カミソリの刃は、なぜすぐに切れ味が悪くなるのか?

2020年12月10日

カミソリの刃の切れ味は、使い始めてから数週間もすると悪くなってしまいます。

切れ味が悪いと肌を傷めたり、剃り残しがでて時間がかかったりするうえ、買い替えのスパンが短いと余計な出費にもなります。もちろん環境にもよくありません。

そこで、科学者たちが、数週間でダメになってしまう刃を何か月も長持ちさせる天才的なトリックはないものかと研究した結果、おもしろいことを発見しました。

ここでは、カミソリの切れ味がなぜすぐにダメになってしまうのかについて研究をもとに分かったことを紹介します。

カミソリの刃は、最も硬い合金が使われている


カミソリの刃は、鉄に炭素を混ぜて強度を上げた合金です。

刃は始め、細くて柔軟性のある鉄ですが、加熱と冷却が繰り返されるうちに、硬く丈夫になっていきます。

そして、精密な温度管理やどれだけすばやく冷却されたかによって、鉄の結晶中に侵入する炭素の割合が異なる固溶体が生まれます。

カミソリに使われる刃の材料は、マルテンサイトといわれ、鉄鋼の中で最も硬く脆い合金鋼の組織が使われているのです。

それでは、硬いマルテンサイト鋼を使っているにもかかわらず、カミソリの刃がすぐにダメになってしまう理由について詳しくみていきましょう。

カミソリの刃は硬くて丈夫、でも欠けやすい


2020年の科学誌「Science」で発表された研究で、カミソリの刃のもちが悪いのはなぜかについて調査が行われました。

まず、マサチューセッツ工科大学の研究者が、カミソリで少しずつヒゲを剃り、走査電子顕微鏡でカミソリの刃に電子ビームを当てて、表面を細部まで観察しました。

すると、カミソリの刃は、ヒゲを剃る前でさえ、刃先が欠けたようにギザギザにひび割れており、使い続けるうちに、その刃先の不均一な組織のギザギザはひどくなっていきました

これにはカミソリの性質が関係しており、刃を作るときに切れ味や硬さにこだわると、研磨の工程で、どうしてもこのギザギザが生じてしまうのです。


刃のなかには、使い始めてすぐに表面にC字のような欠けがみられることもありました。

これについては、とても興味深いことが分かりました。

なんと、金属のなかで最も硬いはずのマルテンサイト鋼が欠けた原因は「毛」で、ヒゲがカミソリをすぐにダメにしてしまうというのです。

カミソリの刃を割れさせる犯人は「毛」だった

頬のやわらかい皮膚と毛の境目をカミソリがなぞるとき、刃と毛がお互いに作用して、それぞれが他方に力を及ぼします。

刃が当たった毛が斜めに傾くとき、刃と毛の間には力が及ぼされており、この角度がいくらかの細くてもろいポイントを欠損させるのです。

毛は、内部の柔らかい部分を保護するようにキューティクルと呼ばれる丈夫な保護膜で覆われているため、その硬い膜で刃のもろい部分が損なわれるリスクが生じてしまいます。

新たなカミソリへの期待


昔ながらのカミソリは刃が一枚刃ですが、現在のカミソリは、複数刃が採用されることが多く、この刃の数が多いほど長持ちし、肌への負荷が分散されので心地よいそり心地になると考えられています。

もし、カミソリの刃を長持ちさせたいなら、切れ味が犠牲になってしまうため、製造者は、そのバランスが大切だといいます。

今、マサチューセッツ工科大学をはじめとする研究者らが、カミソリの刃を硬くて丈夫にし、さらに長持ちするような作り方の研究を進めています。

将来的に、そり心地と耐久性を兼ね添えたより優れたカミソリが生まれることが期待されています。