注文に時間がかかりません

しかし、実際にセットメニューにすることで、どれだけのお金が節約できるか計算したことはありますか?

たとえば、ニューヨークでマクドナルドに入ったときを例に考えてみましょう。

3番を買うと10.39ドルでした。

もし、同程度のメニューを単品で買う場合、10.48ドルとなり、なんと9セント(約10円)程度しか節約できていないのです。

それどころか結果的に、健康的な食事よりも、値段が高くなってしまうケースもよあります。

このように、実際には割りに合わないにも関わらず、ファーストフード店は、消費者が来店し続けるように仕向けることに成功しています。

セットでお得感を生ませる

お店は、重量あたりのコストが低いことを主張して、さもお得であるという認識を消費者に作り出すことに成功している傾向があります。

これは実際に、かなり現実的なもので、複数のサイズオプションと安価なアップグレードの組み合わせによって、全てのカテゴリーで消費者の選択肢からスモールサイズを除外するように仕向けているのです。

このように私たちが求めていた以上の物(ハンバーガーよりも利益率の高い飲み物系など)をつい買わせてしまうのが、ファーストフード店が儲かる仕組みです。

単品ではなく、複数の商品を購入するお客様からの利益率の方が高いため、セットを購入してもらうために、全力で取り組むのです。

加えて、近年では24時間営業の店を出店したファーストフード店もあります。

これによって、欲しい時はいつでも、欲しい物を手に入れることができるようにもなりました。

マクドナルドのCEO スティーブ・イースターブルック氏は次のように言います。

ファストフード会社は、顧客をドアの中に引き入れる専門家です。

ファーストフードは集客のプロ

彼らは、目玉となるような法外な取引を宣伝するCMやポスターで、あなたを店の中に誘導することができます。

「ナゲットを買うと1個無料」と言われたら、おそらくお酒や飲み物も買ってしまうでしょう。

多くの人が、フライドポテトも追加して余分なお金を払います。

企業はブランドタイアップも利用し、さらには、1週間以内に有効期限が切れるクーポンを紹介します。
スーパーの領収書の下のクーポン、または、アプリのポイントはもちろん、アプリ内でしか見つけられない毎日のお得な情報を届けます。

結果的に、ファーストフード店を利用すればするほどお得に食事ができると感じた消費者は、貪欲にお得感を求めるようになっていくのです。

どのようなものでも、それ単体では大きなインパクトはありませんが、積み重なったときに、マーケティングの力が発揮されます

しかし、ファーストフード店の根底には、目をそらせないもっと深い社会的問題が隠されています。

ファーストフードの社会的問題

ファストフードは昔ほど安くはなく、時にはレストランで食べた方が安い場合もあります。

ブルームバーグによると、ハンバーガーの平均価格は過去10年間で54%も増加しています。

しかし、ファーストフードが、オーガニック市場ではターゲットにしない低所得者層の唯一の選択肢となってしまうケースが少なくはないようです。

残念ながら、そういった消費者の健康と体重に大きな影響を与えています。

特に家族を養っている場合、オーガニックサラダチェーン店よりも1ドルあたりにおける食事量が多いファーストフード店を利用するケースが増加する傾向があるようです。

なぜなら健康的なオプションよりも手頃な価格で胃を満たせるからです。

私たちは、決して健康とはいえない食べ物に多くのお金を費やす前に、ここで紹介したすべての心理的なトリックをまずは知り、さまざまな罠や誘惑と闘う必要がありそうです。

参照元:Sneaky Ways Fast Food Restaurants Get You To Spend Money