どうやらシダレヤナギの枝が垂れているのは、人の影響が要因となっているようです。
ほとんどの木は太陽に向かって伸びますね。
一方で、シダレヤナギ(枝垂柳)は太陽とは逆の向きに垂れ下がっています。太い幹は上に向かって伸びていますが、枝が全体的に垂れ下がり、基本的に地面に向かって伸びているのです。
いったいシダレヤナギは、何のために垂れ下がっているのでしょうか?
以下にみていきましょう。
ヤナギは全てが垂れ下がるわけではない
まず、すべてのヤナギの枝が垂れ下がっているわけではありません。
世界には何百種類ものヤナギが存在し、そのほとんどは他の木と同じように上向きに伸びる形をしています。
また、枝が垂れる木もヤナギだけではありません。
ポプラ、ヘムロック(カナダツガ)、カエデ、アカシア、サクラ、モモなど、多くの樹木にも枝が垂れる種があります。
ホルモンと突然変異
上向きに伸びる幹、垂れ下がった枝など樹木の全体的な形は、実はすべて同じ原因、すなわちホルモンからきたものです。
しかし時折、遺伝子の突然変異によってホルモンが奇妙な働きをすることがあるのです。
このような突然変異の中には、木を太陽に向かって直立により高く成長させるものもあれば、地面に向けて長い枝を垂らすものもあります。
「枝垂れ」が繁栄した理由
しかし、もう一段階深く考えてみましょう。
一般的に、突然変異は常に起こっていますが、そのほとんどはその時限りで子孫に受け継がれることはありません。
ではなぜ、さまざまな種の樹木で「枝垂れ」が長い間続いているのでしょうか?
もしかしたら、その偶然に起こった突然変異が、特別な状況下で樹木にメリットをもたらしたからかもしれません。
たとえば、ある状況下では、枝が垂れていることで、木の葉に届く光を最大にしたり、(垂れた枝が木陰をつくり)水分の損失を最小にしたりすることができた結果、枝が垂れ木の方が生き残り、突然変異を受け継ぐことができたとも考えられます。
しかし、実際にはこれらのメリットを証明するようなものはありません。
どうやら、そこにあるほとんどのシダレヤナギは、自力でこのような状態になったわけではないようです。
人の手によって繁栄した「枝垂れ」
たとえば、しだれヘムロック(学名:Tsuga canadensis var. pendula)という木があります。
ほとんどのヘムロックは一般的な木のように直立した形をしていますが、1850年代にニューヨークの農家が偶然に1本のしだれヘムロックを発見したことが転機となります。
たくさんの人が、この木の奇妙な形に夢中になり、その木からたくさんの小片を採取して増やしていったのです。
しだれブナにも似たようなストーリーがあります。
アメリカに生育するシダレブナはすべて、1847年にベルギーから輸入された1本の新芽の子孫を人々が広めたものだといわれています。
シダレヤナギもまた、おそらく中国で直立するヤナギから突然変異で生まれた希少な変種が人の手によって広められていったのでしょう。
この珍しいヤナギはアジアで広く栽培され、やがてシルクロードを通ってヨーロッパ、そして世界各地へと取引されるようになりました。
こうして私たち人間は、シダレヤナギに美しさを見いだし、人為的に広く普及させていったのです。
現在、さまざまな文化において、枝だれ樹木種は、回復力や女性の象徴、希望、悲しみなどを象徴するものとなり、人々を魅了し続けています。
言い換えれば、シダレヤナギは他の多くの動植物と同じように種の保存のための成功への道を歩んできたといえるでしょう。
柳は、まるで美しさを愛でる人間たちのために垂れているようです。