知らなきゃ損!料理をおいしくする7つの科学メカニズム

2019年5月20日

あなたのキッチンは、隠れた科学実験室です。

キッチンには炎と酸、そして、金属製の道具があり、私たちは湯を沸かすたびに物理学を使い、最後のピザを食べるかどうかを選択するときには行動科学を使います。

温度があがれば氷は溶けるのに、卵は加熱によって固まる。キッチンでは毎日のようにこのようなおもしろい科学の世界が繰り広げられています。

そして今日では、「料理は科学」や「科学的調理法」といった言葉が存在するほど、科学は料理の世界でも注目を集め始めました。そして、その多くが実に理にかなっています。

ここでは、そのなかでも料理をより一層おいしくするコツや健康的につくるためのトリックを7つの科学に基づいて紹介します。

目次

1. イーストがなくても「ビール」でパンが作れる仕組み

オーブンから出した焼きたての手作りパンのにおいは、市販のものとは比べ物になりません。

さて、私たちは、家でパンを焼くとき、小麦粉と水、砂糖、そして、重要な役割を果たす「微生物」を必要とします。

パン酵母として知られる「出芽酵母(しゅつがこうぼ)」です。イーストとも呼ばれる微生物で、パン生地を雲のようなふわふわの炭水化物の塊に育ててくれます。

もしイーストが手元になくても、冷蔵庫の中にある便利な代用品「ビール」でもパン作りはできます。

意外かもしれませんが、ビールは、パンと同じ「発酵」と呼ばれる重要なステップで作られており、世の中には「ビールパン」なるものもちゃんと存在しているのです。

パンとビールを生み出す「発酵」

発酵において出芽酵母(イースト)は糖を代謝し、廃棄物として二酸化炭素とアルコールを放出します。これをアルコール発酵といい、このときに排出された二酸化炭素の気泡が、パンをスライスしたときによくある穴やくぼみの正体です。

パン作りの場合は、オーブンで焼かれる間に、このアルコールは燃え尽きてしまいますが、アルコールが必要なビールの場合は、このステップは確実にスキップされ、最終的にビールに残る酵母の量は醸造のやり方によって異なるといわれています。

ちなみに、ほとんどの大規模生産者は、可能な限りビールから酵母を取り除こうとしますが、ベルギービールやクラフトビールなどは、底に見える程度にイーストが残っているため、パン作りに使うには最適です。

ただし、そうはいっても出芽酵母よりは少ないため、より高密度なパンができあがるでしょう。

そんなときは、中力粉1カップに対してベーキングパウダー小さじ1と1/2杯、塩小さじ1/4杯を加えるか、既にベーキング・パウダーと塩があらかじめ混ぜて市販されている「セルフライジング・フラワー(Self-raising flour)」と呼ばれる小麦粉を代わりに使うとふんわりとしたパン生地になります。

このベーキングパウダーは、炭酸水素ナトリウム(重層)と呼ばれる食品添加物で、生地の中の酸と反応して、二酸化炭素の気泡を作り出すので、軽くてふわふらの多孔質なパンにしてくれるのです。

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2. きのこを使うと塩分摂取量が減り、うまみがアップする

もし「おいしいタコスを作りたい」と思い立ったら、ぜひ細かく刻んだきのこを適度に加えてください。

賢い料理人や食品科学者たちによって、料理をより健康的で特別においしいものにするためのきのこ活用法が見つかりました。

ここでいう適度にとは、食べた人が大きな違いに気付かないほどの量です。それでは、下記で詳しくみていきましょう。

タコスにはきのこを入れるべき理由

2017年に発表されたタコスの研究では、体積の最大45%のきのこを含む配合が、質感においての最適な度合いを意味する「スイートスポット」にあたることが発見されました。

それ以上加えた場合は、きのこの風味や食感が強すぎてしまいます。

続いて研究者らが、さまざまな種類のキノコでテストしたところ、試食者の多くが、マッシュルームの入ったタコスミックスの味を好む傾向がありました。

さらにホワイトマッシュルームにおいて、1mmから5mmに細かく刻んだときが最もなめらかな食感になり、塩分摂取量を減らせることも分かりました。

これについて研究者らは、きのこにうま味成分が豊富にあるためだと示唆しました。

きのこのうまみ成分は科学的に支持されている

事実、きのこのうま味成分は料理の塩味を引き出して、全体的なおいしさを増すことが、何十年にもわたって示されており、その考えを後押しする研究もあります。

2014年にJournal of Food Science誌が発表した調査では、タコスの肉のブレンドに最大で80%のきのこを入れると、全体的な味だけでなく、ニンニクやうま味成分のようないくつかの特定の風味を強化することが示されました。

つまり、科学は「きのこ」を健康的なハックとして支持しているだけでなく、測定可能なおいしさを生じさせる食品として支持しているのです。

3. ココナッツオイルと冷温はご飯のカロリーを減らす

米にココナッツオイルを加えて冷蔵庫に入れると、米によるカロリーの影響を減らすことができます。

このアイデアは少し複雑で、最初に発見されたのは2015年、スリランカの研究者らがご飯を炊く用意についての実験を発表したことによります。

研究チームは、小さじ1杯のココナッツオイルを加えた湯に、1/2カップの米を入れて40分間調理した後、それを食べる前に12時間冷蔵庫で冷やしました。

その結果、特定の種の米については、約10%のカロリーの減少、1カップあたり約25キロカロリーの減少が報告されました。

さらにこの研究から分かったことは、カロリー減少だけではなかったのです。

ご存じのとおり、米のカロリーの大部分はデンプンと呼ばれる一連の糖のつながりによるものですが、オイルと冷温の組み合わせが、これらの一部をレジスタントスターチ(大腸に届くまで消化されないデンプン)と呼ばれる消化に耐性のあるデンプンへの再配置を促すことが発見されました。

「オイル + 冷やす」によってお米が小腸までは消化されなくなる理由

それは、2つの異なる方法で起こると考えられています。

1つ目は、オイルに含まれる脂肪が米の主要カロリーデンプンの1つであるアミロースと結合することです。

それは、米デンプンのアミロース・脂質複合体と呼ばれるもので、ある程度は米自身で起きますが、米を油と一緒に加熱することでその生成が促進されます。

脂肪は、腸の消化酵素から複合体を保護するので、それらは分解されることなくあなたの小腸を通過するのです。

また、オイルを加えなかったとしても、食べる前にご飯をしばらく冷やしておくと、カロリーは減少するといわれています。

高温から低温への移行は、「老化」と呼ばれる過程で、アミロースやアミロペクチンのような他のデンプンの分子間のつながりを弱め、これらのデンプンがより規則的になるにつれて水素結合を形成します。

このようにしてきつく結合したデンプンのつながりは、通常のデンプンのように小腸では分解されません。これらの水素結合が消化酵素の接近を妨げるからです。

それによって、食後すぐに糖分が血流に代謝吸収されなくなり、大腸で一部のカロリーだけが吸収されます。

結果的に、消化に耐性のあるデンプンによって、いくらかのカロリーは減少するかもしれませんが、残念ながら、ゼロカロリーになるような魔法の力まではありません。

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4. 菌を気にしないでクッキー生地を味見できるのか?卵の安全性を科学的に考える

あなたは、生卵を含むクッキー生地は、サルモネラ菌のような有害なバクテリアが含まれている可能性があるので、安全ではないと聞いたことがあるかもしれません。

しかし、実際には、食品科学者や生産者たちによって、厄介な微生物を卵から排除しようとする試みが行われているのも事実です。たとえば鶏へのワクチン接種、保護的なキューティクル層をそのままにしておく、冷蔵庫に卵を保管して微生物の増殖を遅らせるなどもよく取り入れられています。

それでも心配な人におすすめなのが、家庭でもできる「低温殺菌」です。

低温殺菌は、100度以下の温度でゆるやかに行う加熱殺菌法で、牛乳や酒類など、熱によってタンパク質が変性するのを防ぐ必要のある食品に主に取り入れられています。

かといって、卵は温めすぎると固まってしまい、クッキーのレシピが要求するものではなくなってしまいます。

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家庭で行う低温殺菌について

そのため、家庭で低温殺菌を行うには、有害なバクテリアを殺すのに十分な温度と時間のスイートスポットを見つける必要があります。

そこで研究者たちは、1997年に、卵をサルモネラ菌で汚染した後、低温殺菌に適した条件や環境「スイートスポット」を見つけようとしました。

一つは、卵を58度で50分から57分間加熱し、他方では、57度で65分から75分間加熱しました。

卵のタンパク質は、60度以内であれば形を変えないので、それ以上温度を超えなければ問題はないはずです。

この方法なら、家庭のコンロで簡単に取り入れられそうですが、ただ問題は1時間近くも同じ温度を保ち続けられるかどうかです。

そこで、「1時間も我慢できない」という人のために、研究者は瞬間殺菌と呼ばれるものを提案しました。

それは、95度の湯に卵を落として10秒間だけ茹でるというものです。

もしあなたがクッキー生地を味見したいなら、低温殺菌か瞬間殺菌した卵を使ってみるというオプションを取り入れてみるとより安全かもしれません。

5. 甘いもの好きな人に朗報「甘い水効果」が得られる野菜とは

「甘いものはおいしいけど、健康を考えるなら野菜を食べるべき」頭では分かっていてもなかなか実行にうつせない人に朗報です。両方の長所を活かせる野菜があります。

「アーティチョーク」と呼ばれる野菜は、実際に砂糖を食べなくても、舌に甘さの知覚を生み出す「クロロゲン酸」と「シナリン」と呼ばれる特定の化合物を含んでいます。

実験では、この2つの物質を食べた後に水を飲むと、口の中に甘い後味を残すことが分かっています。

甘い水効果

不思議なことに、甘味料を一切加えていないにも関わらず、舌から風味が消えた後にも、甘さが残されるのです。科学者はこの怪奇現象のようなできごとを「甘い水現象」と呼びます。

それは、四角内に縞模様を描いた場合、横縞は縦長に、縦縞は横長に見える錯視(さくし)と非常によく似た現象です。

錯視は、視覚に対してですが、舌も同様にだませるなんて、クールなトリックですね。

科学者らは何十年もの間、この甘い水効果について研究してきました。

Science誌の1972年の論文では、アーティチョーク抽出物、クロロゲン酸、シナリンをそれぞれ単独で試験した場合、結果的にそれらのすべてが甘い水反応を引き出しましたが、最も強い効果を生み出せたのはアーティチョーク抽出物であることが示されています。

その他にも、後味に有効な学物質があります。

ある研究グループは、人工甘味料として知られるサッカリンが、高濃度では苦味を感じ始めることを発見しました。しかし、被験者が口をすすぐと、再び甘い後味を経験するといいます。

科学者らは、なぜこのような奇妙な現象が起こるのかまだ完全にはわかっていませんが、ある研究チームは、アーティチョークの化合物と過剰な量のサッカリンは、舌にある甘味受容体を阻害するからだと考えています。

それらが水によって舌の上から洗い流されるとき、脳は甘さへの妨げがなくなったと知覚して甘さを感じるようになるといいます。

次にもし甘いものが食べたくなったら、アーティチョークを噛んだ後に水を飲んでみてください。きっと脳が甘いものを食べたと錯覚するでしょう。

6. ただ温度を変えるだけで料理の風味は変えられる

食べ物に、フレーバーや添加物を加えなくても風味を変えられることを知っていますか?

ただすべきことは、それを冷やすか加熱するだけでいいのです。

研究がすすむにつれて、食品の温度が私たちの感じる味に影響を与え、特定の風味を引き出したり、隠したりすることが分かってきました。

温かいとより甘く感じる

甘味の知覚は食べ物が少し温かい方が高まるため、焼きたてのブラウニーは、室温のものに比べてより甘く感じます。

しかし、冷たいアイスクリームサンデーは蒸したてのニンジンよりも甘いように、極度に甘い食べ物は、温度の影響はそれほど重要ではありません。

科学者は甘味の知覚をいくつかの方法で検出することができます。

たとえば、同一の食事を異なる温度で用意し、それを味覚テストの被験者が食べた後、質問形式で行う調査がそのひとつです。

しかし、ヒトの食行動は複雑であるため、科学者は、代わりにげっ歯類に電極を接続し、そこから得られたシグナルを測定することにしました。

研究では、げっ歯類が、食べ物の味についての情報を舌から脳へ中継する鼓索神経(こさくしんけい)と舌咽神経(ぜついんしんけい)を使い、温度と風味がどのように相互作用するかが調べられました。

結果的に、温かさで甘みが増すことに加えて、冷却によって特定の苦味を取り除けることも分かりました。

コーヒーは冷やすと苦みが減る

たとえば、もしコーヒーを冷やすと、カフェインの苦味の強さは減少します。

また、温度が低いと、コーヒーに含まれるもう1つの苦味「キニーネ」に対する感受性も低くなります。

これは、アイスコーヒーが好まれる理由のひとつだと考えられています。

冷やすと塩味が協調される

さらに、冷やすことによって、食べ物の塩味を高めることもできます。

塩に対して私たちは2種類の受容体があり、そのうちの1つは冷温だけでのみ活性化されると考えられています。

それは文字通り、ただ舌を冷やすだけで、後味に塩気が残る可能性を意味します。

そして、少なくともげっ歯類に関しては、塩に対する感受性の最適温度は約30度で、35度を超えるものはどれも塩味をはるかに少なく感じるようになるといわれています。

ヒトに関しては、個々によってその正確な温度は異なるかもしれませんが、主なところは同じで、料理が熱い間は、塩気を感じにくかったり、全く感じなくなったりするようです。

料理の塩加減に悩んだときは、少し冷ましてから塩を足すとよいかもしれませんね。

7. クッキーはバターを使うと歯ごたえがでる。ソフトクッキーにはショートニングを

よくネットでレシピを検索すると、「絶品クッキー」といった類のキャッチコピーがありますが、「バター」の力によってそれは実現しやすいようです。

わずかに溶けたバターは、オーブンの中でクッキー中に広がり、パリッとした歯ごたえのある食感をつくり出します。

しかし、ふわふわした、柔らかな食感のクッキーを作りたいなら、バターを減らし、ショートニング(植物油から作られた固形脂肪)に置き換えた方がよいでしょう。

これらの歯ごたえのカギとなるのは、タンパク質によってできるグルテンです。

グルテニンやグリアジンなどのタンパク質を含む小麦粉は、水と合わさったときに、これらがグルテンを形成します。

カリカリのパンやクッキーに硬さを与えているのはこのグルテンです。一方で柔らかいケーキや焼き菓子に形成されているグルテンは少なくなります。

バターは通常約80%の脂肪、15%の水、そしていくつかの乳タンパク質からなります。この少量含まれた水が、小麦粉のグルテンを活性化するのを助けているのです。

一方で、ショートニングは100%脂肪で融点が高いため、グルテンを形成しにくく、よりふわふわしたクッキーにします。

また、脂肪の使用量とクッキーの品質に関する研究によって、バターよりショートニングの方が密度の低い生地ができることも確認されています。

この生地密度は、できあがりを左右する最大因子の1つで、低密度の生地はオーブン内での広がりが少ないため、硬くなりにくく「適度な食感」を生みやすくなります。

最後に

ここで紹介したクッキングハックはどれも派手さや革新さはないかもしれませんが、科学に基づいたもので役に立つものばかりです。

ぜひこれからの料理に役立ててみてください。

参照元
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