おそらくあなたは、
と習ったかもしれません。
しかし、それは基本的に間違っています。
体温調節の方法によって動物を分類してみると、2つのバケツにきれいに収まるわけではないからです。
以下に、動物がどのように熱を発生させるか、体温調節の方法をもとに、「温血・内温性・恒温性」と「 冷血・外温性・変温性」について紹介します。
どうやら生物の体温による多様な生存戦略はより複雑で境界線があいまいなようです。
体内での熱の発生方法「内温性 vs 外温性」
体内での熱の発生に注目して、左から内温性とし、右にいくほど外温性になるような表をつくってみましょう。
ほ乳類・鳥類であっても「内温性」とは限らない
人間やクマ、ハリネズミなどの哺乳類は、ほとんどが体内で熱を発生させるので、「内温性」の恒温動物だといわれています。
しかし、ハダカデバネズミのような哺乳類は、1年中自然に温度調節ができる地下室で生活しているため、その能力をほとんど失っています。
カッコウやナマケモノも外の環境に合わせて体温を変化させる「外温性」です。
鳥類であるはずのペンギンも、冷たい水へ潜水中は体温が低下する「外温性」の性質があることが分かっています。
一日の気温差が激しい地域に住むハチドリにおいては、気温が下がる夜になると変温動物のように体温が4℃近くまで下がって軽い冬眠状態に入り(外温性)、日中に再び恒温動物のように40℃近くまで体温を上げます(内温性)。
爬虫類や無脊椎動物、魚類であっても「外温性」とは限らない
一般的に、爬虫類や無脊椎動物、魚類の多くは周囲から熱を得なければならないので、「外温性」の変温動物だといわれています。
しかし、ミツバチやマグロのように、強力な筋肉を使って体内で熱を発生させることができる昆虫や魚類もいます。
ミツバチは、巣に侵入してきたスズメバチをまとめて焼いてしまうほど、体内で熱を発生させることができるのです(内温性)。
マグロは、筋肉を動かして生じた熱を失いにくい血管の配置をしているため、水温よりも体温を高く保つことができます(内温性)。
つまり、動物の熱の生み出し方は、二分できるわけではなく、もっと細かく分かれているのです。
体温調節の方法「恒温性(温血)vs 変温性(冷血)」
実のところ、「温血動物」であることの表向きの目的である、体内温度を一定に保つ「恒温」という概念はあいまいです。
クマは自分で体温を作り出しているにもかかわらず、冬になると体温が下がります。
どうやら、さまざまな体温調節の方法を表現するために、もう1つの次元を追加する必要がありそうです。
すると、事態はさらに複雑になっていきます。
ハリネズミのようないわゆる温血動物は、冬眠中のクマよりもさらに体温を下げることがあり、ほとんど氷点下まで下がることもあります。
また、冷血動物と呼ばれる動物の中には、体温がほとんど変化しないものもあります。
爬虫類であるはずのカメも、オサガメのように大型になるほど、体温を水温よりも高く保つことができること(恒温動物の性質)が分かっています。
深く冷たい海に潜るジンベエザメ(外温性)も、体内で熱を生みだすことはできませんが、体の大きさが体温の低下を防いでいるのです。
人間ですら、風邪を引いた時は熱が上がるように、体温が常に一定でないことも経験から分かっています。体温は、時間の経過とともに少しずつ変化しているのです。
さらに不思議なことがあります。
体の部位や生理状態によっても体温が異なる「異温性」
例えばペンギンは、体内で熱を発生させて体の大部分を常に温めていますが、足の温度は立っている氷の温度に近いほど下げています。
つまりグラフで表示させるには、足と体の他の部分は別の場所になるのです。
また、カジキも同様に、大きな目と脳を温めるために眼筋を使う頭部の体温は高めで、体の他の部位は周囲の環境に応じて冷やしたり温めたりしているので、体と頭は別に表示されます。
このような部位による体温の違い、また、冬眠状態になるハチドリやクマのように生理状態の違いによって一時的に代謝量を下げて、余分なエネルギーを使わないために最小の体温範囲にするような動物の特徴を「異温性」と呼ぶこともあります。
生物のカテゴライズは複雑で境界線があいまい
体温調節の他の側面、例えば動物が体を冷やすさまざまな方法についても触れないままでした。
どうやら、これらの生物による多様な戦略を「恒温動物」と「変温動物」というたった2つのバケツにまとめようとし続けるのには無理がありそうです。
今まで「恒温動物は哺乳類と鳥類」、「変温動物は爬虫類と両生類と魚類」と覚えていた人は、それが全てではなく、ものごとには例外があることに気付けたのではないでしょうか?
同じ理由で、私たちは、食性(肉食・草食)や知能(賢い・愚か)、交配システム(一夫一婦・一夫多妻制など)といった多くの動物の特徴を、実際にはその枠に収まらないにもかかわらず、個別のカテゴリーに分類してしまう傾向があります。
古くからの習慣と、人間の脳が物事に白黒のレッテルを貼りたがるせいで、本当はもっと複雑であるにもかかわらず、それをきっぱりと2つの境目で分けようとするのです。
しかし、本当の意味で物事を理解するためには、そうした人間的な感情を捨てて、事実を追う必要があります。
それは、温血動物と呼ばれる動物も、時には冷血にならざるを得ないということです。
参照元:
・There’s No Such Thing As “Warm-” Or “Cold-” Blooded
・Biology Letters