ゴミを太陽に捨てに行くとどうなるか?

ゴミを太陽や地球軌道にロケットで運ぶとどうなる?宇宙・航空科学

もし太陽にゴミを捨てに行くことができたら、大量のゴミを一瞬にして蒸発させることができます。

それなら地球規模でのゴミ問題は一気に解決しそうです。

では、なぜ人間はいまだにロケットを使ってゴミを太陽まで飛ばそうとしないのでしょうか?

さっそく以下にゴミをロケットで捨てに行くと何が起こるのか、問題点をみていきましょう。

増え続ける地球のゴミ問題

今日のロケットは、かつてないほど効率的です。

ただ単に、お金がたくさんあったからというだけの理由で、面白半分にマネキンを車に乗せて宇宙へ送り出した人もいるほど。

それでも、ゴミをロケットで捨てに行く話が実用化されないのは、ゴミの問題が私たちが思っている以上に大きいからでしょう。

地球上の人口が増加するにつれて、毎年、ゴミの量も増え続けています。

現在、人類は一日あたり350万トンのゴミを捨てています。今世紀末までに、人類は、1日に1,100万トンのゴミを捨てるようになるだろうと予測する専門家もいるほどです。

ゴミを破棄するのにかかる費用の問題

現在、世界で最も費用対効果の高いロケットを使うと、最大で約70トンの物質を数十億円で宇宙に運ぶことができます。

つまり、もしこの種のロケットを使ってすべてのゴミを宇宙に打ち上げるとしたら、それはとてつもなく莫大なお金を使うことになるのです。

計算してみると、1年分のゴミのために、現在の世界各国の借金を全て合わせた額の6倍以上の費用がかかる可能性があります。

また、そのためには1,830万機のロケットが必要です。

ケネディ宇宙センターの160エーカーの発射台をモデルにすると、1830万機のロケット分の発射台を用意するには中国より大きな発射場が必要となります。

さらに、ロケットを太陽に向けて発射するということは、そのロケットをゴミごと全て失うことになります。数十億円の使い捨てロケットなんて理想的ではありませんね。

それなら、地球の軌道にゴミを飛ばす方がいいのではないでしょうか。

しかし、ここで重要なのは、宇宙空間のゴミはすでに大きな問題になっているということです。

宇宙ゴミの問題

地球の軌道上には、何十年にもわたって使われていない人工衛星、ロケットブースター、宇宙船の破片などがすでに2万個以上もあり、地球の周りを秒速約7kmというすごい速さで飛び交っているのです。

これらの宇宙ゴミは、宇宙ステーションや衛星に衝突するリスクがあります。

1996年には、10年前に作られた宇宙ゴミによってフランスの衛星が損傷しました。

GPSのようにネットワークでしか機能しない衛星もあるので、1つの衛星に衝突すると、他の衛星にも影響を与える可能性があります。

GPS衛星が1つでも衝突すると、基本的なナビゲーションシステムや飛行機の航路銀行や金融の時刻の誤差や同期状態にも影響が出ます

また、誘導ミサイルやドローン、諜報活動にも影響を与える可能性があります。

さらに、地球の軌道上にある宇宙ゴミは、国際宇宙ステーションのハードウェア、そして私たちの人命にも大きなリスクを与えるかもしれません。

国際宇宙ステーション(ISS)を失うリスク

現在、改良型ワクチンの研究、がんの検出と治療システム、ぜんそく患者を助けるための技術、最新の超音波診断、自然災害や気候変動の監視、海上交通の監視などに、国際宇宙ステーション(ISS)の先進技術が役立てられています。

ISSのロボットアーム技術においては、地上で行われている腫瘍を取り除く手術などに成果を出しています。

もはや、国際宇宙ステーションから生まれる新技術や新発見が、私たちの健康や生活にもたらす恩恵ははかり知れないものとなっているのです。

大気圏でゴミを燃やすことのリスク

最後に、打ち上げた物は必ず落ちてきます。

私たちが打ち上げたゴミは、しばらくすると、地球の引力で落ちてくる可能性があります。

そして、そのほとんどが、大気圏で空気との摩擦で燃えるため、有害なガスや燃えカスが地球の大気に影響を与える可能性はあります。

実際にEPA(経済連携協定)によると、ゴミを燃やすという行為は、健康にも環境にも大きな悪影響を与えるとされています。

ゴミを燃やす過程でダイオキシンや有害なガスが発生し、がんや心臓病、その他の健康問題を引き起こす可能性があるのです。

スウェーデンのように、ゴミを燃やすプロセスをきちんと規制している国もあるようですが、宇宙から落ちてくるゴミにも同じような規制ができるかというと、そうではなさそうです。

たとえ大気圏のかなり高いところで燃えていて、家の裏庭ではないとはいえ、なんらかの問題が起こることは避けたいものです。

どうやら近い将来、宇宙エレベーターやレールガン(電磁)発射機などの新しい技術でゴミを宇宙空間の奥深くまで運ぶことはできるようになるかもしれませんが、その日まで、人々はゴミをリサイクルするしかないのかもしれません。

参照元:Why Don’t We Launch Our Trash Into The Sun?