北極圏には、たくさんの鳥がいます。
それなのに、なぜ鳥類であるペンギンは、南極だけで北極にはいないのでしょうか?
北極も南極も、ともに極寒の地で、氷に覆われている点では同じはずです。北極のホッキョクグマと南極のペンギンをなんとかして一緒に見ることはできないのでしょうか?
そこで今回は、なぜ北極にはペンギンがいないのかについて、かつて、北極圏に生育していたとされるペンギンらしい生き物の正体などをあわせて科学的な研究をもとに分かりやすく紹介します。
どうやら、過去には数種類のペンギンを北極圏まで運んだ冒険家がいたようですが、十数年後にはペンギンは姿を消してしまったようです。
ペンギンは飛べない鳥
現在、北極圏には飛べない鳥はいません。
飛ぶことは、白クマやオオカミ、キツネなど陸上の捕食者から身を守る手段です。鳥は飛ぶことによって、攻撃を逃れたり、高い崖の上に巣を作ったりすることができます。
しかし、ペンギンは飛ぶことができないので、捕食者に食べられてしまうのです。
ペンギンは陸地に巣を作る
ペンギンは、地上や穴の中で繁殖し、巣を作り、孵化させ、雛を育てるように進化してきました。
これは、陸上の捕食者にあまり脅かされないところでしか生きられないことを意味します。
確かに南極でも、頭上を飛ぶキタオオトウゾクカモメやオオフルマカモメには脅かされますが、北半球の場合、キツネやオオカミ、ホッキョクグマなどさらに多くの捕食者の餌食になりやすいのです。
ペンギンは潜るのが上手なので水中環境で競争力がある
ペンギンは、地球上で最も効率的に水中に潜る鳥です。
その理由のひとつは、トレードオフとして飛ぶための軽くて柔軟な翼を捨てて、泳ぐために硬くて重いヒレを進化させたことです。
また、ペンギンの骨は他の鳥類に比べて太いので、飛ぶには重すぎますが、浮力が弱くなることで、より馬力もついて深く潜ることができるのかもしれません。
深く長く潜ることができるペンギンは、より大きなクジラやアザラシ、鳥たちとエサ場を共有する水中環境で、有利に競争力を発揮します。
多くの海鳥は飛べて潜れますが、そのためにはある程度の妥協が必要です。
一般的には、どちらかが得意であれば、もう一方は苦手です。
陸上での捕食者が少ないペンギンにとって、飛ぶことのメリットがコストに見合わないため、泳ぐのに都合がよいように進化したのでしょう。
南極の地では、その方がエサもうまく捕まえられて、敵からもすばやく逃げられますね。
北極圏にペンギンはいたの?
1936年、ノルウェーの探検家ラース・クリステンセンは、北極圏でもペンギンが生息できる可能性を見出しました。
彼は、10年かけてオウサマペンギンやマカロニペンギンなど、数種類のペンギンを北に送りました。
しかし、北極での彼らの生活は長くは続かず、1949年を最後に見られなくなります。ほんのわずかな間だけでしたが、北極圏の美しい島にペンギンの集団が生育していたのです。
北のペンギンの正体とは?
北極圏のペンギンに最も近い存在は、1844年に絶滅した黒と白の大きな鳥、オオウミガラスでした。
この飛べない海鳥は、現在のペンギンと多くの共通点をもっています。
体調は、75cmから85cmで、水中では敏速で機敏、優雅な泳ぎをし、水深1kmまで潜ることができました。
しかし、人間による乱獲によって、絶滅に追い込まれてしまいました。
ホッキョクグマとペンギンを一緒にみれる?
ホッキョクグマを南極に定住させることを検討した科学者や自然保護活動家もいましたが、コストや倫理的問題、なにより南極の生態系を脅かす可能性があることから、このアイデアは棚上げされています。
北半球にペンギンの種類が少ないのはなぜか?
18種類のペンギンのうち、7種類が南極でみられ、その他にも南半球ではオーストラリアやニュージーランド、アフリカ大陸などに生育しています。
一方で、アメリカ大陸や赤道近くに住むガラパゴスペンギンなど、北半球に生育するペンギンは、わずか数種類。
これだけ多様なペンギンがいるのに、彼らはなぜ北半球に移動して生育域を広げようとしなかったのでしょうか?
ペンギンは、寒さに強い一方で、暑さに弱い鳥。
アフリカのペンギンなど、暑さに適応している種もありますが、彼らは一日の大半を海で過ごし、涼しい夜にしか陸に戻りません。
彼らが北に向けて遠くまで移動するには、捕食者や人間の脅威が立ちはだかり、繁殖地の足場を築く前に絶滅に追い込まれてしまったのかもしれません。
参照元:
・Why Penguins are not found in the Arctic?
・Aurora Expeditions